第17話 『怪物と、目が合った日』
海外大型フェス前日。
会場は、巨大バーチャルアリーナ。
出演者控室フロア。
モニターに並ぶ名前。
Lumière
そして――
NEON VALKYRIE
登録者500万超え。
世界的人気ユニット。
みらいは、深呼吸する。
「同じステージ、立つんよね……?」
レイが淡々と。
「立つだけなら誰でもできる」
ルカが続ける。
「残るのが難しい」
重い。
廊下。
スタッフに案内され移動中。
角を曲がった瞬間。
黒とネオンカラーの衣装。
長身の3Dモデル。
オーラが違う。
NEON VALKYRIEのセンター――
アリア。
目が合う。
一瞬。
空気が張りつめる。
アリアが微笑む。
「You’re Lumière, right?」
低くて通る英語。
ルカが落ち着いて答える。
「Yes. Nice to meet you.」
みらいの喉がカラカラ。
アリアの視線が、みらいに向く。
「You’re the emotional one.」
ドキッ。
英語、わかる。
“感情の子”。
悪口やない。
観察。
「I saw your live clip. You’re raw.」
Raw。
生々しい。
未完成。
レイが一歩前に出る。
「We improve fast.」
アリア、笑う。
「Good. We don’t like boring stages.」
去り際、振り向かずに一言。
「Tomorrow, show me something unforgettable.」
心臓、ドン。
完全に――挑発。
控室。
沈黙。
みらいがぽつり。
「怪物やん……」
ルカが笑う。
「だから面白い」
レイは静か。
「比較される」
その通り。
世界フェスは、容赦ない。
国内みたいな“成長枠”補正はない。
実力のみ。
夜。
ホテル。
みらいは一人、英語歌詞を練習。
発音アプリで何度も録音。
「Unforgettable…」
舌が回らん。
悔しい。
“国内リセット”
レイの言葉が刺さる。
ノック。
ドアを開けるとレイ。
「まだやってるの」
「寝れん」
レイは部屋に入り、タブレットを置く。
海外SNSのリアクション。
《NEON will dominate》
《Lumiere is cute but not on that level》
刺さる。
「見なくていいのに」
「見る」
みらいの声は小さいけど強い。
「逃げたら国内と同じ」
レイが少しだけ笑う。
「やっと世界目線」
「勝てると思いますか」
直球。
レイは即答しない。
数秒。
「完成度では負ける」
正直。
胸がギュッとなる。
「でも」
視線が鋭くなる。
「爆発力は、ある」
みらいの目が上がる。
「ステージで感情が爆発したとき」
「観客は理屈じゃなくなる」
武器。
またその言葉。
レイが続ける。
「問題は再現性」
一回の奇跡じゃダメ。
世界は毎回求める。
みらいはゆっくり頷く。
「じゃあ、毎回爆発する」
無茶。
でも目は本気。
レイが小さく笑う。
「それができたら怪物」
翌日。
フェス本番直前。
同接予測:80万超え。
桁がバグっとる。
舞台袖。
NEON VALKYRIEの圧倒的歓声。
低音が体を震わせる。
みらいの手が、少し冷たい。
ルカが両肩に手を置く。
「比較はされる」
「はい」
「でも」
ルカの目が強い。
「私たちは私たち」
レイが拳を軽くぶつける。
「怪物、見せてやろ」
ステージ転換。
アナウンス。
“Next, from Japan—Lumière!”
歓声。
ブーイングはない。
でも期待値は未知数。
みらい、深呼吸。
“忘れられないものを見せろ”
アリアの声が蘇る。
ライトが当たる。
世界80万人の視線。
逃げ場なし。
みらいは一歩前に出る。
「Hello, world」
声は、震えてない。
イントロが鳴る。
ここから先は――
成功か。
世界の壁か。




