第2章 第3話『ひとりで立つ光』
契約、正式締結。
海外大手レーベル所属。
みらい、ソロ名義世界デビュー決定。
会場はロサンゼルスの大型バーチャルホール。
同接予測:60万。
“予測”。
つまり未知数。
成功すれば継続。
コケれば、見直し条項発動。
甘くない。
本番直前。
控室は一人。
ユニットのときみたいな雑談もない。
静か。
静かすぎる。
スマホが震える。
レイから。
「暴れてこい」
ルカから。
「背中、預けてる」
短い言葉。
それだけで呼吸が整う。
開演。
スポットライト。
「Mirai!!!」
英語の歓声。
みらい、マイクを握る。
「Hello, I’m Mirai from Japan.」
拍手。
単独。
横に誰もおらん。
1曲目、アップテンポ。
英語歌詞メイン。
練習した発音。
リズム。
完璧。
観客のノリもいい。
でも。
どこか足りん。
“安全”。
2曲目、バラード。
照明が落ちる。
静寂。
みらいは思う。
“うちは、なんでここに立っとる?”
世界契約のため?
数字のため?
違う。
マイクを握り直す。
予定になかったトーク。
「Can I tell you something personal?」
会場が静まる。
炎上の話。
怖かった夜。
三人で立ったステージ。
英語で、不器用に語る。
言葉が少し詰まる。
でも止まらん。
「I’m not here because I’m perfect.」
静寂。
「I’m here because I didn’t quit.」
そのまま、アカペラでサビに入る。
予定外。
スタッフが一瞬ざわつく。
でも止めない。
声、少しかすれる。
でも。
感情が乗る。
観客がペンライトを振る。
チャット。
《She’s real again》
《That crack in her voice…》
《This is why we watch her》
同接:64万→72万。
伸びる。
最後の曲。
ダンス激しめ。
体力限界。
汗。
呼吸荒い。
それでも笑う。
曲終わり。
静寂。
0.7秒。
そして大歓声。
スタンディングアバターの波。
みらい、深く一礼。
一人でやり切った。
バックステージ。
スタッフが拍手。
マネージャーが数字を見せる。
ピーク同接:79万。
目標超え。
SNSトレンド3位。
レーベル幹部からメッセージ。
“Strong debut. Let’s build.”
継続決定。
みらいは壁にもたれる。
足が震える。
そこにビデオ通話。
レイとルカ。
「顔、やば」
レイが笑う。
「泣いとるやん」
ルカも微笑む。
みらいは笑いながら泣く。
「一人やなかった」
本当に。
物理的には一人。
でも。
背中には二人がおった。
だが。
翌日。
海外レビュー記事。
《Powerful emotion, but technically unstable》
技術面不安定。
事実。
世界基準は厳しい。
さらに。
レイの元にも連絡。
海外別レーベルからのオファー。
“Solo vocal project”
次は。
レイが揺れる番。
天秤は、まだ動く。




