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デスゲームはキャンセルでお願いします!

「サア、お前には絶対に叶えたい望みがあるはずだ!オレと契約しようじゃないか。」


「叶えたい望みはあるよ。でもねえ…」


「そらみたことか。お前の魂を賭けるだけでなんだって望みを叶えてやれるんだぜ。オレとの知恵比べに全部勝てばいい。それだけだ。かんたんなことじゃねえか」


僕は今悪魔のリクルーターに学食で勧誘されている。


昼にお腹を空かせて、日替わりカレーを食べにきたら、相変わらず満員の学食。カレーのトレイを持って、空いている席を探していたら、壁際の二人席に一人で座っていた金髪の男子学生がいた。その学生はこちらに目を向けると、ニコニコして手招きしてくれたので、つい、優しいなあと向かいの席に座ってしまったのだ。とたん、周りの学生のしゃべっている声が全て聞こえなくなって、 正面の金髪の目が緑色に光った。ガッカリした。いいのだ、ほかの学生じゃなくて、ひっかかったのが僕でまだよかったと思えば。


「知恵比べには、もうお前の大学の連中も参加してるんだぜ。そいつらと協力すりゃあいい」


「誰が参加してるの?」


「それは参加してのお楽しみさ。だが確実にお前の知り合いは何人かいるから安心しろ」


これは、どれかの講義担当の講師混ざってるな。僕は、まだこの大学でそんなに知り合いいないし。なんだか悲しくなってきた。あ、午後も講義あるわ。ヤバ、急がないと。


「いや、これ、僕達を殺し合わせるつもりだよね?」


金髪の口が割けたように大きく開く。


「なぜだ?」


「あなたは、自分の知恵比べについて、協力すればいいとはいったが、協力したら簡単になる知恵比べとは一言もいっていない。むしろ、あなたは一人だけ裏切るとそいつだけが得をするのが好みだよね?」


金髪は笑い出した。


「それにあなたは知恵比べを僕達にさっさと強制したい。さっさと強制するには、命を脅して、競い合わせるのが手っ取り早いんでは。」


「ワカッタ、ワカッタ。ハハ、お前は悪魔のことがよく分かってる。それは認めよう。」


金髪は自分のトレイをそのままに、お茶のコップをもって席を立とうとした。いや、立っちゃ駄目だよ。


「ん?ナンダ?まあいい。だからこそ、お前はこのゲームに向いている。お前は実は頭がいい。それなのに、こんな大学にいる。ならば、こんな大学の奴等など敵ではない。お前は殺し合いでも勝利し、オレとの知恵比べにも勝ち、望みをいくつでも叶えることができる。ソウダロウ?」


僕は食べおわったカレーの器の上に左手を、銀のスプーンの上に右手を添えた。


「ごめん。さっきのは嘘なんだ」


「ウソ?ナニガだ?」


「あなたに合わせて、あなたの好きそうなところまで言った。うん、あなたは殺し合わせたいんだろう。でもそれが本質じゃない。あなたはこのゲームで()()()()()()()()()()。悪魔は契約者の望みを叶えない。願いは願わない形骸化された形でしか叶わない。契約者は幸せにならない。そして、魂だけが悪魔のもとになる。それが、いつだって悪魔という存在だった。もちろん例外はあるかもしれないけど」


金髪はいぶかしげな表情になった。


「フン、そこまで知っていてナゼ?ク、ナンダ。カラダが動かない?」


「あなたの存在をここから逃げ出せないように、一時的に固定させてもらったよ」


「ナンダト?そんなことが普通の人間に出来るはずが!?クソッ、なぜ憑依すら解けない?」


「手伝うよ」


そう返すと、僕は右手の銀のスプーンを、金髪が未だに持っている緑のコップに投げつけた。緑のコップはプラスチックと思えないほど粉々に砕け散り、黒いハムスターみたいな本体が飛び出てきたので、カレー皿で受け止めた。金髪の男子学生は目を閉じて、ゆっくりと机に俯せになった。


「ウウッ…。憑依すら解きやがった。それに次元移動できねえ。こりゃ、ムリだわ、なんだこのバケモノ」


そういうと背中を向けて、横になり続ける黒ハム。そのまま寝てしまったら、僕の単位の危機なので、お皿を揺さぶった。


「イッテェなあ、それにしても、フン、オレが本体を移そうとしたことすら分かってたとは」


「そんなに不自然じゃない行動で、悪くなかったけどね。で、話なんだけど」


「お、皿の中なら動けるぞ、でも、やっぱ出られねえ。ウン? そういや?」


呟きながら、黒ハムは2本足で立つと、自分の片方の足裏を見ながら、首をかしげている。いや、さすがに、そのカレー皿を神聖道具に変えたときに、カレー成分は消してるから大丈夫だよ。


「まず、あの金髪の子は大丈夫だろうね」


「知ってるダロ。あいつは未契約だ」


こういう契約にうるさい悪魔は契約以外では無害だったりする。おおよそ、あの金髪は体を乗っ取られる前も学食で寝ていたに違いない。黒ハムは腕を組んで横を向いた。大きい耳と、背中の蝙蝠羽を除けば、可愛いものだ。


「わかった。じゃあ次。こっちの提案は、封印か条件付生活」


「ナンダ、オマエ?プレミアムエクソシストじゃねえのか?」


「エクソシストなら、本体をお皿に載せずに、そのまま殺そうとしてたんじゃない?」


「まあそうか。変なフェアネス戦闘狂野郎なのかと思ったが。封印は知ってる。条件付生活ってのは?」


その後、話し合いは無事決着はついたんだけどね。やはり、講義は10分遅刻しました。大教室だったし、後ろから入ったからたぶんバレなかったんだと思うんだけど。とほほ。


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