EPISODE5、今度こそ
◆◆◆◆
「お前の戦闘スタイルは、力でゴリ押しってところか。こうやって隙を突くのも容易い」
こんにゃろ…。
短剣だけじゃなく痛いところ突きやがって。
誰から見ても分かる通りわたしは、【脳筋】プレイ派だ。
ちまちまと作戦練るよりだったら、自分のプレイスキルで相手を正面からねじ伏せる。
だから、暗殺や潜入のゲームが苦手だ。
そして、この野郎の戦闘スタイルは相手を観察してコツコツとダメージを削る。
わたしが1番感情を爆発させるタイプだ。
一撃に込めるロマンは爽快感がある。
決まった時に心から吠えてしまう。
わたしの攻撃は当たらなければ意味がないけど、相手は確実に体力を削って来る。
しかも、攻撃が当たるまで認識できないときた。
殺すつもりならとっくに殺されている。
つまり、この野郎は相手を痛ぶって殺すのが趣味ってことだ。
「へっ。隠れてコソコソしてる割に、わたしの命取れねぇくせによく吠えるなぁ」
煽っとくか。
「ならお望み通り、殺してやるよ」
ーー来た。
煽りに乗ったのか、元木が短剣を振りかざして距離を詰めてきた。
いくら攻撃が通り抜けるとしても無防備過ぎる。
血も止まってないし、早々にケリをつけないと出血多量で死ぬ…!
さっきの反省を活かして、攻撃と同時にカウンター狙いで意識を飛ばしてやる!
焦らずにタイミングを合わせる。
魔力感知で動きも分かるから出来るはず。
わたしは差し迫るこの状況で、ふと疑問に思った事があった。
知り得る限り、魔力感知ってのは文字通り、相手の魔力を感じる事が出来る。
どうしても、不意を突かれた事が腑に落ちない。
元木が魔力の操作が出来ているのなら、納得は出来るのだが、動いた時も魔力の変化はあまり無かった。
通り抜ける攻撃。
攻撃の時に実体化する体。
考えている内にわたしは自然と目を閉じていた。
そして、ただ前からの攻撃に対処するだけではなく、魔力の圧の方向…。
前後から感じる魔力の流れを断ち切るようにして、拳と蹴りをそれぞれに浴びせた。
自分でも驚いていた。
まさか拳と蹴り。
どちらにも当たったという感触があったのだから。
「がっ!?」
「なっ!?」
上擦った2つの声。
目を開ければ、そこに元木が2人、地面で悶絶していた。
◆◇◇◆
双子?
そう見間違うくらいに瓜二つ。
似ているどころか、全く同じ顔だ。
双子なんかじゃない。
これは…。
「幻影魔法ってやつ?」
しかも…。
「おいおい、攻撃のタイミングは完璧だったはずだろ?」
「ああ。確実にアレで仕留められるはずだった」
会話してやがるし。
やっぱり、これが元木の【女神の加護】。
幻影魔法というよりは分身か?
「幻影魔法なんて、そんな単純なもんかよ」
「俺の言う通りだ。これは俺の理想形態だ」
元木2人は、血を拭い語り始めた。
「【幻想の友達】。これが俺の【女神の加護】さ」
…ほう。
「空想上の友人ってあるだろ?」
実在しない友達だっけ?
「子供の時、思った事はないか?もう1人の自分が居たらどれほど良いだろうと」
元木は嬉々として語る。
「悩み事、褒めて欲しい事。そう、俺の理解者は俺だけだ。これほどまでに素晴らしいことはない」
考えた事はある。
ゲーム攻略…レベル上げ。
もう1人の自分が居たらどれだけ楽だろうって。
でも、こいつの場合…。
「あんた、自己愛強いだろ?」
わたしが指を差しながら、きっぱりと言い放つ。
元木の表情が引き攣ったまま固まっている。
図星だったらしい。
「でもさ気持ちは分かるよ。実際、友達作るのって難しいからさ」
わたしも、高校で作れなかったし。
「だけど、同調するだけの友達は、本当に友達なのか?」
こいつは、自分の考えに同調して欲しいだけだ。
「ふ、ふん…。所詮はお前も俺を理解しない、馬鹿ってことか!」
「気にすることないぞ、殺せば勝ちだ」
急に馬鹿っぽくなったな。
「俺を馬鹿にするやつは、皆死ねばいい!さぁ行くぞ、俺たちっ!!」
元木が5人に増えて、一斉に掛かって来る。
いくら増えてと攻撃の時には実体化はする。
だったらわたしは、5人同時に撃破できるようなスピードとパワーでねじ伏せる!
「死ねぇぇえ!」
元木達の同時攻撃。
「今度こそぶっ飛ばすッ!!」
わたしは、がむしゃらに元木達をぶん殴ってみせる。
今度こそ、今度こそだ。
これで終わりだ。
「俺たちが…負ける…なんて」
「ちょっと勇気があれば、友達なんて1人くらいは出来るってもんよ」
きっとね。
characterfile3。
元木 舷、22歳
趣味 詰め将棋
女神の加護
幻想の友達
自身の性格、記憶までも引き継いだ状態で幻影に投影する能力であらゆる攻撃を透過させる効果を持つ。
最大5人まで分身可能だが、本体のみ透過効果がない。
◆◆◆◆
転生歴4年。
友達いない歴=年齢で、自己愛が強く友達ができなかったが、イマジナリーフレンドを作り、友達作りを放棄した。
友達が出来るかもという理由で転生者の王国に入団したが否定されるのを嫌い、孤立した。




