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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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光の神子対漆黒の造花 其の二


 「俺に剣を抜かせた時点で勝ち目はないぜ?諦めて大人しく人質になれば五体満足なままにしてやるよ。」


 ずいぶん偉そうな物言いだ、なんて言い返すことが出来なかった。

 長剣を抜いた瞬間、まるでこの場所が偽ラナンキュラスの支配下におかれたような…そんな錯覚をしてしまった。

 ≪異能≫の力もあるのかもしれないけど…何なのだろう…下手に動いたら死んでしまうんじゃないかとそう思わせる……―― そう、きっとこれが殺気なんだ。

 震えて尻込みしそうになるのを堪え、杖を構える。

 確かにとても危なく、恐ろしい殺気がこの男から溢れ出ているが、あの時の……覚醒ツタモンの時よりはずっとマシだ。

 「ラナ……漆黒の華になんの用があるって言うの!?」

 「さっき言ってた……ラナ…なんとかってのが名前で漆黒の華ってのはニックネームなのか?ややこしいこった。」

 いつもの二つ名を出すと、男は頷いた後に面倒くさそうな声で言ってきた。

 公国内では悪の組織の存在は常識とも言えるのに、そんな事すら知らないような物言いだ。

 やっぱり…、サージェスさんの言ってた――


 「アヴィリナイト……。」

 ポツリと小さく呟けば、

 「ほぅ、まさかその名が出てくるとはな。俺らも有名になったもんだ。」

 驚いてるようでもあり、喜んでるようでもある反応が返ってきた。

 

 少し前から世界で名前が広まってるという、≪異能≫たちが集まって…、武力で自分達の……政治的な考え…?を実現させようとしている集団を……えーっと、何て呼ぶんだっけ…確か…………そう、ぺろ組織!

 予言もラナンキュラスたちではなくこのアヴィリナイトという集団を指しているかも知れないという話しだ。

 「そのぺろ組織が漆黒の華になんの用があるって言うの!?やっぱり手を組もうとしているわけ!?」

 「手を組む?ハハ、笑わせてく………、ん?いやちょっと待て、今なんて言った?…ぺろって聞こえた気が……。」

 「答えなさい!」

 誤魔化そうとしてるのか、話を逸らそうとする偽ラナンキュラス…――長いから偽ラナでいいや――に私は相手の雰囲気に呑まれないように問い詰める。

 その私の虚勢じみた気合いのおかげか、のし掛かる圧力が若干弱まった様に感じた。

 「……。うちのボスがその漆黒の華とやらに興味があるらしくてな。」

 何処か憮然とした口調になった気もしたけど、それよりも、

 「どういう事?漆黒の華を引き抜こうとでも言うの?」

 ラナンキュラスがいる悪の組織の目的は世界の覇権を握るためだ。

 アヴィリナイトの目的は確か≪異能≫たちの立場を上げて、普通に生きる権利を得ようとしている。

 ……普通に考えたらそっちの方がマシかもしれないけど……。

 「さて、な。知りたきゃ漆黒の華をおびき寄せるために捕まるんだな。」

 そんな無茶な事を言われたところでどうしようもなく一瞬口を噤んでしまう。

 というか、私は一度もラナンキュラスの仲間とは言った覚えはない。

 いや、とりあえず先におじさんの息子さんをカナンさんの方へ向かわせないと!

 偽ラナの目的がラナンキュラスなら彼には構わない筈だ。

 私は息子さんのいる方を確認しようと視線を巡らせたとき、虫の姿をした≪魔のモノ≫が視界に入った。


 ――あまりに静かすぎて忘れてた!!――


 「待って!あなたたちも≪魔のモノ≫を造って使っているの!?」

 ラナンキュラスのいる悪の組織だけでなくアヴィリナイトにもそんな事が出来るのか、慌てて質問する。

 「…あ?造る?何言ってんだ?コイツらは元々……≪魔のモノ≫…?」

 私の問いかけに答えかけながら、何かに引っ掛かったかのように言葉を止め、偽ラナは私をジッと見つめる。


 「…あぁ、そうか。そっちの可能性もあったんだよな。」

 そう偽ラナが言ったと同時に、私は反射的に後ろへ跳んだ。

 その直ぐ後に私が居た場所に炎の柱が生まれた。

 「…!!」

 自分でもよく避けられたと思う。

 偽ラナにはずっと警戒してたからか、この男から一瞬私の足元に向けて紫色の≪異能≫が走ったように視えたのだ。

 「なかなかいい動きじゃないかよ?―― 教会の狗の割には。」

 先程のどこか弛んでいた場の空気が再び張りつめる。

 口調すらこの男の使った炎の能力に反して

酷く冷たくなっていた。

 炎の柱は僅かな時間現れただけで直ぐに消えた。

 しかしその熱量が凄まじさは、ドロリと溶かされている私の立っていた場所(地面)が証明していた。

 ゾクリと恐怖を感じたが、私は唇を噛みしめそれに耐え偽ラナを見ると、彼は冷めきった様にこちらを見下した目で見る。


 「フン、本当ならなぶり殺しても構わないんだが…流石に子供(ガキ)相手にそんな真似する程俺も落ちぶれちゃないんでな。……教会(お前ら)と違って。」


 『気がつかないか?お前みたいな戦い方も知らない素人を≪光の神子≫なんて仰々しい二つ名を与えて、正義の味方様に祭り上げて、利用してるだけだと。』


 その温度を感じさせない視線が、あの時のラナンキュラスを思い起こさせる。

 ≪異能持ち≫の立場を上げる事、普通に生きる権利を手に入れる事、それがアヴィリナイトの目的なら…当然そう考える原因があるわけで……。

 この偽ラナはきっと≪異能持ち≫というだけで辛い目に合ってきたんだと分かる。

 そして、あの時も思ったんだ。


 ラナンキュラスももしかしたら≪異能持ち≫というだけで酷い目に合わされた被害者なんじゃないかと――


 

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