まどろみと雪
インターホンが鳴ったような気がした。
早朝、熟睡していた私の意識がほんのわずかに浮上する。夢を見ていた気がするが、内容が思い出せない。まぶたの隙間から入り込んでくる光はまだない。聞き間違いだろうか。
一瞬浮上した意識が再び眠りに落ちた頃、またインターホンが鳴った気がした。
私はのろのろとスマホを探り、時刻を見た。午前五時になるかならないかという時間だった。こんな時間にいったい誰だ。夜討ち朝駆けはよろしくない。
ベッドから起き出すと、ひんやりした空気に思わず身震いした。窓の外を駆け抜けていくバイクの音が聞こえる。新聞配達だろうか。
インターホンのランプが点滅している。こんな早朝にやってくるなんて、きっとまともな訪問者ではない。渋々ボタンを押した。
「はい」
「サンタです」
「は?」
「オートロックで入れないので、開けてください」
「いやです」
一気に目が覚めた。不審者だ。
スマホの画面で日付を確かめる。12月25日。確かにクリスマスではある。
「えーと、サンタなんですが。オートロックが開かなくてですね。かれこれ二時間ほど外にいるんですよ」
「はあ」
「外、めっちゃ寒いです」
「でしょうね」
「開けてください。プレゼントあります」
この時点で通報してもいいのだろうけれど、私は玄関から出た。
オートロックの扉から少し離れて、自称サンタを見る。
赤と白のモコモコした服は、よく見かけるサンタクロースのものだ。
「メリークリスマス」
自称サンタはうれしそうに片手を上げると、私にプレゼントの袋を見せた。
「オートロック、開けてくれないみたいだから、ここに置いておきます」
「ありがとうございます」
「それじゃ」
自称サンタが颯爽と去っていくのを眺めながら、私はしばらくその場に立っていた。
すぐにオートロックの扉を開けてしまったら、不審者が戻ってくるかもしれない。
身体が自然と寒さで震える。先ほどまでの布団のぬくもりが恋しい。
しばらくして、私はこわごわとオートロックの扉を開けた。
自称サンタのくれたプレゼントを乱暴につかんで、すぐにオートロックの扉の奥に引っ込む。自称サンタが戻ってくる気配は少しもなかった。
プレゼントの袋を開けると、中からひんやりとした空気があふれ出た。封を開けるまでずっしりしていた袋は急に軽くなった。
そうして、雪が降りはじめた。
袋の中を探ると「メリークリスマス」と書かれたカードが一枚入っているだけだった。
「なんなの……」
得体の知れない自称サンタとプレゼントに呆気にとられて思わずつぶやいたとき、プレゼントの袋もカードも消えてしまった。
私は寒さに震えながらも家に戻って、念入りに施錠すると、すぐに布団に入り込んだ。
布団の中はあたたかで、私はすぐに眠りについた。
***
日が上った頃、目が覚めた。
窓の外がやけに明るい。雪が積もっている。
夢を見ていた気がするけれど、内容を思い出せない。




