第15話 『うちは、ひとりじゃ光れん』
福岡公演の夜。
控室の空気は、さっきまでの熱と違う。
海外大手事務所からの正式オファー。
条件は破格。
・世界デビュー確約
・大型フェス出演
・英語圏全面バックアップ
・年収桁違い
ただし。
【Lumièreの活動は大幅制限】
ほぼソロ専属。
つまり——
ルカとレイとは、距離ができる。
沈黙。
最初に口を開いたのはレイ。
「すごい話」
感情を抑えた声。
ルカは、笑っている。
でも目が少し静か。
「みらいちゃんの努力やね」
その“ちゃん”が、少しだけ遠い。
みらいの胸が締めつけられる。
世界。
憧れ。
でも。
脳裏に浮かぶのは——
初コラボの震えた夜。
イヤモニトラブルで視線をくれた瞬間。
「震えは武器」
「並んだね」
全部、二人とや。
数日後。
10万人記念配信。
同接待機:210,000
桁が変わった。
みらいはカメラの前。
今日は重大発表。
チャット欄は期待で埋まっとる。
《海外!?》
《単独デビュー?》
《解散はやめて》
心臓が速い。
でも、逃げん。
「今日は、大事な話があると」
静まるチャット。
「うちに、海外事務所からオファー来ました」
コメント爆速。
《うおおお》
《すげえ》
《行け!》
みらいは続ける。
「条件は、正直すごい」
一瞬、間。
「でも」
深呼吸。
「Lumièreの活動が、ほぼできんくなる」
空気が変わる。
チャット速度が落ちる。
「うち、めちゃくちゃ悩んだ」
本音。
「世界、行きたか」
正直に言う。
「でもね」
声が少し震える。
「うち、ひとりじゃここまで来れんやった」
炎上の夜。
封筒。
ライブのイヤモニ。
全部。
「うちは、ひとりじゃ光れん」
ルカの息を呑む音が、隣で聞こえる。
レイの視線がまっすぐ刺さる。
「だから」
拳を握る。
「海外オファー、単独では受けません」
数秒、完全静止。
次の瞬間。
コメント爆発。
《え》
《まじ!?》
《三人で!?》
みらいは笑う。
「条件出し直しました」
チャットざわつく。
「三人で世界行くなら、やりますって」
沈黙。
ルカが小さく笑い出す。
「やるやん」
レイが目を細める。
「無茶」
みらいは続ける。
「断られるかもしれん」
「でも、うちは三人で行きたい」
同接:248,000
過去最大。
コメント欄。
《それがみらい》
《三人で世界見たい》
《泣いた》
そのとき。
スタッフが舞台袖から合図。
みらい、イヤーモニターに声。
マネージャー。
「今、返事来ました」
空気凍る。
「三人ユニットでの海外展開、前向きに再協議」
一瞬の静寂。
爆発的コメント。
《きたあああ》
《世界ルミエール》
ルカがみらいの肩を抱く。
「対等、やね」
レイが小さく頷く。
「本気で取りに行こう、世界」
みらいはカメラを真っ直ぐ見る。
「バーチャル界に愛と笑いば届けるけん」
少し笑う。
「次は、世界やけん」
同接:270,000
登録者数:120,000突破。
もう新人やない。
炎上枠でもない。
成長枠でもない。
覚悟持ち。
三人で、上へ行く。
エンディング後。
海外SNSで急拡散。
英語タグが並ぶ。
#LumiereWorld
#MiraiHoshino
画面の向こうは、もう日本だけやない。
でも——
世界は、日本よりもっと厳しい。
文化も、価値観も、競争も。
本当の頂上戦は、これから。




