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おうちに帰ろう

作者: 堀吉之助


 きいきいきい。


 自転車のペダルをこぐたびに音が鳴ります。


 その少年は「ちぇ」と小さく言いました。彼は泥だらけの野球のユニフォームを着ていました。


 自転車のかごには大きなスポーツバッグが詰め込まれています。


 夕焼けの空が遠く、大きな雲を茜色に染め上げています。


 帰り道の途中で少年はふと思いました、自転車を止めて後ろを振り向きます。坂の上から町が見えます。彼は今日も頑張ったなぁとなんとなく思いました。


「あれ? 今日何をしたんだっけ」


 そう思って今日のことを思い出そうとしましたがなぜか思い出せませんでした。ただ、頑張ったことだけは心の中でわかっていました。


「ま、いっか」


 彼はまた自転車をこぎ始めます。きいきいきい、と音を鳴らすおんぼろ自転車は少しふらつきます。帰り道にはどこかから、カレーのにおいがしていました。彼は早く帰ってご飯を食べようとおなかを鳴らしました。


 きいきいきい。


 自転車は夕日の中を走っていきます。



☆☆


 とある老人ホームでその男性は眠るように息を引き取りました。


 その老人は82歳でした。


 彼の顔にはこの年までいろんな苦労を刻んだ皺があります。


 ただ、最後の表情はどこか穏やかで安らいだものでした。


 駆け付けた遺族はその顔があまりに幸せそうで泣きながら笑った方もいたそうです。


 みんなで言い合いました。


 きっといい夢を見ていたんだろうって。

 


 

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