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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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光の神子の新たなる決意と謎の男達

前半はアレイシア視点。

後半は別のキャラクターの話です。


 大聖堂へと向かう馬車の途中にうちの食堂があったので、私は一旦そこで下ろして貰う。

 「どんな些細な事でも何か思い出したり気づいたりした事があれば俺に報告するようにな。」

 そう言い残し、サージェスさんとペロの偽ラナを乗せた馬車は大聖堂へと走り去っていった。


 「悩みを解消する為にうちに帰ってきたんだけどな…。」

 益々悩みが大きく、複雑になってしまった。

 ≪異能≫とか≪奇蹟≫とかじゃなくて…教会と≪異能持ち≫の問題…。

 カナンさんの話や偽ラナの言い分だと、フォルソーン教が≪異能≫…普通では使えない能力を持っている身分の低い人たちを差別したり、場合によっては…殺す理由にしている…。

 もしかしたら…、ヘレンが≪異能持ち≫を憎む原因が逆転してしまうかもしれない。≪異能持ち≫だから非道な事をしたんじゃなくて、差別をされてきたから道を踏み外した……。


 (だとしたら…、フォルソーン教の方がとんでもなく悪い存在って事になっちゃう…)


 いやいや、と左右にブンブン首を振り、そう直ぐには決めつけちゃいけないと思い直した。父さんがいつも言っている。一つを見て決めつけるな!ここより安い仕入先があるかもしれない!!って………。

 いや、後半はここでは当てはめられないけど。

 サージェスさんやヘレンは絶対に悪人じゃないし、グラナトさんも変な趣味だけど、悪い人ではない筈。

 それに私が≪奇蹟≫の人になると決めたのは、≪魔のモノ≫と、それを操る悪い≪異能持ち≫の組織と戦う為で、無差別に≪異能持ち≫を倒せなんて言われた覚えもない。


 そう!私の正義は変わらない。大切な人を、この公国の人々を護る為!そう新たに決意しようとしたけど……、脳裏に肩を押えていたカナンさんの姿がよぎる。

 (……、護らなきゃいけない一般人(相手)なのに、私が逆に護られちゃった…)

 偽ラナ相手の時もだし、バッタもんの時もそうだった…。

 ≪奇蹟≫だけでは駄目なんだと痛感した。

 偽ラナの剣の攻撃を躱すのが精一杯…、いや多分それも出来てなかったからあの時カナンさんが庇ってくれたんだろう。

 バッタもんの攻撃も…もしあの時私がちゃんと避けられたり、防げたりしてれば…カナンさんも身を挺して私を庇おうなどとしなかった筈…。

 ドライな雰囲気を醸し出していたけど、名前も知らないおじさんの為に≪魔のモノ≫のいる場所まで付き合ってくれた人のいい人…そうはいないだろうけど…。また今回みたいに一般人を危険に晒さないように、≪奇蹟≫以外にも鍛えなきゃいけない。

 そう考えながら、そもそも今回の一件のキッカケのおじさん達の事を思い出した。


 「アン!」

 私が勢いよく食堂の扉を開いて中へと入ると、夕方の時間帯だからか店はなかなか込み合っていた。正直、助けを求められた時間から2.3時間程度しか経っていないなんて嘘みたいだ。大体のテーブルの注文は取り終わっているのだろう。店内は賑わいでいるが、アン一人で回せているみたいだ。

 

 「あら~、おかえりなさぁい。」

 いつもの通りののんびりしたアンの笑顔につられホッと和みそうになるけど、すぐに重要な確認をしなきゃと思い直し、首をブンブンと振る。

 「息子さん、ちゃんと来れた!?」

 今一番に聞きたいことを慌てて問いかけると、アンは手を頬に当てながら「?」と首を傾げる。

 「ほらっ!国境の荒野で≪魔のモノ≫に襲われて、息子さんが囮になったからって助けを求めてここにおじさん来たでしょ!?息子さん逃げれた筈で、多分ここにお父さんいるって教えられたと思うんだけど、ここでおじさんと会えた!?」

 そう説明し直せば、「ああ!」と納得してぽんと手を打つ。

 「そういえば、いつの間にやらあのおじさん…いなくなってたんですよねぇ?最初は外で待ってんのかなぁって思ってたんですけどぉ~…。」

 気づいた時に外をちらりと様子見したけど、外にもいなかったとアンは言う。おじさんの乗ってきたと思われる馬の姿もないから息子さんと合流してそのまま去ったのだろうか…。


 「息子さんと無事会えたならいいけど…、一言くらい言い残してくれてもよかったんじゃないかなぁ…。」

 つい愚痴みたいに呟いてしまった。

 お礼が欲しいとかじゃなくて…、いや…正直ちょっとくらいありがとうの言葉を言ってくれてもいいんじゃない?とは思ったけど。それよりも息子さんと会えたかを確認できたら私も安心出来るのに…。

 「馬もいないんなら、行方しれずとかじゃなくて~、ちゃんと会えて、自分で出てったんじゃないですぅ~?」

 私の不安が分かったのか、アンかそう言ってくれる。

 「……そうだよね。」

 私はそう無理やり納得して終わらせることにした。







 郊外の静かな宿屋にて―――


 「いや~、なかなか骨が折れましたね?パパ。」

 「父親に対しての呼び方なら他にももっとあるだろうが!親父とか父さんとか父上とか…。」

 さして特徴のない雰囲気の中肉中背の年若い男と同じく何処にでもいる風貌の中年の男が、簡素な部屋で会話をしている。

 中年の男は窓の外を何気なく眺めている風を装っているものの、その視線は辺りを油断なく見ている。

 確認が終了したのか、中を見えないように窓の木製の扉を閉め、近くにある簡易な椅子に腰かける。

 「……それで?」

 中年男が声を潜ませて若い男に短く問いを投げ掛ける。

 「…なんか妙な感じですねぇ。予定外…過ぎて。アヴィリナイトの方とはタイミングが悪くて接触出来ませんでしたし、パパの呼んだのと別の教会の奴と…正体不明の男が一人現れたんで、もうむちゃくちゃ。」

 考え込んだ後、若い男はヘラッと笑いながら答えると、中年の男はパパの一言で一瞬嫌そうな顔をした後、その後に続いた言葉に引っ掛かる。

 「正体不明の男…?、アヴィリナイトとは別口か?≪異能持ち≫か?」

 「本人は≪奇蹟の人≫付添だかなんだか言ってましたし、俺が離れた後もアヴィリナイトの方とやり合い始めましたし…アヴィリナイト(奴ら)とは無関係じゃないですかね。≪異能持ち≫なのは確実です。……が、それよりも気になったのは…、アヴィリナイトの持ってた魔道具を使いこなせてた点ですね。」

 その言葉に中年の男はその言葉を聞き、深く考え込んだ。

 「……、奴らの使っていた魔道具を?……いや…しかし……。」

 「何か思い当たることが?」

 ブツブツと小さく呟き始める中年の男を若い男の方は興味深そうに見ながら問いかける。


 「…お前は知る必要がない。ともかく、その男の事を徹底的に調べあげろ。結果次第では始末せねばならん。よいな?…ジャン。」

 「了解。」

 鋭い目でそう命じられ、若い男…ジャンは頷いた。


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