EPISODE11、|渡鴉《ワタリガラス》
◇◇◆◆
【渡鴉】の異名を持つ2人組、シセイと晃輝は結莉に転生者をけしかけ様子を窺っていた。
文言としては「四天王の炭田が負けたらしい」と。
その噂だけで、転生者の1人は結莉を倒しに向かったが勝負にすらならなかった。
一連の様子を眺め、分析するにしても情報が少な過ぎる。
「なぁ相棒、大丈夫か?」
晃輝が心配そうにシセイの顔を覗き込む。
「焦ったな!本当に撃つとは思わなかったぜ」
シセイの衣服がボロボロになり、頭には葉っぱがこびり付いていた。
アリハナの判断は、予想外にも的中。
魔力を押し殺し、潜伏していたシセイ目掛け、衝撃の逆流波を放ったのだ。
「想像以上に厄介な相手だなー。久々に骨が折れそうだな兄弟」
「楽しそうだよな、相棒は」
シセイは作戦を練るとき、子供のように無邪気に活き活きとする。
依頼である前に強者と剣を交えるのが楽しくて堪らないのだ。
「やれない手がない訳じゃねーぞ?」
「例えば?」
「厄介なのは、あの従者だな。下手な小細工は見逃さねぇだろうな」
「隙がなかったもんな」
「潰すなら先に従者だ。俺が引き付けて、兄弟の能力で従者を黙らせる。それで、転生者は俺がやる」
「珍しくシンプルな作戦だな」
普段のシセイなら、もっと入念に細かい作戦を立てるはずだ。
あえてシンプルな作戦に切り替え、直感だけが頼りだった。
「だがまぁ、今回は俺一人でやる」
シセイの発言に肩透かしをくらった晃輝は苦笑いを浮かべた。
「待てよ相棒。俺だと頼りないってか?」
「違ぇよ、直感だ直感。一応、何かあった時のために兄弟はこのまま潜伏しててくれよ、な?」
晃輝はもっと抵抗したいが、シセイの時折見せる直感は当たる。
「じゃあ、頼んだ」
シセイと晃輝は拳を合わせた。
◆◆◆◆
「ユイリ様、誰か来ます」
アリハナちゃんが身構える。
わたしもびっくりしていた。
感じる魔力を見る限り、転生者ではない。
漂わせる雰囲気は何か強そうで、少ない魔力。
魔力の操作技術がある人間だ。
しかも、いきなり魔力が現れやがった。
「おっと不意討ちはナシで頼むぜ嬢ちゃん」
アリハナちゃんが動くよりも先に先手を打たれてしまう。
この行動を見るからにして、ある程度の情報は仕入れて来たって感じだ。
こいつからは、転生者とはまるで違う不気味さがある。
もしかして…強い?
「俺の名前はシセイ。一応、転生者を始末しろって言われてんだ」
わたしは思わず、
「どうぞ」
と、拷問?していた転生者を差し出す。
「違ぇよ。ボケを挟むんじゃねぇ」
意外とこいつノリいいな。
敵じゃなさそうなんだけど。
「大金でも積まれたってか?」
見た目が賞金稼ぎっぽいし。
「それもあるんだがよ?純粋にお前に興味があってな」
「新手のナンパか?」
「だから違ぇって、つってんだろ」
うん。
やっぱりノリがいいなこいつ。
ふざけたくなるな。
「めんどくせぇな。決闘しようぜ」
シセイが決闘を申し込んで来た。
わたしとしては、全然受ける気満々なんだけど。
「ルールは簡単、1VS1。そこの嬢ちゃんも手は出さねぇってのが条件だ」
条件を呈示して来たって事は、アリハナちゃんを警戒してる?
「ただ…殺すかどうかは、お前の実力次第だ。どうする?」
わたしは受けて立とうとしたけど、やっぱりアリハナちゃんが横やりを入れる。
「呑むわけないでしょう。他の襲撃者ならともかく、貴方相手では」
どうやら、アリハナちゃんは知ってるっぽい。
「おいおい、ただの冒険者だぜ?」
シセイは体を動かしてみせるが、ただの冒険者じゃないことくらいはわたしにでも分かる。
殺気っていうのかな?
圧が凄い。
「ここ最近で話題の【渡鴉】。冒険者の中でも指折りの実力者…ですよね」
マジか。
めちゃくちゃ強いじゃん!?
もう嫌なっちゃうなぁっ!
段階踏んで強い敵出て来てよ!!
「そいっと」
するとシセイが指を弾く。
攻撃?
すると、アリハナちゃんが地面に倒れてしまった。
「動け…ない…!」
アリハナちゃんが、じたばたと地面で、もがいている。
よく目を凝らしてみれば、糸のようなもので縛り上げられていた。
「魔力で作った糸だ。これだけ近付けば外さねぇよ」
この時点で凄くまずい状況になってしまった。
アリハナちゃんでも、逃れる事ができない糸。
あんなの食らったら一瞬で勝負がつく。
「…シセイとか言ったっけ?」
「あん?」
「こんな美少女を縛る趣味がある変態なんだね」
「は?」
作戦が決まるまで、動揺を誘ってみる。
何かいい手…何かないか?
「邪魔されるのが、めんどくせぇなって思っただけだ。見捨てて逃げてもいいぜ。そうなればどっちも殺すだけだ」
逃げるつもりはないけど、言われると腹立つ性格なんだよねぇ、わたし。
「誰も逃げるなんて言ってないでしょ。畳むぞ、てめぇ」
作戦を立てようと思ったけど、真正面からぶっ潰してやる…!




