チュートリアル5、転生者達の国
誰だろ。
というか人が来るの珍しいよね。
ここ山奥だし。
「あの…何か用です?」
フードに…木彫りの杖。
身長はわたしより小さいな。
見るからに魔法使い。
「ここの家主様ですか?」
おお。
透き通った声…。
振り向いた少女の顔は、どこか切ない表情でも、蒼き瞳の奥底にただならぬ決意を宿していた。
◇◆◇◆
「粗茶だけど…」
わたしは家に招き入れ、少女へと紅茶を差し出した。
「頂きます」
少女がフードを取ると、キメ細やかなショートヘアーの白髪に青みがあり、色白の肌が顕になった。
うーん。
男の娘という線も捨て難いけど、多分女の子だよね。
お人形さんみたいだ。
普通なら興奮のあまり「ロリ美少女来たァ!」と叫ぶところだけど警戒するよね。
ここは街からも離れた辺境で村からも離れた山奥だ。
杖を携えているのをみれば、職業は魔法使いか賢者か僧侶か。
色々なパターンが考えられる。
わたしがここに辿り着くまでに、結構魔物に襲われたりもしたし、決して楽な道中じゃないはず。
となれば、この少女が相当の実力者の可能性が高い。
魔法職は、仲間の支援が必須でもあるからだ。
なるほど、ロリババアという可能性もあるねぇ。
ゲーム知識だけど。
問題は何のためにここに来たのかだ。
「申し遅れましたが、私は冒険者のアリハナと言います。転生者とお聞きしまして参りました」
「あー…だったら無駄足かも。確かにわたしは転生者だけど女神の加護がないんだよねぇ」
転生者と言っても、大国からの使命を受け、魔王討伐を目標にしている者だけじゃない。
冒険者となり、パーティーを組んで異世界を冒険する者達もいる。
女神の加護を持つ転生者は、即戦力になる。
彼女もわたしを勧誘して来たという訳か。
「構いません。転生者としての知識をお借りしたいのです」
おっと。
予想外の返答だ。
「転生者としての知識って…何のために?」
わたしは、アリハナちゃんからとんでもない事を告げられた。
◆◇◆◇
「て、転生者達の王国?」
わたしは、アリハナちゃんの話を黙って聞いた。
話の内容は、数十年に渡り転生者達が結託し王国を築いているという事だった。
驚きのあまり呆然とするが、アリハナちゃんの声色は少しだけど震えていた。
「その転生者達は王国を築いただけではなく、他国を力でねじ伏せたり何種族も滅ぼしているといいます」
転生者達の王国かぁ…。
別に建国する事は悪い事じゃないんだろうけど、特権である女神の加護を悪用しているんだろうな。
何となくだけど、わたしを訪ねて来た理由が分かった気がする。
女神の加護は、まさしくチート能力と呼べる代物だ。
この世界の魔法を遥かに凌駕するものである事は間違いない。
魔導書を読む限り、魔法というのは想像を具現化させた奇跡の御業。
もし、わたしが居た世界にある兵器なども実現出来る可能性もある。
そうなれば対抗手段がないだろう。
きっとアリハナちゃんは、転生者達に酷い目に遭わされたに違いない。
じゃなきゃ、こんな所に…転生者としての僅かな希望を抱いて来たりしないだろう。
これは展開的に激アツなんだろうけど、何にも出来ないからなぁ…わたし。
「そっか。アリハナちゃんも酷い目に遭わされたんだね」
こんな少女を酷い目に遭わせるなんて。
寄り添ってあげないと…。
「別に転生者達に何かされたりした訳ではないですよ」
へ?
さっきまでの緊張感は…?
「ただ魔王を討伐する際に未知の魔法は邪魔になるので、対抗手段を思案しようかと」
わぁ…現実主義ぃ…。
「ちなみに冒険で手伝えることある?」
「特にないですね。自分の身は自分で護れますからね」
すごーく、キッパリ言うねぇこの子。
嫌いじゃない。
傷付くけど。
「逆に言ってしまえば、転生者は女神の加護が無ければ脅威でもないという事が分かりましたし」
アリハナちゃんの冷たい目が刺さる刺さる。
まぁ、戦力として役に立たないしね。
すると、耳を劈く爆発音と共にわたしの建てたマイホームの屋根が吹き飛んだ。
「何事よ!?」
わたしは直ぐさま飛び出すと、黒のコートを羽織った男が手を向けていた。
「バッキャロウっ!!これを建てるのにどれだけ苦労したと思ってんだっ!」
わたしの1週間の努力がぁぁ。
何してくれんだ!
「お前、転生者なんだってな」
見るからに感じが悪そうなやつだな…。
あとは左右に一人ずつ。
護衛かな。
「だったら何?」
「俺達の国で働け」




