第13話 『ステージは、逃げられん』
ライブ当日。
会場:バーチャル3Dホール。
現地観覧+配信。
開演30分前。
控室。
3Dモデルのみらいが、モニターに映っとる。
「……動いとる」
自分の体が、ちゃんと立体。
指先まで、動く。
スタッフが言う。
「同接、待機で9万超えてます」
「……は?」
過去最高。
桁が違う。
レイは静かにストレッチ。
ルカは余裕の笑顔。
「緊張しとる?」
ルカが聞く。
「バレとります?」
「顔に出とる」
レイが一言。
「震えは武器」
武器。
その言葉、何回目やろ。
開演。
暗転。
歓声SE。
同接:112,000
みらいの心臓が跳ねる。
オープニング曲。
三人、同時にステージへ。
ライトが眩しい。
観客ペンライトの海。
コメント欄、爆速。
《3Dみらい可愛すぎ》
《動いてる!》
《泣きそう》
1曲目、成功。
ダンス、遅れん。
声、震えん。
でも。
2曲目直前。
イヤモニが一瞬、ノイズ。
「ザッ」
みらいの動きがわずかに止まる。
音が、ズレる。
“やば”
一瞬で頭が真っ白。
ばってん。
レイが横で視線を送る。
“感じろ”
みたいな目。
ルカがわずかにステップを大きく踏む。
リズム、視覚で取れる。
みらいはイヤモニを信じん。
ステージの振動。
観客の手拍子。
体で、合わせる。
歌い出し。
声、出る。
ズレとらん。
曲、持ち直す。
コメント欄。
《今ヒヤッとした》
《立て直した!?》
《プロやん》
同接:124,000
数字が上がる。
怖さが、快感に変わる。
MCパート。
ルカが振る。
「みらいちゃん、初3Dどう?」
ライトが当たる。
真正面。
12万人が見とる。
昔なら、震えとった。
今は――
「逃げ場なかですね!」
笑いが起きる。
「でも」
少し真面目な声。
「ここまで来れたの、みんなのおかげやけん」
会場のペンライトが揺れる。
「炎上も、身バレも、怖い夜もあった」
会場が静まる。
「でも、やめんでよかった」
声が少しだけ震える。
でも、止めん。
「今日、ここに立てとるけん」
拍手SE。
コメント欄。
《推しててよかった》
《古参泣いてる》
《成長えぐい》
レイが小さく言う。
「センター、行きな」
次の曲。
みらいセンター曲。
新曲ソロパート多め。
イントロ。
スポットライト、みらいだけ。
心臓、爆音。
でも逃げん。
歌い出す。
レコーディングのときの感情。
炎上の夜。
封筒。
ルカの“対等”。
レイの“伸びしろ”。
全部、乗せる。
サビ。
腕を大きく広げる。
3Dの体が、完璧に動く。
観客ペンライトが一斉にピンクへ。
コメント欄。
《鳥肌止まらん》
《覚醒》
《センター確定》
歌い終わり。
静寂、0.5秒。
そのあと――
爆発的歓声。
同接:138,000
みらい、息が荒い。
涙がこぼれる。
でも笑っとる。
ルカが隣に立つ。
「並んだね」
小声。
レイが反対側で言う。
「今だけは」
三人、手を繋ぐ。
ラスト曲。
Lumière。
光。
ステージが白に包まれる。
終演。
バックステージ。
みらいは床に座り込む。
「……終わった」
スタッフが駆け寄る。
「トレンド1位です」
「……は?」
Xトレンド:
#Lumièreライブ
#星乃みらい覚醒
登録者数:89,700
一気に伸びとる。
10万、目前。
ルカが手を差し出す。
「次はドームやね」
レイが微笑む。
「まだ伸びる」
みらいはその手を握る。
「うち、もっと行く」
怖さは消えん。
でも。
もう、逃げる場所は要らん。
ステージが、居場所やけん。
その夜。
事務所の会議室。
プロデューサーが言う。
「次は全国ツアーだ」
でも、別の資料が机に置かれる。
海外展開計画。
“Lumière 海外進出案”
物語は、国内を越える。




