第2話 『数字が増えるたび、怖くなるっちゃん』
翌日、放課後。
教室の窓から入る夕陽が、机ばオレンジ色に染めとる。
「花咲ー、昨日また噛んどったやん」
男子の声。
「うるさか」
笑ってごまかす。
ばってん胸の奥は、ちくっと痛む。
――でも昨日は違った。
“頑張れ”
“また来るけん”
画面の向こうの言葉が、心の中で光っとる。
帰宅後。
ドアば閉めると同時に、みらいは小さくつぶやく。
「……今日も、やるけん」
パソコン起動。
配信ソフト立ち上げ。
登録者数:32 → 35
「え、増えとる……」
たった3人。
ばってん、その“3”が嬉しか。
「見つけてくれた人がおるってことやもんね」
夜22時。
LIVE
「こんみらーいっ!」
昨日より、ちょっとだけ声が安定しとる。
同時接続数:4
「4人もおる!」
コメント
《昨日の子やん》
《待ってた》
《博多弁助かる》
胸があったかくなる。
今日は雑談配信。
「うちね、ほんとは人前苦手なんよ」
コメントがゆっくり流れる。
《意外》
《配信は大丈夫?》
「配信も怖かよ?
でもね、顔見えん分、素直になれると」
同接:8 → 12
数字が増える。
「……なんで増えると?」
コメント
《なんか放っとけん》
《頑張ってるの伝わる》
《応援したくなる》
その時――
ピロン。
新しいコメント。
《声微妙じゃね?》
《トーク弱い》
空気が一瞬、変わる。
心臓がギュッてなる。
昨日より人が増えた分、
初めての“刺さる言葉”。
「……」
コメント欄がざわつく。
《アンチきた》
《気にすんな》
みらいは、数秒黙る。
頭の中でぐるぐる。
“やっぱ向いとらん?”
“調子乗っとると思われとる?”
でも。
昨日の夜の自分を思い出す。
“ここで笑える人になる”
深呼吸。
「正直言うとね」
少し声が震える。
「うちも思っとる。まだ全然上手くなかって」
コメントが静かになる。
「でもさ、今ここで逃げたら
また“無難な花咲みらい”に戻るだけやん?」
アバターがにこっと笑う。
「下手でも、伸びしろってことでよかろ?」
一瞬の沈黙。
そして。
《その通り》
《好き》
《推せる》
《登録した》
同接:19
「え、19!?」
目がうるむ。
さっきのコメントの主も、まだおる。
《成長見守るわ》
その一言。
胸がじんわり熱くなる。
「……ありがと。ほんとに」
配信終了後。
部屋は静か。
ばってん心臓は、まだ早い。
登録者数:48
「……増えとる」
怖い。
嬉しい。
両方混ざっとる。
「数字が増えるたび、怖くなるっちゃん」
でも――
それ以上に。
「それでも、やめたくなか」
布団に倒れこむ。
スマホに通知。
“チャンネル登録ありがとうございます”
みらいは天井ば見上げる。
「うち、もっと強くなるけん」
小さな星は、まだ小さい。
ばってん確実に――
光り始めとった。




