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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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華と獅子と王道なる山場


 俺は目標へと駆け出しながら、先ほど肩を負傷したときに手放した短剣を拾う。特に何の変哲もないただの短剣ではあるが、やはり素手で向かうには心許ない。

 『グゥゥ』

 向かってくる俺に対して、デカ虫はやる気がないのか、低い唸り声と共に数本の棘を飛ばしてくる。それなりに早いが、避けられない程ではない。軽く左に跳んで避け、


 「ッ!?」

 直線上に飛んでくる棘の幾つかは地面に突き刺さり溶ける様に消えていったが、残りの棘が避けた俺を追跡するようにこちらへと曲がりながら進んでくる。

 「ッチ!!」

 舌打ちしながら、俺は右手に握る短剣を強く握り直し、

 『揺蕩う霞、薄く集え』

 呪を唱えペロが先ほど使っていたように短剣に闇を纏わす。

 普段の闇の鎌よりも≪異能≫の効力は弱いが、ただの短剣よりはまだ対抗出来るだろう。流石にいつもの様に武器を造りだしたら消耗か激しすぎる。


 追跡してきた棘を幾つか短剣で受け流しながら、なんとか避けようとしていると、畳み掛けるように更に棘が追加される。

 おそらく俺には効きにくいだろうが、全く効かないわけではない。いくつか当たっても力が抜ける程度かも知れないが、今飛んでいる十数本が当たれば暫くは動けなくなるだろう。そうなればここにいる全員が御陀仏だ。仕方なく俺は棘をどうにかするのを優先し、目的の方へ進むのを一旦とりやめた。


 俺の目的を読んでいるのか、足止めするかのように追跡する棘で攻撃を続けてくる。疲労感が蓄積している身体でそう長時間動き続けるのはキツいんだが……。体力の消耗を狙ってんのか?と苛立ちを覚える。だが、デカ虫の周辺に未だ残る棘をチラリと確認し、それでも一度に来ないのは幸いと思うべきか…。


 ―― 一度に全てを操れないのかもしれないか? ――


 つい都合がいい推測をしてしまう。

 俺の≪異能≫はもう少し時間が立てば回復するだろうが、体力面ではそう長持ちしない。追尾して来るのは数本で、それ以外は地面だの岩だのに当たれば消えていくとは言え、デカ虫の回りに浮いてる全てが消えるまで逃げ回るのは無理だろう。どちらにしても俺自身これ以上持たない。

 (……行くしかない…か。)

 覚悟を決め、再度俺はその場から足を進め始めると、そんな俺の希望混じりの推測を見透かしたようにいきなり残りの棘が一気に俺に降り注ぐ。

 「チッ!」

 それらを避ける為、可能な限り避けたり短剣でそらしたり、障壁で弱めたりしてそのまま強引に進む。弱まった棘が幾つか掠め、僅かに力が抜け、一瞬体勢を崩しそうになるが、無理にでも力を込め立て直しそのまま進む。


 デカ虫の近く、あと3ベーツァないか位にまでの範囲に入った時、何か違和感を感じた。

 咄嗟に左へと跳ぶと、すぐ近くでブオンッと空気を斬る音が届く。跳びながらも無意識に追った感覚に思わず目を見開く。

 デカ虫の背中にはいつの間にやら羽根とは別に長い、何処か覚えのある蔦が二本生えていた。


 ―― あれは…蔦野郎の―!? ――


 頭の中にごちゃごちゃと色々な疑問やら推測やらが廻ろうとしたが、この状況をクリアする事が最優先だと割り切る。

 (あと少しの距離なんだよ!)

 俺を捕らえようと振るわれる蔦を掻い潜り、まだ追跡してくる幾つかの棘を避け、目的に到着しようとする距離まで来て―――、


 グンッと強く後ろへ引かれ俺は大きくバランスを崩した。

 慌ててそちらに視線を向けて確認すると、棘が俺の上着の裾に刺さり地面に固定されている。


 ―― さっきは地面に刺さったら消えていたくせに! ――


 他の棘は先ほど同様に消えたというのに、この一本だけ物理的に留めたようだ。

 見てくれに似合わず器用なことを、と憤りを覚えながらも急いで俺は自身の裾を短剣で破る様に切り自由を取り戻そうとするが、

 「…ッ!障壁か!?」

 棘の刺さった箇所に障壁が張られ、俺の短剣を弾いた。

 「クソッ!」

 すぐに上着を破り捨てるが、既に近くには蔦が迫っている。考えてる時間もない。最後にと取っていた残りの力でその蔦を防ごうと俺は左手を上げようとし――――





 『屈強なる汝、我に汝が(かいな)を与えよ――』


 聞き覚えのある低い声の紡ぐ呪が高い位置から届き、俺へと迫っていた蔦がドスンと鈍い音と共に断たれる。

 中途半端な高さに上げた左手を下ろしながら、蔦を断ちきった見覚えのある大振りの手斧(ハンドアックス)に視線を向けた。俺の心に腹立たしさと安堵が入り交じって広がる。

 「遅ェんだよ。」

 俺の小さく呟いたぼやきなど役に入り込んでいる奴には聞こえちゃいないんだろうが。


 「フンッ!こんな誰とも知れぬ男にすら手間取るとは…役立たずよ…。」

 舞台上に立っているかのように、はられた声が尊大な口調でデカ虫を罵る。まるで演劇の舞台の一幕のようだ。……観客は俺とデカ虫だけだがな。


 いかにもそれなりに大物なんだぞといわんばかりの偉そうなポーズをとる…口だけが露になっている獅子を模した被り物を着け、ゴテゴテと悪趣味に飾られた金属鎧(プレートアーマー)を身につけた、漆黒の華と同じように黒マント黒服といった、あからさまに悪役な姿の男…デュランタこと、豪放の獅子デルフィニウムがいた。


最近の寒さに負け、更新が遅くなっていますが…筆は折れてません!


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