第14話 『ただいま、うちの街』
全国ツアー最終発表。
最後の会場。
福岡公演。
みらいの地元。
画面に表示された瞬間、息が止まる。
「……ほんとに?」
ルカが笑う。
「凱旋やね」
レイが静かに言う。
「主役回」
主役。
その言葉が重い。
ライブ当日。
福岡会場。
現地+配信。
同接待機:150,000
過去最高更新ペース。
バックステージ。
みらいはモニター越しに客席を見る。
ピンクのペンライトが、すでに多い。
「……帰ってきた」
炎上した街。
身バレした街。
封筒を握りしめた夜を過ごした街。
全部ここ。
ルカが肩に手を置く。
「今日は、泣いてもいいよ」
レイが続ける。
「でも歌は外さないで」
「厳しか!」
三人、笑う。
開演。
歓声。
地元の空気は、ちょっと違う。
温度が近い。
1曲目からボルテージ最高潮。
MC。
ルカが振る。
「今日は特別な日やね」
みらいが前に出る。
スポットライト。
「ただいま」
会場、どよめく。
「うち、この街で炎上もしたし」
ざわめき。
「学校でバレて、怖かった日もあった」
静まり返る客席。
「でも」
息を吸う。
「やめんでよかった」
声が震える。
でも止めん。
「今日、こうやって帰ってこれたけん」
客席に、小さなボード。
【花咲、がんばれ】
一瞬、涙が込み上げる。
拓海の字に似とる。
視界が滲む。
「うちを守ってくれた人がおる」
声が柔らかくなる。
「ネットでも、リアルでも」
配信コメント爆速。
《地元民泣いてる》
《古参死亡》
《ここが原点》
同接:178,000
過去最高。
後半。
福岡限定アレンジ曲。
イントロに和太鼓。
観客総立ち。
みらい、センター。
歌い出す前、ひと言。
「バーチャル界に愛と笑いば届けるけん!」
地元アクセント全開。
歓声爆発。
サビ。
会場全体が一体になる。
あの炎上スレも。
あの封筒も。
この瞬間に、上書きされる。
歌い終わり。
割れんばかりの拍手。
ルカが小声で言う。
「完全に持ってった」
レイも頷く。
「今日はあなたの日」
終演後。
控室。
登録者数:99,820
「……え」
10万目前。
スタッフが叫ぶ。
「今の配信で一気に来てます!」
スマホ更新。
99,950
99,982
みらいの手が震える。
「今、いく……?」
三人で配信アーカイブのリアルタイム登録画面を見る。
99,999
全員、息止める。
100,000
一瞬、時間が止まる。
スタッフ拍手。
ルカがみらいを抱きしめる。
レイが小さく拍手。
みらい、涙。
「……10万人」
炎上から、ここまで。
怖い夜も。
震えた配信も。
全部越えて。
「うち、ここまで来た」
でも。
その瞬間。
スタッフが慌てた顔で入ってくる。
「すみません」
空気が変わる。
「海外大手事務所から、正式な引き抜きオファーが来てます」
沈黙。
条件。
・世界デビュー
・専属契約
・Lumière活動は制限あり
つまり――
ユニットか、世界か。
ルカとレイを見る。
三人の空気が、少しだけ変わる。
頂点の先にあるのは、
新しい選択。




