チュートリアル4、戦友?
わたしは現代から行動を共にする戦友。
【ゲームlove】とプリントされたブカブカシャツを脱ぐ。
わたしが居た世界と唯一繋がるもの。
これがあったからこそ今日まで生きているのかもしれない。
あらゆるゲームで苦楽を共にして来たのだ。
わたしは、革装備に着替え近くの村まで足を運んだ。
また仕事を貰うためだ。
徒歩30分の所にサルバという村がある。
そこに居るオレジさんが仕事を紹介してくれるのだ。
サルバ村は、少子高齢化に悩まされていて働き手を募集している。
日銭を稼ぐのには持ってこいだ。
この世界の通貨は、金貨、銀貨、銅貨。
金札、銀札、銅札となっている。
食費代を稼ぐとしたら、この村であれば銀貨1枚で1週間は凌げる。
わたしは、こじまんりとしたおじさん、オレジさんの元へ足を運ぶ。
「よく来たな勇者よ…。仕事が欲しくばこの儂を倒すが良い」
「勇者秘伝の技をくらうがよいー!」
前置きは、いつもこんな感じだ。
オレジさんは、田舎にいるおじさんという雰囲気だから親しみやすい。
おじさんから見れば、わたしを孫のような存在だと思っているらしい。
「そいで、オレジさん。日銭が欲しいんだけど何か仕事ありませんか?」
「仕事って言ってものう…お前さんが全部片付けたから特に困ってないのう」
わたしは、小袋を取り出して逆さにしてふりかけのようにして振る。
空。
お金がない。
お金が無ければ食料がない…。
「転生者なんだから、どこかの大国にでも行けば仕事くらいあるだろう?それに冒険者になるいうのも手だぞ?」
「そうなんですけどねー。ここの生活に慣れてしまって、今更って感じです」
転生する前は、異世界でチート能力で無双するぞって息巻いていたけれど女神の加護もないんじゃ、やる気が今ひとつ出ない。
ここでの暮らしの唯一の楽しみは…。
「ならオレジさん。また、使ってない魔導書とかあったりしないですか?」
魔法を取得するくらいだ。
女神の加護は無くても、魔力がある。
せっかく異世界に来たんだから魔法が唯一の楽しみだ。
「それも、お前さんに全部渡したぞ。もう読んだのか?」
「そりゃあ…もう。25冊を5周ほど」
わたしは手を開いて数字を示す。
だって暇なんだもの…。
本とか読むのはゲームと同じくらい好き。
紙媒体が望ましいけど、部屋を埋めつくしかねないから電子書籍だったなぁ…。
スマホに2000冊くらい入ってた…。
異世界といってもわたしにとっては外国に来たのと同じ。
文字や言語は、自動的に翻訳されていたのがせめてものの救い。
じゃなきゃ、本当に詰んでた。
「仕事ないなら、今日は帰ります…」
わたしは肩を落とすと、オレジさんが紙袋を手渡して来た。
「大したもんではないけど、持ってきな」
「いいんすか!?ありがとうございます!」
入っていたのは、果物数種類と野菜。
これで食い繋がなきゃいけないから、暫くは適当に狩りでもして自給自足しなきゃ。
家を建てたり、家畜を育てたり…。
そういうゲームをやってたお陰で、小屋みたいな家は作れたし、家畜は母親の実家が畜産農家だったからそれなりに知識はある。
そんな事を思いながら、自宅へ戻ると見知らぬ人が入り口で立っていた。