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ユメツクリ《Remake》小説版  作者: 椎木一
プロローグ
25/50

追走

 マンションを出ること約二時間、俺たちは隣町の千秋にいた。

 オフィスビルが並ぶ歩道にいるので明かりはあるが、空はすでに暗かった。


「……」

 楼園の視線がそろそろ痛い。

 ……俺が誘導してるわけじゃないんだからそんなに睨まないでくれ。

 先頭をいくユメリは黙々と歩いていた。



 マンションを出てすぐのこと。


「あっち」

 ユメリはあさっての方向を指差した。


「あんた、ヴィオラのいる場所わかるの?」

 楼園が驚く。


「わかる」

 俺と楼園は顔を見合わせ頷く。


「よし! じゃあ案内してくれ」

 俺の言葉を合図に、ユメリはてくてく歩き始めたのだった。



 歩き始めたのはいいんだが、まさか歩いて隣町までくるとは思わなかった。

 千秋に来るとわかってれば最初からバスに乗ってたというのに……


 道中ユメリに行き先を尋ねても「あっち」と「こっち」しか言わないし、ユメリの歩幅に合わせて移動してるもんだからすっかり日も暮れてしまった。

 今更ながら、俺がユメリを抱っこして誘導させればよかったかななんて思う。

 そうしとけば倍くらい早くこれたな……

 といっても、ヴィオラが千秋にいると決まったわけじゃない。


「なあ、ヴィオラはこの近くにいるのか?」

「こっちにいる」


「近くにいるかどうか訊いてんのよ!」

 結構ストレスを感じてるようで、楼園はピリピリしてる。

 気持ちはわからんでもないが。


「ちぐさうるさい」

 しかもこんなときに限ってユメリは余計なこと言うし!


「なんだとこのやろう!」

「ちょっ! ちょっとまておまえら!」

 慌てて二人の間に入って引き離す。


「おまえっていうな!!」

 ……あーもぅ、めんどくせぇ奴だ。


「わかったから落ち着け! ここでケンカしたってしょうがねーだろ!」

「わたし、これでもすっごく我慢してんだけど?」

 俺だって色々我慢してますけどね。


「そんなこと言っても、今はユメリを頼るしかないんだから胃に穴が開いても我慢しろ! たぶんもうすぐだから――ってユメリどこいった!?」

「あいつならあそこよ」

 不機嫌に指をさす先を見ると、すでにユメリは歩道橋の上を歩いていた。


「あいつ一人で勝手に!」

「ふんっ」

 機嫌悪そうに……いや、相当機嫌悪く楼園も俺をおいていってしまう。


「……自分勝手な奴らだな」

 本当にヴィオラには早く出てきてほしいよ。



 程なくして、突然ピタッとユメリが止まった。


「……どうした?」

「ヴィオラがいる」


「どこ!?」

 待ってましたと言わんばかりに、楼園が過剰に反応する。


「あっち」

 小さな指はビルの隙間の奥を指している。

 いわゆる路地裏。

 ヴィオラがいるとは指差すものの、ユメリは動こうとしない。


「どうしたのよ?」

「きづかれる」


「これ以上進んだらヴィオラに気づかれるっていうのか?」

「ユメリだけ」


「もっとちゃんと話なさいよ!!」

「落ち着けって! ユメリはもともとこういう話し方なんだよ! それで、俺たちだけならヴィオラは気づかないんだな?」


「うん」

 ユメリの返事を聞くやいなや楼園は姿を消した。


「……あいつ……マジかよ」

 俺が驚いているのは、まさに楼園のその動き。

 気づいたときには、その後姿は路地裏の角に消えるところ。


 すぐ隣に移動したのとは訳が違う。

 一瞬で数十メートル先に移動した。

 人間では到底不可能なその行動を俺はよく知っている。

 まるで、俺が使った能力と一緒じゃないか――



■ ■ ■ ■ ■



「ヴィオラ!!」

「んなっ!? 千種!!」

 気づいたときには遅かった。

 千種はもう自分の姿を捉えている。


「っちぃ!! クソったれが!!」

 意識を切り替えるとユメリの気配がすぐ近くにあった。


 なんて失態!

