EPISODE14、気を取り直して
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結莉は胸に痛みを感じていた。
その表情はどこか遠くを見据え、何かを諦めた雰囲気さえも漂わせている。
ときめきのような衝動ではなく、ただただ物理的に痛みを感じてしまっていた。
「……痛ぇ」
結莉はただ、自身が巨乳であるという贅沢な悩みを抱いていた。
明らかに様子がおかしいことを察したシセイは顔を伏せて頭を掻き、軽く体操を始めた。
シセイが放った不意討ちの暗器。
結莉は見事にかわしてみせた…。
ーーかに思われた。
結莉の反射神経の良さも相まって、不意討ちの暗器をかわせたのだが、一本。
一本だけが、右の下乳に深々と突き刺さっていた。
もし、貧乳もしくは普通サイズの胸であれば当たる事はなかったのではないかと悔やんでいる。
「ま、まぁ…そういう時もあるぜ?」
放った張本人、シセイも気遣う。
これは命のやり取りだ。
しかし、シセイが気遣うほどの哀愁を漂わせている。
ーー気を取り直して。
結莉は暗器を引き抜き、再び対峙する。
「もういいのか?」
「全然大丈夫なんだぜ!」
大丈夫そうな気はしないが、決闘を続行する。
そして、遠目から潜伏しながら単眼鏡で決闘の様子を眺めている晃輝はボヤいていた。
「なんだよ…相棒のやつだけ楽しんじゃってさぁ」
へそを曲げていた。
「あの転生者の子。可愛いな」
晃輝は戦闘よりも、結莉に視線を奪われていた。
「理想が現実になった感じだよなー」
晃輝も結莉と同様、ゲームはやり込むタイプだった。
ジャンルは幅広く、特にキャラメイクが出来るゲームに目がない。
作成した美少女キャラでプレイしており、ストーリーとは別に独自のキャラ設定を組み込んでプレイするのが好きなのだ。
結莉を見ていると、ゲームの中から飛び出して来たようで目を奪われてしまっている。
これが、シセイが1人でやると言った要因でもある。
シセイの中では、晃輝も引けを取らない実力者である事に変わりはない。
しかし、欠点が1つある。
女に弱い。
さらに巨乳好きと来た。
結莉が晃輝の好みに当てはまる以上、実力を発揮する前に倒される事を危惧したのだ。
現に、魔王軍との戦いでも、魔族っ娘に手が出せない事も多々あり、命の危機さえある。




