第4話「夜の街の救出劇」
──リムジンを手放し、夜の湾岸を抜けた後。
渡辺が助手席で静かに問いかける。
「若様……これから、どうなさるのですか?」
優雅は窓の外を眺めながら、淡々と答えた。
「少し街を見て回ろうと思う」
渡辺の眉がピクリと動く。
「街……とは?」
優雅は小さく笑みを浮かべる。
「キャバクラだ」
「は……? どうしてキャバクラですか、若様」
優雅は目を細め、冷静な声で説明する。
「考えろ、渡辺。あそこには金脈が流れている。
客の財布、店の帳簿、ぼったくりの仕組み……
“資金の動き”がすべて見える場所だ。
金が流れるところには必ず、問題も流れる」
渡辺は唇を噛む。
「なるほど……“資金の観察”が目的で……ございますか?」
「いや、観察だけじゃない。
金の流れを理解すれば、世の中の人間関係も分かる。
─都心のネオンが乱反射する路地裏。
渡辺が車内で地図を指し示す。
「若様、この周辺にございます三件のキャバクラの中で……」
優雅は指で地図をなぞりながら、淡々と計算する。
「3件目だ。悪評の絶えない店……理由は明白。管理も杜撰、客層も荒れている。
金の流れ、トラブルの発生率、回収効率……ここが最も学びが大きい」
渡辺が小さく息をつく。
「若様……まさか、あの評判の店に向かわれるのですか」
「論理的に正しい選択だ。面白さも伴う」
リムジンを離れ、夜の路地に足を踏み入れる二人。
外の雑踏とネオンの光が、優雅の冷たい瞳を照らした。
店の前に到着すると、看板の文字は薄汚れ、音楽もやや雑多。
客と従業員が入り混じり、微妙な緊張感が漂っている。
渡辺が小声で囁く。
「……若様、この店、トラブル多発でございます」
「うむ、まさに理想的だ。さぁ、入ろう」
優雅は微笑もせず、しかし胸の奥で淡い期待を感じながら、扉を開いた。




