EPISODE17、輝け一等星
「所詮は冒険者だ。仕留め損なったか」
世界の統率者四天王、炭田が従者を引き連れ姿を現した。
「これから始末するところだって言ったら?」
座り込むシセイは、冷ややかな目を向けたまま、口角を上げる。
結莉とシセイ、2人は健闘を讃え合う。
そんな雰囲気に水を差されてしまったのだ。
「なら始末しろ」
「…」
「なぜ、貴様のようなやつを引き入れたのか知らんが貴様諸共、葬ってくれる」
炭田は納得がいかなかった。
他の四天王や国を支える大臣が、冒険者に結莉を始末するように依頼を出したのか。
しかし、炭田を始めとする転生者達が続けて敗北。
実力者を引き入れるのは当然の判断だ。
敗者である炭田に発言権はない。
だが、彼のプライドがそれを許さないのだ。
「くっ…はははは」
シセイは吹き出してしまう。
「いやー、笑わせてくれるぜ」
炭田の行動が滑稽過ぎて笑いが堪えることが出来なかったようだ。
現にシセイは、嘗めきっている。
「その程度で、信用が回復すると思ってんのか?」
「これは俺のプライドの問題なんだ。ぽっと出の転生者にやられる訳がない…!」
「やっすいプライドだな。実際、負けてんだろ?こいつは強えぞ。少なくともお前よりはな」
実際に拳を交えたシセイは、結莉を高く評価している。
好敵手と呼べる存在だ。
「調子に乗るなよ」
炭田が顎で合図すると、以前にも付き従っていた金髪ロングの従者が縛られたアリハナへと剣を突き立てる。
「やべ」
解くのを忘れたシセイが焦る。
それを見た金髪ロングの従者は、勝ち誇ったような表情を浮かべた。
「そんなに、この子が気になりますの?わたくしにとっては、この上ないチャンスでもありますわ」
彼女の名は、アモレ・メディク。
従者序列12位で、一族は代々で大国に仕える従者の家系だ。
「ねぇ、アリハナさん?」
「…どちら様ですか?」
「そうですわねぇ…。貴女はそういう人でしたわね」
アモレもラスと同様に怒りを顕に声を震わせる。
アモレはアリハナの被害者第一号という因縁があった。
序列確定戦。
アモレは、由緒あるメディク家のご令嬢。
礼儀作法は勿論、剣術も叩き込まれた。
剣術だけでいえば、1桁は確実と噂されるほどだ。
メディク家の人間は、必ず1桁になっており、名声を欲しいままにしてきた。
ーーそして、華々しい初戦を飾るはずだった。
「我が名はアモレ・メディク。我が一族の剣に誓い正々堂々…」
開始とほぼ同時に放たれたアリハナの衝撃の逆流波により、アモレは無惨に敗北した。
さらに最悪なことに、メディク家の面々が観戦、名家の貴族もいる中での敗北だった。
期待されていた分、失望も大きかった。
結果的に2桁序列となり、栄光に泥を塗ったという。
「あれから、わたくしがどんな思いで…」
涙無しでは語れない。
「おい…パツキンお嬢様よぉ。アリハナちゃんに手ぇ出したら…ボコボコに…するからな」
怨念が籠った結莉の声に、息を呑むアモレだったが強気な姿勢を貫く。
状況的には有利なのには変わらない。
「四天王って聞いたから、少しは期待したんだけどよ。がっかりだぜ」
「嘗めるなよ、冒険者…!」
「金なんていらねぇ。報酬はてめぇらだ」
シセイが構える。
「アモレ!俺に防御魔法だ!」
「剣舞、剣城!」
アモレは剣で炭田をなぞると魔力防御で囲む。
魔力防御を何層にも重ねた結界で、反撃性能を持つ。
結莉対策だ。
「メディク家に伝わる魔力防御を組み込んだ魔法か。だがよ、てめえをやるのは、俺じゃねぇ」
にっとシセイが笑い、親指を下に向けた。
「頼んだぜ、兄弟」
その言葉と同時に晃輝が炭田の後ろへ出現する。
「!?」
炭田は目を見開いている。
ーーだが、恐れることはない。この防御に触れればダメージを受けるのは貴様だ。
アモレの魔力防御は、俊敏さを得意とする相手を仕留めるためのもの。
いくら速くても捉える事ができる。
「待ってたぜ相棒!」
晃輝が右手を開き、魔力防御に触れると、すり抜け炭田の体に直接触れた。
「な…に…!?」
兄弟こと、晃輝の独壇場…開幕!
◆◆◆◆
「超新星爆発だぁっ!」
晃輝が叫び、右手を炭田へ押し当てると、目を開いてはいられないほどの眩い光が辺りを包む。
炭田は逃げようにも体が固定されたように身動きが取れない。
これが、晃輝の保有する女神の加護、その力の一端である。
「夢もでっかく!希望もでっかくだっ!!」
晃輝の右手がさらに輝きを増し、暴風が吹き荒れていく。
「俺の独壇場だぜっ!煌めく宇宙の一番星!!」
晃輝の女神の加護は発動条件が特殊である。
それは、相手に勘づかれず、完全な虚を付く事である。
魔力操作技術が高い者がいる中で、虚を付くことは至難の業。
結莉と同様、晃輝は魔力操作を身に付け、最大限に能力を発揮できる。
そして可能となる。
虚を付いた究極の一撃を。
「させませんわッ!!」
アモレが斬りかかるが、それを見過ごすシセイではなかった。
「邪魔すんなよ。兄弟の独壇場だぜ?」
シセイは短剣でアモレの剣を受け流すと同時に蹴り飛ばし、縛り上げていたアリハナも回収する。
「サンキュー、相棒っ!」
晃輝から魔力が爆発的に放出され、右手に全て収束していく。
「輝け一等星!!赤色超巨星ッッ!」
爆発的な閃光と共に、周囲の地面が抉れ、炭田やアモレ達も何処かへ吹き飛ばされた。
その威力は隕石でも落下した跡のように、クレーターが出来上がっている。
「一撃必殺は、ロマンだよな!」
晃輝の笑みが光る。
女神の加護、煌めく宇宙の一番星。
完璧に虚を突く事が条件であるが、成功するとあらゆる防御を貫通する。
触れられている間は、体を強制的に固定させる事が出来る。
保有する魔力量を爆発させ放出し、魔力そのものを相手にぶつける一撃必殺。
放出する魔力は調整出来るものの、発動後は一時的ではあるが使用した分だけの魔力が消失してしまう欠点がある。
これが晃輝の一撃必殺ロマン砲である。