 まさかここまで気配を消してくるとは思わなかった。


 ユメリのいるところは気配を消して近寄れる境界線。

 気配を消していようが、それ以上一歩でも近づけば存在を確認できるというのに、向こうはそれに気づいてギリギリのところで止まっている。

 普段ならもっと遠くからでも確認することはできるのだが今だけは話が違った。

 いまだに治まらない衝動に精神が殺がれ、普段どおりの感覚が麻痺しているのだ。

 それでも警戒はしてたというのに、故意に気配を消されてはさすがにどうしようもない。


(ちゅーことは、ここに千種を連れてきたんはチビッ子の意思か)

 ユメリが千種を連れてくるなんて、何がどうなったのか教えてほしいところだがそんな暇はない。


「ヴィオラ!」

 泣いているような怒り顔。


「よぉ千種。そない能力使ってまでウチに会いに来てくれたんか?」

 とりあえず元気そうで何よりだが、ユメリが近くにいる以上、千種と話をしている余裕はない。


「何言ってんのよ! あんた今までどこに――」

「ホンマかんにんなぁ……でも、もうちょお我慢したってや」

 瞬間、空高く跳躍し姿を消すが――


「逃がすか!」

 同様に千種も跳躍し後を追ってきた。



■ ■ ■ ■ ■



「ユメリ!」

 気づいたらユメリの瞳は血色(あか)くなっていた。


「なんだ!? なんかヤバイのか!?」

「だっこ」

 慌てる俺に抱っこしてくれとユメリが両腕を伸ばしてくる。

 よくわからないが、とりあえず抱きかかえた。

 近くを歩いている人たちは()()()()()()()()()()()()()()


「逃げたほうがいいのか!?」

 こいつがこうなってるってことはヤバイんだろう。


「あっち」

 来た道を指差す。


「え? 向こうに逃げればいいんだな?」

「ちがう。ヴィオラ、おう」


「――っは!? どういうことだよ!?」

「ヴィオラにげたから、おう」

 赤い瞳がじーっと俺の顔を見つめる。

 至近距離だけあってさすがに怖いぞ。


「ヴィオラが逃げた!? 楼園は!?」

「いった」

 楼園も追っていったってことか。


 けど俺たちが行ってどうする?

 行ったところで危険に飛び込むようなもんだし、あとは楼園に任せておけばいいんじゃないのか?


「ハル」

 ユメリは俺を見上げる。


「ヴィオラとちぐさ、なかなおりさせる」

 子供のくせに上等なことを言ってくれた。


「――わかったよ!」

 気持ちより先に体が動いていた。


 ヴィオラのところまで案内するだけだったのに、ユメリのなかじゃ、いつの間にか二人の仲裁が目的になってたようだ。

 そもそもあいつらはケンカしてたのかどうかも疑問だが、ユメリがリンゴジュース以外で意思を見せるのは珍しいし、まあここまで首を突っ込んだんなら最後まで付き合っても悪くはない。


「危険はないんだよな?」

「……」

 無反応。


 念のため確認しといてよかったよちくしょう!

