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第18話:『世界の端で笑う愚者』

激化するバトルロイヤルの裏側、御神楽シンは誰にも認識されない“世界の端”へと導かれていた。


そこで彼を待っていたのは、この世界の“観測者”にして最後のタロット「世界」の適合者、ワールドエンド。


これまでの不可解な現象のすべてが明かされる中、シンは自らの本質、そして「愚者」に託された意味を突きつけられる。

暗転の空に、誰も知らない風が吹いた。


タロット全員が戦場で交錯し、意志をぶつけ合うその裏で——御神楽シンは、一人、“外側”にいた。


そこは、ログインした誰にも認識されない場所。ミニマップにも表示されず、スキルもチャットも遮断された、“世界の端”。


現実と虚構の境界が曖昧で、地面も空も、まるでレンダリングが未完了のような灰色のモザイク模様だった。BGMもSEも存在せず、ただシステム音だけが不規則に鳴り、時おりグリッチのような歪みが空間に走る。


「ここは……なんだ?」


シンは警戒しつつ歩を進めた。


その中心に、ただひとつ、無骨な金属椅子が置かれていた。


その椅子に座っていたのは、白髪の青年。


その姿はプレイヤーのアバターのようでもあり、現実的な生身の人間のようでもあった。目元には仄かな疲労が漂い、それが妙に現実味を帯びていた。


彼の背後には、全タロットを模したカードが円形に浮かび、ゆっくりと回転している。その動きは時間のようであり、運命のようでもあった。


「ようこそ、愚者。……いや、“お前”だけが来られる場所だ」


青年は穏やかに微笑んだ。


「俺は“ワールドエンド”。この世界の端であり、中心でもある。全アルカナの始まりであり、終わり。誰も干渉できないGM権限そのもの」


その名を聞いた瞬間、シンの背筋に冷たいものが走った。


かつて一度だけ、運営ログに混ざっていた文字列。誰も意味を理解しなかった謎の記録。


——“WorldEnd=覗いてはならない最後の引き金”——


「じゃあ……お前が、この世界を作ったのか?」


「違うよ。俺は“観測者”だ。全ての選択、全ての分岐、全ての終焉を見届ける存在。プレイヤーでもNPCでもない、ただの“終端”さ」


青年の目は、どこか遠く、遥かな未来を見ていた。


「タロットは象徴だ。“運命”を演じる存在。君たちはログインと同時に“役”を与えられた。皇帝、恋人、死神……みな、何かしらの役割を背負ってゲームに組み込まれている」


「だが君だけは違った。“愚者”とは、どのアルカナにも属さない零番目。演者ではなく、“観客の裏切り”なんだ」


風が吹く。カードが舞う。シンの手元には、いつの間にか“愚者”のカードが戻ってきていた。


「君は、選択を壊す者。予定調和を崩し、あらゆる因果にノイズを差し込む存在。だからこそ、誰よりも運命に拒絶され、同時に最も深く干渉する」


「……干渉?」


「君がNPCにストーキングされたのも、ナレーションが勝手に喋り出したのも、ログの“外側”から影響を与える存在だからだ。君は、この世界の“想定”を逸脱している」


シンは目を見開いた。これまでの不可解な現象が、ひとつひとつ裏打ちされていく。


「でも……なんで俺なんだよ?」


「決まってたわけじゃない。選ばれたわけでもない。“誰も選ばなかった”から、君がここにいる。ただそれだけだ」


「偶然……かよ」


「偶然。だが、それこそが愚者の本質だ。偶然を笑い飛ばし、運命に逆らい、生き抜く。君は“選択されなかった存在”じゃない。“選ばないことを許された唯一のプレイヤー”なんだ」


シンは黙った。


でもその沈黙は、かつてのような戸惑いではなかった。


——これは運命じゃない。俺が、俺として、どう生きるかの話だ。


「君が選ぶか、壊すか——それは次の章に委ねられる。でも、今だけは言っておこう」


青年は立ち上がり、最後のカードを手にした。


“世界”。


「俺は君に、何も望まない。ただ、愚者らしく、笑って生きろ。それだけでいい。そうすれば、この“バグまみれの世界”も、きっと救われる」


カードが光を放ち、円環が崩れ、空が割れる。


世界の端で、愚者は笑った。

登場キャラクター紹介(第18話時点)


◆ 御神楽シン(愚者)

本作の主人公。タロットゼロ番「愚者」に割り当てられ、予測不能の“バグスキル”を持つ存在。選択肢を壊し、ナレーションやNPCに干渉されるなど、常にゲームの“外側”で動いている。今回は“世界の端”に到達し、自身の本質と向き合う。


◆ ワールドエンド(世界)

コードネーム:ワールドエンド。表舞台には決して出てこない、タロット22番目「世界」の象徴であり、この世界の観測者・終端存在。誰にも選ばれず、誰にも関与されない完全なる外部存在でありながら、全タロットの循環を静かに見守る。シンに真実を語り、最後に“笑え”とだけ告げる。



ついに明かされた「愚者」の真実、そして世界の秘密。

これまでギャグとして描かれていたシンの行動が、この世界のシステムそのものを揺るがす力だったとは……!

「笑って生きろ」というワールドエンドの言葉が、今後どう物語に影響していくのか、期待が膨らみますね。


そして次回、物語は衝撃のクライマックスへ!


次回、『ナレーションが消える時』、お楽しみに!

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