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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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舞台を荒らす造花 其の一

偽ラナ側のお話です。


 ―― なんだ…!?コイツ… ――


 シディは自身で課したハンディを反射的に破ってしまった事に悔しさを覚えたが、それ以上に要らぬ邪魔をした≪奇蹟≫の少女(教会の狗)に憤りを覚え、制裁を加えようとした。

 命まで奪うつもりはなかったが、一対一(サシ)での戦いの最中に横やりを入れればどうなるか分からせてやろうと思い、長剣を振り上げた時の事だった。


 先程まで感情を滲ませない淡々としていた青年の雄叫びのような声に慌てて振り向けば、異様な気配を立ち上らせて彼はこちらを睨み付けていた。シディが咄嗟に使ってしまった炎が産み出した爆風を受けて直ぐに立ち上がることが出来なかった筈なのに、棒立ちとは云えしっかりと立っている。

 その棒立ちの彼の周囲をナニか異様な気配が巡る様に漂い、広がりを見せる。やはり≪異能持ち≫だったかと考えたが、しかし何かがおかしいとシディは漠然と感じた。


 ―― ≪異能≫と言うよりも……≪異形(化け物)≫どもに似てる……? ――


 ≪異形≫の孕む奇妙な存在感と何処かが似ている気がした。まさかな、と考えを否定しようとしたが目の前のカナンと呼ばれた青年を取り巻く奇妙な違和感がそれを拒む。

 立ち上がって棒立ちだったカナンが左手で握っていた短剣を、(から)の右手へと持ち直した。シディは強い警戒をしながら長剣を構え直しカナンの出方を待つと、カナンの空いた左手からまるで生えたかのように闇色の剣が生まれた。

 「なっ!?」

 信じられないその光景にシディは目を見開きその長剣を見つめるが、やはり実体を持った剣にしか見えない。ふとあの劇場で派手な騒ぎを起こしていた男の姿を思い出した。さっきまでシディのつけていた仮面の本当の持ち主が、今と同じように闇で仮面を作り出していたが。

 「……まさか、コイツが漆黒の華……か?」

 その男を真似て仮装めいた格好をして待ち伏せていたが、まさか相手が普通の格好で現れるとは思っていなかった。使っている得物すら違うのだからシディに気付ける要素が無い。


 ―― クソッ!はなから分かってりゃ直ぐに捕まえたのによ ――


 内心舌打ちしながらも、当初の予定を変更しカナンに声をかける。伸して無理やり連れ去るには流石に無理があると判断したからだ。

 「……お前、コイツをえらく気にしてたよな?」

 シディは構えていた剣を軽く振り、柄に装着されたモノを見せる。ただ見ただけでは奇妙なデザインの飾りと思われるコレは特別な魔道具(アイテム)だ。当然渡す気など微塵もないが、これを餌に仲間のところへ連れていければと交渉を試みる。

 「俺自身は借りてるだけでコイツに詳しくはないが…うちのボスなら知ってる筈だ。コイツはボスから借りたものだからな。」

 だから大人しくついてくればボスに会わせてやっても構わない、そう言葉を続けようとする前にカナンの敵意を剥き出しにした殺気が膨れ上がる。

 「………なる程な。ある意味フジの睨んだ通り…アヴィリナイト(テメェら)は『学舎』の関係者かッ!!」

 「だから…ッ、最後まで聞けよ!」

 その言葉が終わると同時にかかってきたカナンの剣を、罵りながらも慌てて長剣で受ける。フジって誰だよッと思いながらも交渉があっさりと決裂した事をシディは悟った。


 先程とは逆にカナンが振るう闇色の剣をシディは炎を纏わせた長剣で受け止めた。剣を交える度にシディが纏わせている炎がハラハラと消えていく様に感じる。シディの炎の≪異能≫がカナンの闇の能力で打ち消されているのだ。


 ―― 能力の差は歴然…か、面白くもねぇが使()()しかないか? ――


 意識を軽く剣の柄にある道具に向けながら考える。

 あの劇場で≪異能≫を使って仮面を作り出した時は器用な事が出来るものだと感心したが…。顔を隠すためだけの仮初めの仮面を生み出すのと、実体のある武器を生み出すのとでは訳が違う。もしもシディが同じような使い方をすれば5分も持たないだろう。今使っているように元の武器に絡ませて使うのでやっとと云ったところだ。

 無から武器を作り出しそれで戦うなど冗談みたいな事をしている相手では真っ向勝負なぞ無理だ。瞬間的にならまだしも、サポートもなくやってのけるなんてシディの知る限りはあり得ないことの筈だった。

 「……普通じゃないから連れてく必要があるんだよな。」

 カナンは会話する気もないのだろう、ただシディを討とうと剣を振るい続ける。闇色の剣の異様な存在感は、掠めるだけでも危険だと理屈ではなく本能が警告してくる。早いところなんとか手を打たないと命どころか計画すらもヤバい。

 剣で斬り結びながら倒れ伏しているもう一人の少女の方を窺うと、意識を失ったのかピクリとも動かない。


 ―― …今ならいけるか。本来の目的以外で多用したくはなかったがやむを得ないか ――


 柄に装着した魔道具(この存在)を教会側に知られるのは望ましくはないと常々言われていた。その教会側の少女の意識がないなら都合がいい。

 シディはカナンの激しい剣撃を防ぎながらもなんとか口を開く。


 『ブーストアイディークンツァイトタイショウオブシディアン』


 普段シディが使う(しゅ)とは違う、柄に装着されている魔道具に向かって唱えた言葉。意味はよく分からないが、そんな事に関係なくソレは反応した。


 「さぁエレス!俺に力を!!」


 シディのその言葉に応えるように魔道具エレスは光を放ち始めた。


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