 すぐに逃げられる準備だけはしておこう。

 あいつらの足に追いつけるとは思えないけど、とにかくユメリの指すほうに行ってみよう。

 軽く走っていた足を本格的に走ろうと力を入れたその時――


「うわわわわわわわわわわわわわわわ!!!」

 視野に映る全てが残像となって流れていく。

 ジェットコースターに乗っているかのような風圧が全身に押し寄せ――


「とまったらだめ」

 風を切る音で周りの音が聞こえなくなった中でもユメリの声だけは耳にとどき、驚いて止まりそうなった俺を制した。


 体の制御は出来る。

 駆ける足の感触を実感し、俺の意思で動いているんだと自覚。

 だが――


「じゃんぷ」

 道が曲がり、それに沿おうとしたところにユメリの指示がとぶ。


 目の前にはビルの壁。

 考えるよりも先に体が動いた。

 ユメリを抱え、片足のバネだけで一気にビルの屋上を眼下に移動させる。

 この感覚。この高揚感には覚えがあった。

 ビルを数棟越え、大きな通りに着地。

 人が上から降ってきたにもかかわらず、街の人間の目は俺たちを見ていない。

 カラクリなんてとっくにわかってるから構わず加速。


「ユメリ答えろ。これは俺の能力か?」

 この人間離れした運動の高揚感は、クラリスが俺に能力を使わせたときに感じたものだ。


「ちがう」

 ユメリは即答で否定。


「じゃあこれはユメリの能力か?」

「うん」


「俺にこんなことしといて、後で誰かが死ぬとか言うんじゃないだろうな?」

「ない」

 とりあず一安心。

 と思ったところでユメリは言葉を続けてきた。


「ハルはイタくなる」

 すっごく嫌な言葉だ。


「……筋肉痛とか?」

「うん」

 俺からすればかなり理不尽なことだが、クラリスがやったことに比べれば可愛いもんだ。

 文句は絶対言うとして、今はとにかく楼園たちを追おう。


 ユメリには二人の場所がわかるのか、絶えず指を指しながら俺を先導した。

 こいつの能力を借りればもし何かあったとしても簡単に対処できるかもしれない。

 そう考えると、また色んな疑問が頭に浮かんでくるものの、さすがにそれを追求してる暇はないので今は俺も楼園たちを追うことに集中した。



■ ■ ■ ■ ■



(アカン、千種のやつ、本気やわ)

 まるでいつかの再現。

 あの時はヴィオラがクラリスを追っていたが、今度は終われる側である。

 ビルの屋上に着地し、瞬時に跳躍。

 繰り返すこと幾数回、それでも千種を振り切ることはできていない。


(いや、むしろ――)

 だんだんと距離を詰められてる。


 今の千種は人間であって人ではない。

 ヴィオラが憑くことによる能力の行使。

 クラリスのように能力を譲渡することはできないが、その代わりに憑いた人間にはある一定の能力が使用できるようになる。


 それはヴィオラが行える行動の数割を再現すること。

 まさに今の千種がいい例である。

 超跳躍と俊足でヴィオラを追い逃がさない。


 もちろん行使には制約がある。

 代償として能力の使用後、使用者の体が悲鳴を上げる。

 全身の筋肉の痙攣。

 激しい動悸と眩暈。

 引き攣りによる激痛。

 どれもが一斉に発症し、並みの人間なら確実に死亡する。

 しかしヴィオラが憑いてるおかげで死ぬことはない。

 気が狂いそうな地獄に耐えるだけでいいのだ。


 そして千種の霊力は常人のソレとは常軌を逸している。

 故にヴィオラの能力の数割程度しか力が発揮できなくとも、自身の霊力と掛け合わせてオリジナルに迫る動力を生み出していた。


(それでも千種がウチに追いつくことは敵わんはずなのに……これは)

 根本的にヴィオラが弱ってきている証拠だった。


(まさか衝動抑えとるだけで、こないキッツイとは思わんかったわ)

 姿は見えないが、ユメリとハルの気配も近づいている。

 どうやら本格的に追い詰めたいらしい。


「逃げるなー!」

 千種が怒鳴り声を上げている。


(それで止まるんやったら最初から逃げとらんで)

 思っても千種への応答はしない。

 そんなことをしてる余裕はないのだ。

 かといってこのままではいずれ追いつかれてしまう。


(ちょお罠でも仕掛けとこか)

 川をまたぐ大橋に着地し仕掛けを施す。

 ヴィオラがパチンと指を鳴らすと、本人そっくりの人形(マネキン)が現れた。


(ちと表情がほしいなぁ)

