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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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78/81

華と獅子と反撃の一手

なんとか更新しました。

毎度の事ながら誤字脱字、矛盾点など見つかれば訂正するかもしれません。


 口だけが露になっている獅子を模した被り物を着け、ゴテゴテと悪趣味に飾られた金属鎧(プレートアーマー)、衣装は黒が基調ではあるが所々に金色で縁取られて無駄に目立った様相。

 一目で悪役だと分かる姿のデュランタ…いや、悪の結社の幹部、豪放の獅子デルフィニウムが、岩場の高い位置でこちらを見下ろしている。

 


 ………………、改めて見ると凄く怪しいな。たまに豪放の獅子(アイツ)と組むこともあるが、端から見たらアレと同類扱いされてるのか…。

 非常事態ではあるが、ついそんな余計な感想を抱いていると、高い岩場からデュランタが大きく跳び、音を立てる事もなくスタッと俺のすぐ近くに降り立つ。

 俺とデカ虫以外に見てる奴もいないのに、クルクルと魅せる様に回転を加えて降りる必要は果たしてあったか…?


 「お前な、ちょっと位驚くリアクションとかしろよ。一般人がそんな動じることなく悪の幹部()をのんきに眺めたりなんかしないだろォ?」

 デカ虫の方を向いたまま視線すら俺に向けずデュランタは普段通りの口調で小さく囁く。コイツの事だから、器用に口を動かさずに話しているんだろう。教会の奴らが見てもいないのに相変わらず細かい男だ。

 「遅ェんだよ。こんな状態でそんなことする余裕があるか。」

 デュランタの苦言を気にすることなくいつも通りに返せば、「今のお前は一般人なの!何、悪の幹部(悪役)と普通に話してんの!」とかこれまた器用に小声で罵りながら説教が始まる。…お前こそ今の状況、きちんと把握してるか?

 「まぁ、登場が遅れたのはすまんかった。タイミングを図ってたんでな。教会とアヴィリナイトの両方がいる状況じゃ()()()()()()()になる可能性もあったし。」

 「黙れ、おっさん。」

 こんな状況でも下らない軽口は出るようだ。

 親父のダジャレなど聞いてる場合じゃない。デュランタが参戦したのはありがたいが、有利になったかはわからない。

 気がつけばデュランタが断ちきった筈の蔦は既に元の長さを取り戻している。

 ………あの蔦野郎と同じように、だ。


 「……これが、お前の言ってた(イレギュラー)か。」

 会話をしている最中でもデカ虫の蔦攻撃は続いていた。デカ虫の注意がデュランタに移ったのか、蔦の攻撃は俺から奴へと集中する。

 登場したてだからか、デュランタの動きは俺と比べるまでもなく俊敏に動き回っている。地面に突き刺さっている斧を回収出来る程に余裕があるようだ。



 デュランタの≪異能≫は俺や≪奇跡の人≫たちの様な分かりやすい属性ではなく、自身の身体を強化する変わり種だ。詳細は団員内(仲間内)でもお互い明かすことがないのでよくは分からないが、デュランタ自身強化している間は普通に物理的な攻撃をしても≪異能≫や≪異形≫に通じる。自身の武器にもその効果が及ぶようだから、≪異能≫を纏わす力が全身に発揮されているのかもしれない。


 さて、そのデュランタの攻撃だが…。

 「フッ!ハァッ!!」

 そんな鋭い声に匹敵する速さと重さでデカ虫の蔦を攻撃する。デュランタの猛攻にデカ虫も流石に棘を生み出す隙もないようだ。

 しかし、デカ虫のリアクションは薄い。蔦を幾ら断とうとも直ぐに再生する。本体へのダメージはないように見える。


 デュランタも斧で何度か蔦を断ったところで効果がないと感じたのか、大きく俺のいる方へ跳び退くと、

 「…………、どうしよっか。退いちゃう?……って言っても、三人も一辺に運べないしな。」

 …なんとも頼りない言葉を口にする。まぁ、口は動いてないが。

 デカ虫はデュランタのいる位置まで蔦が届かないのか、追撃はせずその場に留まっている。

 「……一応、手は一つ…ある。…確実とは言えないが、…他の手ってのも思い付かねぇ。」

 デカ虫に最も効果的な攻撃の出来るアレイシア、ある程度対抗出来そうな炎の拳神は戦闘不能。同じく対抗手段を持っていたアヴィリナイトのペロはよく分からない内に同じく戦闘不能。

 新たに参戦したデュランタはこの場をもたすことが出来る程度。

 撤退しようにもデュランタの言った通り、全員は難しい……かけるより他に手段はない。


 「今デカ虫がいる場所から引き離せるか?3…いや5ベーツァ。」

 視線をデュランタへと向けて問いかけた。

 「まぁ…、それ位ならいけんじゃない?」

 …かなり無理な頼みなのだがデュランタは暫く悩んだ後、軽く了承した。軽い言動をとる男ではあるが、無意味な虚勢は張らない男でもある。今は信用してみるしかない。


 「フン!下僕の分際で飼い主を忘れるとは…。ゴミが。」

 まだ芝居を続けるのか、常より低めに作った声でデカ虫を罵るデュランタは、斧を背中にあるベルトに固定された鞘へ戻す。……って、一体何をする気なのか…。


 『強固たる汝。その(かいな)の内へ。』

 登場時とは違う呪を唱え、デュランタは腕を前で交差(クロス)すると、軽く腰を落とした。≪異能≫がデュランタの身体全体を薄く包んでるように感じる。

 「おぉおぉぉ――ッ!」

 大きな雄叫びと残像とを残しデュランタが消えた。

 その次の瞬間、デカ虫のいる方から鈍い音がし、反射的に俺の視線がそちらを向く。

 (…!?)


 ――デカ虫が宙を舞っていた。

 そして、今までデカ虫が構えていたであろう位置にデュランタが交差した腕を前方に向けた状態で砂埃の中立っている。

 …おそらくはデュランタの体当たりで吹っ飛ばされたのだろう……多分。目の当たりにはしてないので推測でしかないが。

 しかし、凄まじい勢いでぶつかった筈だろうが、デカ虫は特にダメージを受けたようには見えない。アレイシアが蔦野郎を殴った時のような欠損は全くなく、本当にただ吹っ飛ばされただけなのだろう。

 

 ドシンッ


 思わず中空に在るデカ虫を眺めているとデュランタが大きく片足を地面に叩きつけるように踏み鳴らし、一瞬こちらを向いた。

 ハッと我に返り俺は目的地に向かって走る。その俺の動きにデカ虫が俺の狙いに気づいたのか空中にいながらも蔦をこちらへ伸ばして来たが、デュランタが再度斧を手にしてそれを叩き切り遮った。


 その間になんとか俺はペロの手からこぼれ落ちていた()()を掴んだ。

 ペロが使っていた魔道具…、呪によって動く筈のコイツならデカ虫をなんとか出来るかもしれない。

 ペロが使っていた呪はどんな言葉だったかは覚えていないが……、



 (…確かあの時、あの()()はなんて言ってた…?)


 デュランタがデカ虫を食い止めているのを見ながら懸命に過去の記憶を漁る。


 白い服の男が唱えていた。

 顔は覚えていない。なんとなく普通の……恐ろしいわけでもない、どこにでもいそうな雰囲気の男だったのは覚えている。

 そんな普通そうな男が何の感情も見せず、淡々とこちらを観察しながら唱えていたのが…とても恐ろしかったのは覚えている――



 そう、確か始まりは……、

 『我が言葉に応えよ――』


 あの時の男の唱えたまま、その名を呼んだ。



 『――エレス』

 



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