第2章 「世界は、優しくない。」 第1話 『選ばれるのは、ひとり』
海外ソロ配信から一週間。
登録者:81万。
伸びとる。
でも。
Lumière公式チャンネルの伸びは、緩やか。
コメント欄。
《Mirai solo when?》
《She’s too big for the group》
《Let her fly》
“飛ばせ”。
誰から離れて?
みらいは画面を閉じる。
胸が重い。
事務所緊急会議。
テーブル中央に、契約書。
海外大手音楽レーベル。
名前は伏せられとるけど、
条件は破格。
・英語圏本格デビュー
・ソロ名義
・世界ツアー確約
・年収保証桁違い
ただし。
“Unit activities will be limited.”
制限。
実質、ソロ転向。
空気が凍る。
プロデューサーが静かに言う。
「期限は二週間」
短い。
帰り道。
夜の街。
ネオンが滲む。
みらいは一人、歩く。
「うち、どうしたい?」
頭ではわかる。
世界への最短距離。
でも。
思い出すのは。
初配信の緊張。
レイの毒舌。
ルカの支え。
炎上の夜。
三人で立ったステージ。
“IGNITE”。
火は、三人で灯した。
スマホが鳴る。
レイから。
「見た」
短い。
すぐ次。
「迷うの当然」
珍しく、優しい。
ルカからも。
「話そ。逃げずに」
翌日。
Lumièreスタジオ。
三人だけ。
契約書が机に置かれる。
沈黙。
最初に口を開いたのはレイ。
「行きたい?」
直球。
みらいは、正直に言う。
「……怖いくらい魅力的」
本音。
レイは頷く。
「だよね」
ルカが静かに続ける。
「でも」
目が強い。
「それ、今じゃなきゃダメ?」
みらいが息を止める。
「世界は逃げない」
ルカは言う。
「でも、今離れたら戻れないものもある」
重い。
レイが立ち上がる。
「私は、世界で勝つ」
視線はまっすぐ。
「でも三人で」
その言葉に、迷いはない。
「みらいが抜けるなら」
一瞬、空気が止まる。
「Lumièreは終わる」
覚悟の宣言。
脅しじゃない。
事実。
みらいの心臓が強く打つ。
終わる?
ここで?
涙が滲む。
「うち、選ばれとるんやなくて」
声が震える。
「試されとるんよね」
世界か。
三人か。
でも。
ふと、笑う。
「どっちも取ったらいかんと?」
レイが眉を上げる。
ルカが目を細める。
みらいは拳を握る。
「ソロ契約、条件変えさせる」
二人、同時に。
「は?」
「ユニット活動制限なしにする」
無茶。
世界レーベル相手に。
でも目は本気。
「世界行く。でも三人で」
沈黙のあと。
レイが、ふっと笑う。
「やっと怪物」
ルカも笑う。
「交渉、私も入る」
三人、肩が並ぶ。
選ばれるのはひとり?
違う。
選ばせる。
世界に。
数日後。
オンライン交渉。
英語会議。
重役たちの冷たい視線。
「Unit priority cannot be guaranteed.」
みらい、深呼吸。
英語で返す。
「Then I’m not signing.」
場が静まる。
「I don’t shine alone.」
真っ直ぐ。
「My fire started with them.」
沈黙、数秒。
重役が小さく笑う。
「You’re difficult.」
みらいも笑う。
「I know.」
交渉は続く。
結論はまだ出ない。
でも。
世界に宣言した。
みらいは、ひとりじゃない。
第二章、開幕。




