第16話:『偽りの世界、そして星を歌う』
混沌と化したバトルロイヤルの戦場。
その中心で、アイドル「星」のヒカリは、かつてない決意を胸に立ち上がる。
音痴アイドルと笑われていた彼女の歌声は、今、戦場に響き渡る“本物の希望”となり、仲間たちの心を癒していく。
これは、ギャグと笑いの中で育まれた“本物の絆”が、世界を変える奇跡の物語——
タロットバトルロイヤルが加熱する中、戦場の一角に、ひときわ眩い光を放つフィールドがあった。
それは、星空の下の野外ライブ会場のように演出された空間。ステージには、ライトアップされた銀のマイクスタンドと、キラキラと舞い散る星屑。
「ここが、わたしの“真実”の場所……!」
タロット“星”適合者・星乃ヒカリは、静かに立ち上がった。
彼女は今まで“爆音アイドル”“音痴バフ要員”とギャグ枠で扱われることが多かった。だが、彼女の瞳にはかつてないほどの決意が宿っていた。
「みんなに届いて……本当に笑ってもらいたい。だから、歌うよ」
《スキル:スター・エンディングソング》
《効果:本気の願いを音楽に変換し、現実改変型支援効果をフィールド全域に付与》
ヒカリの口から、澄んだ声が流れ出す。それはスキル効果による加工音ではなく、彼女自身の“本当の声”。
メロディは柔らかく、優しく、まるで夜空を包む光のようだった。
“仲間の未来を守りたい”——その願いが込められた旋律は、確かに、戦場全体へと届いていった。
戦場の空がゆっくりと割れ、星光が降り注ぐ。観客NPCたちは歓声を上げるどころか、思わず立ち止まり、目元を拭う者まで現れた。
「うそ……こんなに……届いてる……?」
《システム更新:観客の感情評価 上昇》
《スキル効果:共感による実効値強化発動》
《スキル進化条件達成:“星願の終曲”が解放されました》
ヒカリの全身が白金の光に包まれ、衣装も純白のドレスへと変化。そこから繰り出されたのは、真のスキル——
《星願の終曲》
《効果:味方全域に物理・魔法耐性+/精神崩壊防止/リジェネ効果(感情依存)》
「これが……これが、わたしの“歌う意味”なんだ……!」
光はフィールド全体に広がり、混沌としていた戦場の一角に、穏やかな空気が流れる。
爆破で暴れていたミツルの詠唱が止まり、幻覚をばらまいていたユウが静かに顔を上げた。トモヤのビートがヒカリの歌とシンクロし、観客のテンションが最高潮に達する。
「なあ……ヒカリって、こんなにすげえ奴だったのか?」
と、シンが呟く。
「ええ。ギャグでもアイドルでもなく、本物の“星”ね」
とレイが微笑む。
幻想として笑われていた“音痴アイドル”のスキルが、いま確かに現実を変え、——“希望”として、戦場の中心に輝き始めていた。
登場キャラクター紹介(第16話時点)
◆ 星乃ヒカリ(星)
これまで“音痴アイドル”としてギャグ枠扱いだったが、本気の歌によってスキルが進化。現実改変型バフ“星願の終曲”を覚醒させ、戦場を癒しと希望で満たす中心的存在に成長。
◆ 御神楽シン(愚者)
戦場の混沌の中心にありながらも、仲間たちの本質を見届ける観察者。ヒカリの覚醒に静かに感動する姿が印象的。
◆ 神代レイ(恋人)
常に冷静なツッコミ役。ヒカリの本気の歌を“本物の星”と称し、信頼と敬意を示す。
◆ 不破ミツル(塔)・月代ユウ(月)・陽田トモヤ(太陽)
それぞれ爆破・幻惑・ハイテンションで戦場を混乱させていたが、ヒカリの歌により一時静止。無言ながらも彼女の変化を認める仕草を見せる。
ギャグキャラだと思われていた「星」ヒカリが、真の力を覚醒させる熱い展開でしたね!
“歌で世界を癒す”という彼女の本気の願いが、戦場の空気を一変させました。
次回は、アルカナ戦争の裏側で暗躍する、「選ばれなかった者たち」の物語が動き出す……!
次回、『選択されなかったものたち』、お楽しみに!