 再度指を鳴らすと――


「ひゃー! 捕まってもたー!」

 なんとまるで生きてるように表情を変え声まで出した。


「よし。千種はアホやし、これでええやろ」

「ひゃー! 捕まってもたー!」

 人形を残し、ヴィオラは再度跳躍した。



「もう逃げられないよ!」

 大橋の歩道で立ち止まったヴィオラを前に、千種は身構える。


「ひゃー! 捕まってもたー!」

「ふん。わかってんじゃん。それなら大人しく捕まれ!!」

 千種が肉薄し、その腕を掴んだ瞬間――


「んなっ!!」


 ポンッ!

 ヴィオラ人形が破裂し、中からとび出てきた半透明な液体が千種の全身に降りかかった。


「なにこれ! ベタベタする!」

 超強力接着液とでもいうべきものは、一瞬で千種の動きを封じ、更にはペタンと尻餅をついてしまった体をアスファルトに貼り付けてしまった。


「ちょとヴィオラ! これ取りなさいよ!」

 叫んでもヴィオラからの応答はなかった。



■ ■ ■ ■ ■



 ユメリがナビしてくれなかったら完全に見失ってたな。

 これだけ跳んだり走ったりすることが出来ても、離れた誰かの気配を探ることは俺には出来ないようだ。


「次はどっちだ?」

「あっち」

 土手を越えた住宅街を指差す。


「よし!」

 しかしユメリは指差した腕を九十度動かして――


「こっち」

 と近くの大橋の方向も指示した。


「……いやどっちだよ?」

「ヴィオラ、あっち」

 最初に指した方角。


「ちぐさ、こっち」

「んん? つまり分かれたのか?」


「うん」

 楼園の奴、撒かれたのだろうか?

 あいつも俺みたいに目だけで追ってたのかもしれないしな。


 ユメリがいればヴィオラの位置はわかるし、楼園と合流するか。

 力を込めて跳躍。

 二百メートル程度の距離なら一回の跳躍で乗り移れる。

 慣れてきたというか、俺も人間離れしてきたな。



「……なにしてんの?」

 目に映ったのは、橋の歩道で楼園が仰向けに倒れてモゾモゾ動いてる様子だった。


「見てわかれ! 早くなんとかしろ!」

 瞳だけはすっごくギラギラしてる。


 見たところ、辺り一面に水みたいなものが飛び散ってる。

 水と決定的に違うのは、アスファルトに吸収されず、楕円の形で地面に残っているところ。

 きっとこれに触れると楼園のようになっちまうんだろう。


「早くなんとかしてよ! 時間がないの!」

「早くなんとかしろつってもどうすりゃいいんだよ!?」


「そんなの水衛が考えてよ!」

 当事者なのにすっげー他人任せな奴だな。


「……どっちにしろどうにかしなきゃならないけど、ユメリがヴィオラのいる場所わかるみたいだから時間なら大丈夫だと思うぞ」

「違う! わたしの能力は三十分しか使ってられないから時間がないってのよ!」


「えっ!? 時間切れになったらどうなる!?」

「動けなくなるに決まってんでしょ!」

 決まってるかどうかは別としてそりゃまずい。

 俺たちだけでヴィオラに近づくのは危険だし、この様子だと出直そうなんて言ったら楼園はきっとブチキレる。


「みず」

 ユメリが何か言った。


「なんだって?」

「みず」


「みず? ……水かければいいんだな!」

「うん」


「えっ!? なによ!?」

 都合のいいことに真下には川がある。


「ちょっとまってろ!」

 俺は二人を置いてすぐに移動した。



■ ■ ■ ■ ■



 感情を表さずユメリは千種を見ていた。


「……目、赤いんだ」

「ん」

 千種も視線を合わせ外さない。


「十年前おまえを見たときは、違う色だった」

「……」


 ユメリの瞳は血色(あか)い。

 十年前のあの日のこいつはどうだったろう?


