チュートリアル7、ターニングポイント
◆◇◆◇
こんにゃろう…。
わたしが築きあげたマイホームを木っ端微塵に吹き飛ばしやがって。
殺意マシマシでぶっ飛ばさないと気が済まない。
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
「何が?」
アリハナちゃんが何やら心配している。
「さっきから、あの爆破攻撃を受けてダメージを負っているように見えないので…」
「確かに!」
わたしでも驚きだ。
マイホームが破壊された怒りのあまり、攻撃を受けた事を忘れていた。
「確かに…って。貴女は女神の加護を授かっていないと…!」
「持ってないけど…そんな驚く?」
あれ?
なんか驚かれるようなことしたっけ?
待てよ。
この手の反応って、何か特別な事をした時に驚かれる展開だよね。
ってことは、わたしが普段から意識してることが凄く特別だったりする?
「もしかしてアリハナちゃん。わたしが魔力を抑えてることに気付いてたりする?」
「そうなんですか?」
違った…。
うーん。
とりあえず、あいつらぶっ飛ばすか。
四天王っていうもんだから、めちゃくちゃ強いかと思ったけど、致命傷になり得る攻撃は感じなかった。
まだ手加減しているのか。
でも、あの焦り方は殆ど本気。
わたしでも倒せる!
「炭田…とか言ったっけ?その能力の他に、人を爆弾に変えたり、設置したりそんなこと出来たりする?」
「出来たらとっくに殺せているっ!」
ありゃ、馬鹿正直に答えちゃうのか。
爆破能力者っていったら、漫画やゲームとかでチートかよ!ってツッコミたくなるくらい強いからねぇ。
だったら接近戦で倒せる。
対人戦は初めてだけど、運動神経はそれなりに悪くないはず。
体感型スポーツゲームと同じような要領でやればいいんだ。
まずは足に魔力を集中させてと…。
わたしは体内を循環する魔力を足に集中させる。
踏みしめるように意識して、地面を蹴る。
そうすれば、加速出来る。
「馬鹿な…!」
よし、護衛を通り抜けて炭田に急接近だ。
「わたしのマイホームの恨み…!思い知れ!!」
格闘ゲームで学んだ、必殺技をくらえ!
わたしは拳を固めて息を深く吸い込む。
→➘→+拳。
これがゲームで培った戦闘知識だ!!
わたしは拳を地面から這うようにして空目掛けて突き上げる。
拳が見事に炭田の顎に直撃。
「ぐぅっわぁぁぁぁぁ!!」
炭田は白目を剥いて地面に投げ出され意識を失っていた。
「ふっ…」
どんなもんじゃい!
◇◆◇◆
私の名前はアリハナ。
魔法使いです。
魔王討伐を目標に旅を始めたのですが、障害となる転生者と戦う為、辺境に住む転生者の元へ訪れたのですが。
彼女は女神の加護を持たない存在でした。
彼女を流れる魔力を視ても、常人より少し強い程度の魔力量。
しかし、彼女は言いました。
「もしかしてアリハナちゃん。わたしが魔力を抑えてることに気付いてたりする?」
…と。
転生者というのは、与えられた魔力を常に展開したままです。
なので、ひと目で転生者と分かります。
ですが彼女が魔力を抑えているとするなら、魔力について熟知しているという事になります。
数々の強者でも苦戦すると言われる、あの技法を彼女は身につけている。
転生者という存在でありながら。
一体…誰から学んだというのでしょうか。
◆◇◆◇
何とか倒せたけど…。
あいつら…徒党組んで来ないだろうな。
「この屈辱は晴らしますわ!覚えてなさい!」
いや、来そう…。
走って逃げたところをみると、転移系の魔法は使えないみたいだし。
国に戻れば、転生者の中に転移類いの能力を持ってるやついるだろうしなぁ。
ゲームでいうファストトラベルみたいな事をされても困るしね。
これがゲームだったら、きっちり息の根は止めるんだろうけど。
そうなれば、ここには長居できない。
次の敵が攻めてくる可能性は高い。
魔法や魔力について深く知っているわけでもないから迎え撃つにしてもリスクが高すぎる。
はぁ…せっかく手に入れた安住の地が…。
旅に出るしかないのか。
「アリハナちゃん…。その魔王討伐っていう旅にわたしも連れていくの?」
「そのつもりですが…凄く嫌そうな顔してますけど…」
言われても仕方がない。
安住の地である辺境マイホームを木っ端微塵にされて、わたしの世界との繋がりである【ゲームlove】シャツも燃えカスの残骸。
だらだらマイライフが突如として終わりを迎え、誰かがやるだろう使命をやらなければならない。
待てよ。
これはルート分岐な気がする。
わたしは脳内で取るべき選択を浮かべた。
1、転生者達の国家世界の統率者で働く。
チート能力持ちの転生者達だから、戦力的にも申し分がなく、多分やることやってれば悠々自適な快適マイライフを謳歌できる。
2、アリハナちゃんと旅に出る。
現実主義者クール系美少女魔法使いと魔王討伐という旅。
3、この場を去り、どこかで隠居する。
全力で逃走してどこか安住の地で目立たずひっそり余生を過ごす。
他にも沢山あるが、選択肢を3つに絞る。
わたしがしたいのは異世界マイライフ。
悩む必要はない。
これが人生のターニングポイントかもしれないけど、わたしは…。