華と光と共演舞台 開幕
見てくれは先ほどよりも少し大きくなったかと思う程度のささやかな変化しかない。
……しかし命あるものとは決して相容れない存在なのだと本能的に察してしまう強烈な違和感。
「………やれやれ、どうやら暴走したみたいだな。」
何気なく呟いた風に装ったこの言葉は、震えてはいなかっただろうか。
「…光の。」
大鎌を蔦野郎に向けて構えながら、アレイシアに声をかける。
応えはなかったが聞いてはいる筈だ。
「力を貸せ。」
「…………え…。」
アレイシアは敵からの突然の協力要請に戸惑いの声をもらした。
≪正義≫と≪悪≫が争いながら倒すという選択肢は潰れた。
そんな悠長な手段を取れる相手ではなくなってしまった。
「こちらとしては壊れた下僕は廃棄しなきゃならない。お前らもコイツを投棄されても困るだろう?」
ちょッとした手違いだ、そう、その程度の事なのだと思わせなければならない。
動揺を悟られるな。
恐怖に気づかれるな。
≪漆黒の華≫の仮面を剥がすな。
「…あ……。」
怖じ気づいてるだろう彼女の気持ちも分かる。
自分のミスに巻き込む形になったのも申し訳なく感じる。
しかし協力してもらわないと困るのだ。
「それとも≪正義の味方≫様は足が竦んで動けないか?」
「――そ、そんなわけ無いでしょ!!」
煽るようにそう嗤えば条件反射なのか、いつもの如く食いかかって来る。
本当に単純だが、こんな時にはありがたい。
最初に現れた時は青紫色だったが、今目の前にある≪異形≫は黒みを含めた色合いに変容していた。
まるで俺の闇の蔦を喰らったかのようだ。
しかし、
「……益々悪趣味になったわね。」
俺の頭の中を覗いてたのかと思える位同じ内容をアレイシアがまた吐き捨てるように呟いた。
「まぁ、否定はしないがな。」
「悪の結社は何でいつもこんな悪趣味な化け物ばっか造ってんのよ!!」
俺に文句を言われても、実際こんな姿のヤツらばっかしかいないんだろうから仕方がない。
「今度はもっとファンシーなのを造って貰うようにお願いしといてやるさ。」
軽口を叩きながら俺とアレイシアは蔦野郎を左右で挟み込むように立つ。
コイツを逃さないため…ではない。
アレイシアが変に俺を警戒する必要がないよう視界に入るためにだ。
いくら一時的に共闘するとは言え、あちらからしたら、何仕出かすか分からない敵をまんま信用するわけがない。
ただでさえ戦闘に不馴れなヤツがいらない事で意識を散漫されてはこちらも困るのだ。
行動指針は実に単純だ。
相手に長い間接触しない。
隙を見つけたら本体を攻める。
それだけだ。
基本の攻撃はアレイシア、俺はサポートの型で戦闘を進めていく。
状況はどう転ぶか分からない以上、臨機応変に進めるしかない。
「光の、さっきみたいな考えなしにバカスカ≪異能≫を使うなよ。」
「ウルサイ!分かってる!!」