(あの時のこいつの瞳は、金色だった)

 そうだ。

 暗い部屋の中でもギラギラ光ってた。

 いや、だからなんだっていうんだ。


「どうせ目の色を変えるのなんて簡単にできるんでしょ?」

「できる」

 即答。

 それがかえって気に障った。


「疑われてんのわかってんでしょ? 少しは隠そうとしたら?」

「どうして?」


 千種はハルの言葉を思い出す。


『ユメリは嘘を吐かないんだ!』

 真剣な顔で訴えてきた。

 嘘を吐かないなんて馬鹿馬鹿しい。

 コイツは操られてて良い様に言わさせられてるだけなんだと思った。

 けど、ハルは操られてなんかいなかった。


「嘘を吐かないなら都合がいいわ。わたしが質問するから答えてよ。イエスかノーで答えられることだから」

「うん」

 その素直さは嘘か真実か、それを見極める為に千種は射るような視線でユメリを見据える。


「十年前、あんたがわたしのお父さんとお母さんを操って――殺した」

 風が吹く。

 ユメリが口を開くまでの一瞬が長い。


「ちがう」

「嘘つき!!!!!」

 千種の叫びが夜空に響いた。


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!! あんたがやったんでしょう!? あんたしかいないのよ!? あんたみたいな姿の子供なんて他にいないのよ!? あんたじゃなきゃ誰がお父さんとお母さんを殺したってのよ!?」

 一気に捲くし立ててもユメリは動じない。


「ずっと探してようやくあんたを見つけたのに違うっての!?」

 こんな癇癪を起こすつもりはなかったのに、ユメリの否定に今まで溜め込んできた気持ちが弾けてしまった。


「ちぐさのおとうさんとおかあさん、しらない」

 ユメリの言葉に感情はない。


「ちぐさは、しってた」

「……なに?」

 わたしを知ってた?

 わたしのなにを知ってたっての?


「……どういう、意味よ?」

「ユメリ、ちぐさしってた」


「だから何を知ってんのよ!?」

「……」

 ユメリは応えない。


(……違う。何を知ってたとかじゃないんだ)

 赤い瞳が揺らぐことはない。

 ただジッと千種を見続けている。

 両親は知らないが自分のことは知ってると言った。

 当然それは今現在のことを言ってるわけじゃないんだろう。

 わざわざそんなことを言う必要はないわけだし。


「わたしを――ずっと前から知ってたってこと?」

「うん」


「ずっと前からっていつからよ?」

「……」


「まさか、十年前から知ってたとか言わないわよね?」

「しってた」


(……なに言ってんのこいつ)

 自分で自分を疑わせることを言うなんて、疑うべきことなに俄かに信じられない。


「ちょっとまってよ。あんた十年前は生まれてないでしょ? 四歳なんでしょ?」

 直接聞いたわけじゃないが水衛はそう言ってた。


「うん」

 本人も肯定する。


「バカにしてんの?」

 十年前は生まれてないが、その頃から知ってるって?

 矛盾してるとかそんな話ではない。

 そんなことはありえない。


「十年前からわたしを知ってんなら、やっぱりあんたがお父さんとお母さんを殺したことになるわよね?」

 最初からユメリがそうであると決めてたんだから、いまさら嘘吐いてましたなんて言われても驚かない。


「ちがう」

 しかしユメリは頷かない。


「意味わかんないってのよ! なに? 謎かけでもしてるつもり!?」

「…………………」

 意図がさっぱりわからない。


 怒らせたいのなら効果てきめんだ。

 実にイライラする。

 百歩譲って本当のことを言ってるとしても、さっぱり話が繋がらない。


 四歳の子供が十年前から自分を知ってるなんて馬鹿らしくて笑えもしない。

 十年前の鶏が一度卵の中に戻って、六年後に雛になって生まれたとでも言いたいのか?


 話しかけないと何も喋らないのか、黙したユメリを千種は睨み続けた。

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