第13話:『アルカナ戦争、始まるってよ』
これまで繰り返されてきた、バグだらけの強制イベント。
そのすべてが布石だったかのように、ついに全タロット適合者を巻き込む“アルカナ戦争”が発動した。
「光明派」「混沌派」「中立愚者派」の三つの陣営に分かれ、それぞれが信念を賭けて戦う。
物語は新たな局面を迎え、シンの運命の歯車が、いま動き出す——!
“強制反省フェイズ”が終了した翌朝。
アストロラーベの空には穏やかな光が差し込んでいた。筋肉は静かにストレッチを繰り返し、ヒカリは音痴ライブの復習、ミツルは黒歴史ノートのアップデートにいそしむ——まるで日常のような静寂。
しかしその空気は、突如として破られた。
《全タロット適合者へ》
《システム神託イベント:アルカナ戦争 発動》
《参加者:全22アルカナ(強制)》
「また強制かよおおおお!?」
御神楽シンの悲鳴がギルドホール全体に反響し、慣れた様子でレイが耳を塞ぐ。
「最近のイベント、どんどん規模が大きくなってない?」
中央ホールの天井が開き、黄金の光が降り注ぐ中、タロット模様が空間に浮かび上がる。各アルカナの記号が三つの巨大な円に分かれ、複雑に絡み合いながら回転し始めた。
《陣営選択:光明派/混沌派/中立型“愚者”起点》
「おい……これって、いよいよ分裂戦争じゃねぇか……」
シンの言葉に、ナレーションが重々しく語り出す。
「これは、選ばれし者たちが“選ばなかった者”の意味を問う戦い。すなわち、運命の分岐点——アルカナ戦争である!」
神託の指示により、タロット適合者たちは自らの信念に基づき三つの勢力へと割り振られていく。
光明派:秩序、統率、正義を重んじる構造主義陣営。主導者はユダ・アークライト。
混沌派:自由、直感、破壊と創造のスパイラルを信奉。主戦力にミツル、サキ、ヒカリなど。
中立愚者派:選択しない、あるいは選べない者の立場。中心は御神楽シン。
「ちょっと待て、俺が“中立の軸”? そんな大層な器じゃないって!」
「いや、あんたが選ばれなかったことで、全部おかしくなってるのよ。つまり、原因」
「レイの冷静な分析が地味に刺さるぅ……!」
《イベント開始まで:24時間》
《タロット適合者の位置情報がリアルタイムでマップに記録されます》
《各陣営代表は、開戦時の初期布陣を決定してください》
「初期布陣……!? これ、本格的に戦争シミュレーションフェーズ突入だろ!」
《戦場マップ:“アルカナ戦場・原初の塔”》
《召集対象:全22タロット適合者》
転送リストが光と共に表示される。そこには、これまでギルドに関わった仲間の名前——ユダ、レイ、ミツル、ヒカリ、ミナト、カナデ、サキ、レン、ユウト、リツ、ユウ、トモヤ……
そして、未だ登場していない謎のタロットたちの名前も——“女教皇・氷室セラ”“皇帝・仁科レオン”“魔術師・真澄アキラ”など、未解禁のアルカナたちがついに動き出す予感。
「これ……ほんとに、全キャラ集合ってやつか……」
仲間たちはそれぞれの武器を手に取り、表情を引き締める。筋肉は震え、塔は唸り、星はきらめき、悪魔は笑い、恋人は無言でシンの手を引いた。
こうして、
ギルド“アークタロット”を中心に、全タロット22名がそれぞれの信念と選択を賭けて挑む、運命の戦い——“アルカナ戦争”が今、始まろうとしていた。
登場キャラクター紹介(第13話時点)
◆ 御神楽シン(愚者)
本作の“中立の軸”。選ばれなかった存在として、混乱の発端にして中心。本人にその気はないが、どこか運命を引き寄せてしまう体質。
◆ 神代レイ(恋人)
冷静沈着なツッコミ担当。今回もシンに現実を突きつけつつ、陰で支える参謀ポジション。
◆ ユダ・アークライト(正義)
光明派のリーダー格。秩序と正義を重んじ、理想世界の構築を目指すが、愚者による選択破壊に不信を抱く。
◆ 不破ミツル(塔)
混沌派の象徴。中二全開の思想と爆破を繰り返しながら、新たな世界の再誕を夢見る。
◆ 御影サキ(悪魔)
契約と誘惑を操る交渉屋。混沌派寄りの立場で、ルールそのものの揺さぶりを好む。
◆ 星乃ヒカリ(星)
希望と音痴のアイドル。混沌派のムードメーカーで、戦場を照らす爆音光源。
◆ 真壁レン(審判)
記録と反省を司る審判。秩序の守護者であり、冷静かつ淡々と過去と向き合わせる立場。
◆ 花房ユウト(教皇)&水島リツ(節制)
秩序派のサポーターコンビ。説教と癒やし、正反対の手法でチームを支える。
◆ 月代ユウ(月)&陽田トモヤ(太陽)
幻覚とハイテンションという両極端の存在。戦場の空気を最も撹乱するユニット。
◆ 小野ミナト(運命の輪)
完全ランダム系の幸運少女。気まぐれな一手で戦況を変えるポテンシャルを秘める。
これまで登場したキャラクターたちが一堂に会し、ついに“アルカナ戦争”が始まりました。
ギャグ満載だったこれまでとは一転、シリアスな展開も予感させますね。
そして次回、物語の鍵を握る「正義」ユダが、その裏に隠されたもう一つの顔をのぞかせる……!?
次回、『正義と隠者の影』、お楽しみに!