光と炎と幾つもの謎
アレイシアの視点です。
ガタガタと身体が揺れている…。
心地いいとは言いがたい揺れで意識が浮上してきて、ガタン!と一際大きい揺れと共にガツンとした痛みが頭に走る。
「ぃッ…たぁい~…。」
「…やっと起きたか。」
頭の痛む箇所を擦りながら、ため息混じりの呆れた声がした方へ顔を向ければ、そこにはサージェスさんがいた。
ぼんやりとしたまま周りを見渡すと、狭い木で出来た部屋の中に私とサージェスさんが向かい合って座っている。窓から見える景色がガタガタと揺れ動きながら過ぎていくのを見て、私はやっと馬車の中にいる事に気づいた。
「…あれ?何で………、!!」
さっきまで何があったっけと考えて、≪魔のモノ≫と戦っていた事を思い出す。
「サージェスさん大丈夫だったの!?≪魔のモノ≫は!?あれから一体どうなったの!?」
頭に浮かんだ疑問がそのまま口から出てくる。混乱してる私へサージェスさんが落ち着けと手の平を向けた。
最後に残っている私の記憶は……、確かサージェスさんが≪魔のモノ≫の攻撃で膝を着いたとこで、私が光の結界を張って…≪魔のモノ≫の攻撃がこっちにも来て…それで……………!!!!
「――カナンさん!カナンさんは!?大丈夫だったの!!?」
確か…あの攻撃の時、カナンさんが庇ってくれた…。ホントは私が護らなきゃいけなかったのに…!
「落ち着け!……まぁ、意識はなかったが無事だ。………グラナトが彼の勤め先を知っていると云うので任せた。」
「…………え?何でグラナトさん?」
私の怪訝な顔を見て、サージェスはゲンナリとした顔をする。
「いつもの病気だ。」
詳細を説明する気はないのだろう。苦虫を噛み潰したような顔のままサージェスは話を進めていく。
「あの脳内花畑とて怪我人に無体をする気はない筈だ……おそらくは。何事もなく彼を送り届けているだろう。………そうでないと困る。」
ところどころ小声で付け加えていく言葉が私の不安を煽ってくる……。気を失ってる人相手に無駄な恋ばな聞こうと無理やり起こしたりしてないよね…?
「それで、そのカナンという青年は劇場で用心棒をしている…。お前の家の食堂でそう話してるのを聞いたらしいな。」
そう続けたサージェスさんの言葉に、
「……確か…そんな事いってた気がするけど………。」
記憶を辿って答えた。悩みを聞いて貰ってた時に出た話題だけど…、それも聞かれたのかなぁ…。
「……そうか。」
聞かれてたらヤダなぁ、なんて考えながら答えたら納得したように呟いたサージェスさん。だけど、ふと、
(……あれ?用心棒みたいな仕事してるって言ってたけど…、『劇場の』なんて言ってたかな……?)
そんな疑問が生まれた。視線をサージェスさんから外し、食堂でのカナンさんとの会話をもっと詳しく思い出そうとしたが、視界の中にあのペロの偽ラナが入ってギョッとする。
「にょあっ!?――ったァッ!!」
大きく後ろに身を引こうとして、後頭部を後ろの壁に強く打ってしまい、またさっきと同じような痛みが走った。
「だから落ち着け。…はぁ。…とりあえず、このアヴィリナイトの一員と思われる男は大聖堂へと連れていく為にちゃんと拘束してあるから安心しろ。」
深々とため息をついてサージェスさんは説明してくれた。呆れ返っているその視線が私に向けられて、いたたまれずに顔を伏せる。
狭い馬車の床に後ろ手で縛られ転がされている偽ラナは気絶しているのかピクリともしない……気絶してるだけだよね?
「何故かは分からないが、≪魔のモノ≫との戦闘中に意識を失った。奴の攻撃を受けたようにも見えなかったがな…。何度か頬を張っても何の反応を返さなかったが、まぁとりあえず生きている。」
(さらりと酷いことしてる…。)
ドン引きしてしまった私に構うことなくサージェスさんは更に続ける。
「それと、≪魔のモノ≫の方だが、豪咆の獅子によって討たれた。」
「え!?」
豪咆の獅子と言えば、筋肉マッチョな武闘派幹部で、よくサージェスさんやグラナトさんが相手をしているらしい人物だったけど…。
「失敗作を始末しに…といったところらしいな。あんな異常な状態の存在を扱いかねて…かもしれないが。」
「また覚醒ツタモンが…。ううん、覚醒バッタもんになったんだよね、今回のは。」
(…ラナンキュラスと一緒に戦った時と同じ状態になったのかな…)
そう考え込んでいると視線を感じた。
「……………。」
サージェスさんが何か言いた気な渋い顔でこっちを見てるような気がしたけど……言いたいことがあるなら言ってくるだろうし、気のせいだろう。またため息をついて首を左右に振っているけど…なんか悩んでるのかな?
その後、今後どうするのかその方針を上の偉い人たちに相談しなきゃならないと言うことで、サージェスさんが来る前に一体何が起きてたのか詳細を尋ねられ、私もできる限り覚えてる事を話した。
「……アレイシア。」
そんな会話が一段落してから少し経って、サージェスさんは神妙な顔をして私の目を見た。
「豪咆の獅子の奴だが、あのカナンという青年に対して攻撃をしようとしていたと思われる。」
「えっ!?」
私が意識を失っている間にとんでもない事が起きてたのかと、血の気が引く。
「ど…どうして…?だ…大丈夫だったん…だよね?」
気を失ってるけど無事だって話だけど、そんな事が起きてたなんて聞かされれば、やはり不安になる。
「グラナトが豪咆の獅子の攻撃を防いだらしいからな。しかし…幾ら悪人であるとはいえ、真正面から戦うことを好む男が、意識を失っている一般人を攻撃しようとしていた…。グラナトの奴も疑問に思ってたみたいだが、確かに考えにくい話だ…。……何か理由があるのかもしれない…。」
考え込むようにサージェスさんは顎に手をやりながら宙を見ている。
「…り、理由って…?」
先を促すように私は訊いてみた。
「……さて、な。…彼に限らず色々と疑問点が多いからな……。」
「……少し調べる必要がありそうだ。」




