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EPISODE2、未回収イベント

 感知。


 この馬鹿みたいな魔力量、また転生者か。


 ったく。


 アリハナちゃんをもっと見たいのに…。


「ユイリ様」

「分かってるよー。転生者だねぇ」


 森の茂みから颯爽と現れたのは、つり目が特徴的のキツネ顔をした男。

 見るからに胡散臭い雰囲気を出している。


 アリハナちゃんから聞いた情報によると、転生者は何人かで【従者】と呼ばれる人達とパーティーを組んで行動する。


 アリハナちゃんも【従者】らしい。


 パーティーを組むという事は、保有する能力を補う為だろう。

 強化(バフ)支援(サポート)と連携するのは厄介だね。

 それにチート能力だし。


「女が2人…?本当に四天王の炭田さんは負けたのか?」


 男がわたし達を見て驚いた様子をみせた。

 炭田とやらが国に戻って報告を聞いたのかな。

 あれから数時間くらいしか経っていないのに、予想以上に対応が早い。


「また四天王とかって言わないよね?」


 四天王戦とか最終決戦間近くらいにしてほしい。

 ゲームバランス狂っちゃう。


「四天王…か。炭田さんを負かした相手を俺が倒せたのなら四天王になれるかもしれないな」


  男は顔を抑えながら笑みを浮かべていた。


「俺は世界の統率者(ヴァルテン)所属、元木(もとき)だ。俺の出世の為にお前を倒す」


 世界の統率者(ヴァルテン)だか知らないけど、わたしの美少女旅ライフを邪魔するなら容赦はしないぜっ。


 そっちが名乗るなら、わたしも名乗ってやる。


「わたしは…」


 わたしが同じようにして名乗ろうとすると、アリハナちゃんから「アンパクト」という発音と同時に地面を抉る爆発音が鳴り響いた。


 木々がなぎ倒され、視界が青空で広がる。


「名乗る程の者ではありません」


 アリハナちゃんが呟き、魔法を放ったであろう杖を下ろしていた。


 わー…。


 流石、現実主義ぃ。


 先手必勝だ。


 元木の魔力も消失してるし…。


 結構遠くに吹き飛ばされたね、こりゃ。


「先を急ぎましょうか、ユイリ様」


「あ、うん」


 こっわ。


 アリハナちゃんって特撮ヒーローが名乗ってる時に攻撃するタイプなんだ…。

 まぁ、戦闘だと致命的な隙だしね。


 ◆◇◆◇


 あれから1時間、襲撃してきた転生者が追って来る様子はない。

 アリハナちゃんの魔法で、息の根が止められたか逃げ出したか。


 どちらにしても、魔王討伐という目標を掲げるだけの事はあるよね。


 転生者っていうのは、チート能力みたいなものだしそれを吹き飛ばせるのは凄い。


 さっき、「アンパクト」って言ってたけど魔法書で読んだっけ。


 衝撃の逆流波(アンパクト)


 魔力攻撃を魔法に乗せて放つ魔法。

 そして魔力防御でさえ打ち砕くとされる必殺の魔法とも言われるもの。


 やっぱり、アリハナちゃんも魔力の操作が出来るってことだよね。


「ここです」


 アリハナちゃんが辿り着いたのは佇む一本の木。

 進むと体を通り抜け、そこは野営をした跡がある洞窟だった。


 外からは見付けづらい幻影魔法が施されていた。


「ほへぇ。隠れ家みたいだねぇ」

「大抵は視覚に頼ることが多いですから、意外と便利なんです」


 木を隠すなら森の中とはよく言ったものだ。

 アリハナちゃんが焚き火を灯す。


「アリハナちゃん、さっきのって衝撃の逆流波(アンパクト)?」

「そうですね」

「じゃあ、アリハナちゃんも魔力の操作ができるんだ」


 すると、アリハナちゃんは少し驚いた様子だった。


「やはり、ユイリ様は【魔力操作】を会得していたのですね。誰から習ったのですか?」

「誰からって…独学だけど?」

「え?」


 アリハナちゃんの表情が固まる。

 四天王の炭田との戦いで驚かれたのは、その魔力操作ってやつか。


「だってわたし、女神の加護(デーア・ギフト)持ってないから、出来ることを追求していったら、魔力を操れないかなって思ってさ」


 転生者は、身に宿る魔力量が常人と比べても遥かに大きい。

 だから直ぐに転生者だって分かる。


 それに、あんな馬鹿みたいな魔力を剥き出しにしていると寄ってくる魔物も少なからずいるんだよね。


 だから色々と思考錯誤したんだけど…。


「普通は、魔力操作技術を身に付けた方から伝授されるものなのです」


 くっ…。


「伝…授…だと?」


「え、ええ」


 くっそうっ!

 師匠と呼べる人との、修行イベントを叩き潰していただと!?


 師匠との厳しい試練を乗り越え、強くなる事を実感しながらの成長イベントを逃した。


 やらかしたぁ…。


「魔力操作は、大きく3つです」


 アリハナちゃんが魔力を軽く放出させると、薄らと身に纏う。


「これが、魔力纏い。魔力操作の基本です」


「これでしょ?」


 わたしも同じようにして魔力を纏う。


「そうですね 」


 魔力操作について、アリハナちゃんは、大まかに説明してくれた。


 魔力纏いを基礎に、魔法や相手に自身の魔力をぶつける魔力攻撃。


 纏う魔力を増やし、攻撃を防ぐ魔力防御。


 そして、相手の魔力を読み取り、魔力の流れを捉える魔力感知。


 これが魔力操作による基礎らしい。


「他にも応用などがありますが、下手に教える事は出来ません」


「教えてよぉ。もしかしたら出来るかも」


 特にその応用とやらが聞きたい。


「もしかしたら、ユイリ様なら可能かもしれませんが魔力操作の鍛錬は、独学だけでは危険が多すぎます」


「危険?」


「はい。体内の魔力が暴発する可能性もありますし、わたしも全て扱える訳ではありません。やはり、魔力操作の練度が高い者でないと…」


 暴発…かぁ。

 体が木っ端微塵とかになったら嫌だな。


 でも、希望もあるよね!


 逃した修行イベントも復活するかも。


 師匠と呼べる人と出会えるかもだしっ!


「ふっふっふ…。ん?」


 また、魔力の反応だ。


「さっきの転生者でしょうか…」


 反応は1つ。


 転生者なのは間違いないだろうけど。


 やり過ごすのがセオリー。


 だけど、この洞窟は他に抜け道がない。


 能力も分からないし、地形を変えるほどの威力だったら生き埋めになっちゃう。


 反応は1つだし、人数的に有利だけど、あっ!


「アリハナちゃん!」


characterfile2。

アリハナ。

趣味 お花摘み


現実主義の魔法使い。

主に仕える【従者】の肩書きを持っている。

魔法や魔力操作技術が高く、冷静に戦況を見て行動する。

意外と抜けている部分もある。

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