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EPISODE8、大切なもの

「ーーうっ!?」


 ラスが勝利を確信した瞬間、彼女の左肩を、鋭く貫く魔法の刃が撃ち込まれた。


 激しい痛みとともに、鮮血が空中に舞い上がる。


 その血飛沫が、空気を赤く染め上げた。


 そこに立つのはアリハナだった。


 杖をしっかりと構え、冷徹な表情を浮かべている。


「ようやく隙を見せましたね」


 アリハナは冷静に告げた。

 鋭く光る目、表情に一片の迷いはない。


 一瞬の油断。


 この勝利を確信する瞬間に生まれた隙。


 アリハナは知っている。


 必要最低限で、状況を覆すだけの手段を。


「【咆哮(ロア)】を…防ぐなんて…!」


 ギリっと歯を噛み締めながら、溢れ出る血を抑え付けていた。


咆哮(ロア)】を受けて、立っていた者は存在しなかった。


 ラスにとって、それほどまでに信じ難い状況だ。


 そして何よりも、何度も…。


 何度も何度も何度も。


 見てきたあの光景を自分が体感するとは思いもしなかったのだ。


 従者育成協会でのアリハナは、まさに異質な存在だった。


 幾度となく繰り返される戦闘訓練。


 序列確定戦でみせたアリハナの行動は、多くの従者の反感を買った。


 戦闘開始の合図と共に、体勢を整えさせる間も与えない不意打ち。


 勝利を確信した相手の隙を逃さない。


 正々堂々とした戦いとは、かけ離れたものだ。


 アリハナの戦闘は、まさに現実的で冷徹だった。


 戦場では、一瞬の隙が命取りになる。


 隙を見せることは、即ち【死】を意味するのだ。


 だからこそ、彼女の動きは無駄がなく、無慈悲で確実だった。


 何度も見たはずなのに、ラス自身は身をもって知ることとなった。


「絶対的な攻撃手段でも…アンタを倒せないなんて…!」


 自身の価値を証明するために磨いた【咆哮魔法】。


 そして編み出した技法を磨く度、勝率は上がっていった。


 その確かな自信を今、粉々に打ち砕かれたのだ。


「申しにくいのですが【咆哮魔法】は、絶対的という訳でもないんです」


 アリハナの言葉には、確かな根拠が宿っていた。


「嘘よ…。従者育成協会でも…絶対的って…」


 ラスの声が震え、信じていたものでさえ、崩れ去る恐怖を感じていた。


「それは従者育成協会が【咆哮魔法】の研究を止めてしまったからです」


 アリハナは【咆哮魔法】について静かに語る。


「咆哮魔法は、使用者の練度が求められ、使い手が限られます。だから協会が掲げる魔法とは、かけ離れたものなんです」


 アリハナは深い理解を示していた。

 従者育成協会は、簡便な魔法研究を掲げているが、咆哮魔法はそぐわない。


「咆哮魔法は特別ではないんです」


「…な」


「そもそも、協会に属する者達は、魔法と魔力に対する知識と技術が卓越した者ばかりです。危険性が高いから使わないってだけです」


 従者育成協会を管理している者達は、歴戦の猛者ばかり。

 逸話が残されるほどの英雄だ。


「作る側にとって、その魔法の対抗策も講じますし、貴女が辿り着いて証明したんですよ。その対抗策を」


「対抗策…?」


「放出魔力で暴走魔力を制御してますよね」


「あ…」


「放出魔力なら暴走魔力を相殺できます。似たことをしたまでなんですよ」


 やはり、敵わない。


 魔力の操作技術も、知識も。


「あたしの負け…か。悔しいな…」


 認めざるを得なかった。

 いや、とっくに認めていたのかもしれない。


「こんなモノで決める価値なんて大したことはないんですよ」


 アリハナは、従者の証を取り出した。


「私達は従者です。だったら、尽くすと決めた相手に認められた時こそ、本当の価値のような気がしますけどね」


 何処か、アリハナの覗かせる瞳は寂しそうだった。


「決闘は、アンタの勝ちよ…」


 ラスは首から下げていた従者の証をちぎり、アリハナに投げ渡した。


「別に要らないですけど?」


「いいから、持ってなさいよっ!」


 ラスは悔しい表情を浮かべたまま、下手くそな笑顔を向ける。


「次こそ勝って、あたしがアンタより上って証明するから!待ってなさい!」


 そう言い残して、ラスは急降下して元木の場所へと向かっていった。


「もらっても、上がる序列がないんですよね」


 アリハナの序列は、何を隠そうーー。


 従者序列、1位なのだから。



characterfile4

ラス・ヘーベ

趣味 ぬいぐるみ集め

得意魔法 咆哮魔法

◆◆◆◆

従者序列6位。

扱いが難しいとされる咆哮魔法を独自に編み出した技法で扱えるようにした。

勝負に貪欲で、勝つための努力を惜しまないが、空回りする時もしばしば。

自宅はぬいぐるみまみれだったり…。


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