第3話 『え、なんでこんなに人おると……?』
金曜日の夜。
「今日はちょっと企画やってみよっかな」
登録者数:48 → 52
みらいは少し照れながらサムネを作った。
【博多女子が本気でモノマネ100連発するっちゃん】
「……100は言い過ぎたかも」
ばってん勢いは大事やろ?
そう自分に言い聞かせる。
22時。
LIVE
「こんみらーいっ!」
同時接続数:6
「今日はね、うちの隠し芸ば見せるけん!」
コメント
《昨日の子や》
《企画?》
《期待》
みらいは深呼吸。
「まずは犬の鳴き真似!」
「わんっ!わんわんっ!……あ、ちょ、これ違う」
コメント爆笑。
《微妙w》
《クセ強い》
《おもろ》
次は担任の先生の真似。
「えー、静かにしなさい〜花咲〜また噛むぞ〜」
自分で言って吹き出す。
《似てるw》
《先生に怒られるぞ》
同接:12 → 18 → 27
「え、増えとる……?」
心臓が速くなる。
そこへ――
《切り抜きしていい?》
「え?切り抜き?」
《TikTok載せる》
みらい、固まる。
「え、え、好きにしてよかよ!?」
コメント
《バズりそう》
《これは伸びる》
配信はそのまま大盛り上がり。
気づけば1時間。
同接:34
「え……30人超えとるやん」
嬉しさで手が震える。
配信終了。
「今日はほんとにありがと!」
OFF
部屋が静かになる。
ばってんスマホが止まらん。
通知。
通知。
通知。
「なに……?」
恐る恐るSNSを開く。
――動画。
自分のモノマネが切り抜かれとる。
再生回数:3,000
「え?」
更新。
8,400
「え、バグ?」
さらに10分後。
15,000
「……うそやろ」
登録通知が止まらん。
YouTube開く。
登録者数:52 → 89 → 130
「え、え、え、え!?」
手が震える。
息が浅くなる。
コメント欄も急増。
《この子誰?》
《博多弁かわいい》
《推す》
《なんか放っとけん》
でも。
その中に混ざる言葉。
《今だけやろ》
《どうせ消える》
《声やっぱ微妙》
胸がキュッてなる。
「……バズるって、こんな感じなん」
嬉しい。
怖い。
頭が追いつかん。
スマホを置いて、ベッドに座る。
心臓がうるさい。
登録者数:198
「……200いきそう」
涙がじわっとにじむ。
「うち、昨日まで48人やったとよ?」
天井を見上げる。
「急に増えたら……急に消えるかもしれんよね」
怖さが、じわじわ広がる。
“期待される”
それが一番怖い。
ピロン。
コメント通知。
《今日の配信で元気出ました》
その一言。
胸が温かくなる。
みらいは小さく笑う。
「……よかった」
スマホをぎゅっと握る。
「うち、バズりたいんやない」
ゆっくりつぶやく。
「ちゃんと、続けたいだけ」
登録者数:203
200突破。
小さな悲鳴。
「え……ほんとに?」
布団に顔を埋める。
「うわあああああ!」
嬉しさで足ばたばた。
でも。
その目には、少しだけ不安の色。
光が強くなるほど、影も濃くなる。
みらいはまだ知らん。
このバズが――
次の試練を呼ぶことを。




