第15話:『バトルロイヤル開幕!』
ついに開幕した「アルカナ戦争」の第一フェイズ、タロットバトルロイヤル。
これまで登場したタロット適合者たちが入り乱れ、それぞれのスキルと思い出をぶつけ合うカオスな戦場と化す。
そんな中、シンは自らのタロット「愚者」の真の力を解放し、戦場そのものの運命を捻じ曲げようとする。
“原初の塔”の頂上、空を貫く石造りの祭壇に、22人のタロット適合者が一堂に会した。
頭上には巨大なカード陣が天空を回転し、風は止まり、世界そのものが息を潜めていた。それはまるで、運命が静かに時計の針を進めるような、張り詰めた一瞬。
《システム通知:アルカナ戦争・フェイズ1:タロットバトルロイヤル 開始》
《形式:フリーランダムマッチ/各陣営混合/淘汰型ポイント制》
「いきなりバトロワ!? 陣営とか無視なの!?」
御神楽シンの絶叫と共に、各キャラクターが光の線で分散され、戦場“幻想領域:選択の環”へと転移されていく。
そこは、時間すら歪む不思議な空間。各自の信念・思想・スキルによって環境が変化し、戦場の一角は森、他は劇場、天空都市、血の川、鏡の回廊とさまざまに変容していく。
レイとサキは開始直後に激突。選択肢強制VS契約代償、精神的揺さぶり合いの攻防戦。
ミツルの爆破詠唱がヒカリのステージを吹き飛ばすと、ヒカリは爆風を逆に光演出に転化してバフを撒く。観客NPCが盛り上がるたび、スキル効果が変動するライブ戦闘。
ユウトの“叱咤の福音”は全域に精神デバフを与え、リツが“静穏の水面”でそれを中和。場の空気がテンポ良く揺れ動く。
トモヤの“ラディアンス・ビート”が全体テンションを爆上げすれば、ユウの“夢喰の揺光”が敵味方問わず幻覚で強制ログイン履歴を見せつける。観戦していたミナトがスロットで“全員強化”を引いてさらに混沌に拍車をかける。
カナデはバイク召喚獣“ロード・トライアンフ”で戦場を縦横無尽に駆け巡り、物理的にルールを破壊。レンは戦闘ログをリアルタイム裁判形式にし、ヒットが入るたびに“選択の重み”を問いかけてくる。
そして、その混沌の中心——
「……俺は、何を“選ばない”んだ?」
シンは、自らのスキル“愚者の軌跡”を初めて解放する。
《スキル:愚者の軌跡》
《効果:全選択肢の一時停止/時間干渉型ランダム運命改変》
すると、全プレイヤーの行動が一瞬“凍る”。空間に浮かぶ選択肢ウィンドウが一斉に“……”の表記になり、全スキルの発動が中断。
ただ一人、シンの周囲だけが“選ばない”ままに動き続ける。その結果、いくつかの攻撃判定が“命中未定”となり、勝敗すら不確定になる。
「また世界がバグってんな……でも、これが“愚者”か」
とユダは呟く。
「この混沌、実に美しい……!」
とミツルが詠唱を再開。
「ふふ、選択肢があるってだけで、もう尊いですわ」
とサキが意味深に笑い、
「えっ……あたしのターン、飛ばされた!? シンくーん!?」
とヒカリが半泣きで叫ぶ。
こうして——
正義・混沌・自由——22人のアルカナが、スキルと思想と過去をぶつけ合う“選択の戦場”がついに開幕した。
登場キャラクター紹介(第15話時点)
◆ 御神楽シン(愚者)
バトルロイヤルの中で唯一“選ばない”を貫く存在。スキル“愚者の軌跡”は戦場そのものの選択を一時凍結させる、バグ級干渉能力。
◆ 神代レイ(恋人)
シンの相棒。強制選択スキルで精神的駆け引きを得意とするが、今回は混沌に振り回され気味。
◆ 御影サキ(悪魔)
契約と代償で敵を縛るテクニカルタイプ。選択の裏をかくことに長ける策略家。
◆ 不破ミツル(塔)
詠唱型の爆破魔導士。カオスの中心を好み、フィールドを何度も再構築する破壊の申し子。
◆ 星乃ヒカリ(星)
歌って戦うアイドル型支援者。ライブ型スキルは観客の反応によって効果が変動。
◆ 花房ユウト(教皇)&水島リツ(節制)
全域デバフと回復のバランス担当。精神面での干渉と安定化が得意。
◆ 陽田トモヤ(太陽)&月代ユウ(月)
テンションブーストと幻覚による戦場破壊コンビ。戦況を予測不能にするトリックスターたち。
◆ 小野ミナト(運命の輪)
スロットで支援も妨害もできる運ゲー少女。今回は“全員強化”を引き、戦場をさらに混沌へ導いた。
◆ 風嵐カナデ(戦車)
バイク型召喚獣で物理制圧を行う突撃娘。高速移動で戦場を撹乱し続ける。
◆ 真壁レン(審判)
全戦闘ログをリアルタイムで“裁く”監視者的存在。ダメージに意味を与える判定型サポート。
「愚者」シンの“選ばない”という選択が、バトルロイヤルという戦場そのものをバグらせてしまいました。
それぞれのアルカナたちのスキルと思想が交錯する中で、この戦争は一体どうなってしまうのでしょうか?
次回は、シンの行動が呼び起こした幻影の世界で、アイドル「星」のヒカリが歌う……!?
次回、『偽りの世界、そして星を歌う』、お楽しみに!