第16話 『“かわいい”は、世界で通じると?』
Lumière、海外向け初配信。
全編英語+日本語サブ。
同接待機:310,000
桁が、もう異次元。
スタジオの空気が張りつめる。
レイは英語原稿を最終確認。
ルカは発音を何度も口に出す。
みらいは――
「……英語、噛んだらどうしよ」
胃が痛い。
ばってん。
逃げん。
LIVE
「Hello, world!」
ルカが完璧な発音でスタート。
チャット欄、一瞬で多言語化。
《From US》
《Brazil here!》
《Philippines!》
《Spain!》
世界や。
みらいの番。
「My name is Hoshino Mirai!」
少し硬い。
でも笑う。
「I bring love and laughter!」
チャットにハートが流れる。
順調。
トークも滑らか。
ばってん――
問題は、後半のフリートーク。
みらいが日本ノリで言った一言。
「If you cheat on me, I will bury you!」
(浮気したら埋めるけんね!の冗談)
日本の配信なら大爆笑。
でも。
チャットの空気が変わる。
《That’s violent》
《Is that a threat?》
《Not funny》
みらいの笑顔が止まる。
「あ……」
文化差。
冗談のニュアンス、伝わらん。
レイがすぐフォロー。
「It’s a common exaggerated joke in Japan. She means it playfully.」
ルカも続く。
「No violence, only love!」
チャットは少し戻る。
ばってん。
切り抜きはもう始まっとる。
【Japanese VTuber jokes about violence】
SNS拡散。
海外掲示板で軽く炎上。
同接:330,000 → 290,000
目に見えて減る。
みらいの指先が冷える。
“やってしまった?”
配信は最後までやり切る。
笑顔で。
プロとして。
OFF
スタジオ沈黙。
みらい、俯く。
「……ごめんなさい」
ルカは即答。
「誰でも通る道」
レイは冷静。
「今のは経験値」
「でも、うちが……」
声が震える。
レイが真っ直ぐ見る。
「世界来るって、こういうこと」
重い言葉。
「国内の成功は、リセットされる」
みらい、唇を噛む。
悔しい。
怖い。
でも。
逃げたら、国内と同じになる。
その夜。
みらいは一人でスマホを開く。
英語コメントを翻訳。
批判もある。
でも――
《She looks genuinely sorry》
《I think it was cultural difference》
《Give her time》
完全否定じゃない。
伸びしろ、まだある。
翌日。
Lumière公式、英語で声明。
丁寧な説明。
文化の違いへの理解。
みらいも自分の言葉で投稿。
“I’m still learning. Thank you for teaching me.”
数時間後。
海外ファンアートが投稿される。
泣き顔のみらい。
キャプション。
“She learns. She grows.”
登録者数:138,000
減らんかった。
むしろ少し増えとる。
炎上やない。
洗礼。
世界の洗礼。
スタジオで三人、再集合。
ルカが笑う。
「世界デビュー、一発目にしては上出来」
レイも小さく頷く。
「炎上体質、強いね」
「褒めとる?」
「たぶん」
三人、笑う。
みらいは拳を握る。
「うち、もっと勉強する」
英語も。
文化も。
笑いも。
「次はちゃんと、世界で笑わせる」
その目は、前より鋭い。
数日後。
海外大型フェス出演決定。
出演者リストに――
世界的人気ユニットの名前。
【NEON VALKYRIE】
登録者500万超え。
世界トップクラス。
レイが小さく呟く。
「本物の怪物」
ルカの目が細くなる。
みらいは、画面を見つめる。
国内トップを目指してた頃とは、景色が違う。
次の相手は、世界。
物語は、頂上戦へ。




