第12話 『うちの声で、戦う』
ユニット「Lumière」初オリジナル曲制作、決定。
タイトル未定。
作曲家は有名ボカロP。
レコーディングスタジオ。
みらいは、ガラス越しのマイクを見つめる。
プロの空気。
逃げ場なし。
レイはすでに収録中。
ヘッドホン越しに聴こえる歌声。
ブレん。
強い。
ディレクターが言う。
「OKです。完璧」
一発OK。
みらいの喉が乾く。
次は、うち。
ブースに入る。
マイクの前。
手が少し震える。
ディレクターの声。
「リラックスで」
音源が流れる。
アップテンポ。
サビ、高い。
“負けたくない”
歌い出す。
声が、少し固い。
「もう一回いきましょう」
テイク2。
テイク3。
テイク7。
喉が痛い。
ディレクターが言う。
「悪くない。でも“無難”」
無難。
一番悔しい言葉。
休憩時間。
みらいは廊下で壁にもたれる。
「……やっぱ差ある」
そのとき、隣に立つ影。
レイ。
「悩んでる顔」
「……無難らしいです」
レイは少し考える。
「あなた、配信だと違う」
「え?」
「もっと感情むき出し」
確かに。
泣くし、笑うし、震える。
「今は上手く歌おうとしてる」
ズバッ。
図星。
「失敗、怖い?」
みらいは黙る。
怖い。
ユニットの足引っ張るのが。
炎上再燃するのが。
「失敗していいよ」
レイが言う。
「録り直せる」
その一言で、肩の力が抜ける。
再びブース。
ディレクター。
「ラストいきましょう」
みらいは目を閉じる。
思い出す。
炎上の夜。
身バレの日。
封筒。
ルカの言葉。
リスナーの「待つ」。
全部。
歌い出す。
声が、震える。
でも止めん。
サビ。
叫ぶみたいに伸ばす。
音程、ギリギリ。
感情、全開。
静寂。
ガラス越しにディレクターが固まる。
数秒後。
「……それ」
小さく笑う。
「今の、使います」
みらい、息が荒い。
「上手さじゃない」
ディレクターが続ける。
「刺さる」
ブースの外。
ルカが拍手。
レイがうなずく。
「やっと来たね」
みらいの目に涙。
「……うちの声で、戦える?」
レイが即答。
「戦える」
ルカが笑う。
「武器できたやん」
数週間後。
MV公開。
プレミア公開
同接:72,000
チャット爆速。
サビ。
みらいのパート。
コメント欄。
《鳥肌》
《泣いた》
《感情えぐい》
《これがみらい》
再生回数、1時間で30万。
登録者数:52,400
5万人突破。
炎上の新人やない。
成長枠でもない。
“武器持ち”。
配信後。
みらいはカメラに向かって言う。
「うち、まだ伸びるけん」
目が、前より強い。
レイが横で微笑む。
「次はライブ」
ルカが続ける。
「3D、やるよ」
空気が震える。
3Dライブ。
リアルステージ。
観客。
次の試練。
みらいは小さく拳を握る。
怖い。
でも――
「逃げん」
バーチャル界に愛と笑いば届けるけん。
今度は、ステージで。




