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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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陰る光のお悩み相談


 アレイシアの悩み事とやらを相づちすら打たずにとりあえずは聞いてみた。


 要点を押さえるとするなら、味方の≪奇蹟の人≫が昔≪異能持ち≫に酷いことされて、その結果≪異能持ち≫全体を憎んでしまっている。

 敵の≪異能持ち≫は悪いことしてるけど、だからといって≪異能持ち≫全員が悪い訳じゃないと思う。

 それに敵ではあるものの、その内情を知ることもなくこのままただ悪として倒すだけでいいのか……というところか。

 もっと曖昧な感じだったが、概ねこんな感じだろうと思う。

 まぁ、更に言えば≪奇蹟≫と≪異能≫の違いにも疑問を持ったみたいだがな。


 名前こそぼかしてはいたが、十中八九イカれ信者ヘレンの事だろう。

 まぁ、案外不幸な生い立ちのようで()調()出来なくもないが……、仮に教会に洗脳されてるだろうとしてもやはり不愉快な相手に変わりはない。

 それと敵とかいうのは、悪の組織(俺たち)の事で、その内情だの言ってるのは……蔦野郎での俺の行動が影響してる……なんて事はないと思いたいが……。

 最後のは多分、世間的な≪異能≫やら≪奇蹟≫やらの考え方と教会やそれに倣う権力者どもの考え方との差異に悩んでいる、というところか。

 アンの話しによるとアレイシアやその家族はフォルソーン教徒ではないだろう。

 …こんなに商売に利用しまくってそれは流石にありえない筈だ。

 俺がガキの頃の、その時期にいた場所ならいざ知らず、公国内は比較的≪異能持ち≫の差別はマシな方みたいだから、アレイシアが教会の思想についてけないのは無理ない……と多分だが思う。

 だが。


 「……、別に気にせずその敵を倒していいんじゃないか?」

 何故そう難しく考えるのかが正直分からないので思った通りに答える。

 「……え?」

 「それがあんたの仕事なんだろ?」

 俺は懐から煙草を取り出し、アレイシアに許可を取ってから火を灯す。

 深く紫煙を吸い、誰にもいない空間に顔を向けソッと吐き出した。

 その間もアレイシアは俺の言葉の続きを待つかの様にこちらをじっと見つめている。

 仕方なくその発言の意図を補完する。

 「……俺は、用心棒みたいな生業をしてるが。」

 「………?」

 脈絡がない俺の言葉にアレイシアは不思議そうな顔を向ける。

 「主に敵意を向けるもの、主が命じた時、俺は迷うことなく剣を抜く。そこには俺の意思だの考えだの関係はない。それが仕事だからだ。」

 今後の悪の結社(公安)業務を考えれば、もう少し巧く誘導する事も可能かもしれないが、ラナンキュラス(仕事)をしている最中ならともかく、今のカナン(オフ)までそんなことする程真面目じゃないからな。

 何が正しいのかなんて考えても無駄だ。

 結局は与えられた環境と状況の中で生き延びるしかないのだ。


 「深く考えたところで結局はやらなきゃならないこともあるんじゃないか?≪奇蹟の人≫になったなら、教会のルールに従って生きた方がいいと思うぜ?いっそのこと割りきった方が生きやすい。」

 アレイシアの年が幾つかなんて知らないが、せいぜい15、6位の子供だろうか。

 俺の方が少しは年食ってるからな、大人の考え方とやらを教えておく。

 まともかどうかはまた別かも知れねぇけど。

 「それはそうかもしれないけど…、」

 アレイシアは不服そうに俺を見る。

 そんな目で見られたところで俺みたいなろくでもない人生歩んでる男がコイツが求めているような素晴らしい返答なんざ出来るわけもない。

 もっと立派な人間に――――

 

 ふととある背中が頭をよぎった。

 ……あの(ひと)ならなんて答えるのだろう、らしくもない過去の記憶が思い起こされた。


 「はぁい!お待たせしましたぁ!ご注文の~メニューでぇす!!」

 やたら能天気な言葉に意識が引き戻された。

 アレイシアもその雰囲気に流されたのか、先程の鬱々とした表情は消えている。

 その様子に気づいてないだろうアンは、勧められるがままに頼んだ食い物をテーブルに並べていくが、

 「…………、なんだコレ。」

 エールはまぁ、そこらの酒場で出されるものと大差はない。

 アレイシアの好物だとかいうオムレツセットも、タマゴをふんだんに使って作られたオムレツに赤いケチャップが程よくかかっており、チーズを練り込んだらしいパンと、褐色色したおそらくオニオンスープが共に並んで、なかなか旨そうでこれもまた問題はない。

 問題は…………

 「……この馬鹿みたいにデカイ寸胴鍋はなんだ。」

 テーブルの中央ににデンッと置かれた十人分以上のスープを賄えそうなこのデカイ鍋を指差しアンに問いかけると、アンはキラキラした笑顔を向けてきて、

 「ごった煮シチュー鍋ですぅ!!」

 堂々と紹介した。

 いや、確かにメニューにはシチュー『鍋』と書かれてはいたが、普通は小さな鍋を出すだろう。

 何で調理してたものをそのままお出ししやがるんだ?

 「ウフフフゥ、これだけあるとお腹がいっぱいになって幸せですよねぇ!他のメニューは小腹を埋める程度ですけど~。」

 腹いっぱいどころかはち切れるわ。

 コイツ、身体能力だけでなく内臓まで規格外なのか?

 「あ、コレ団体さん向けのメニューなんですよ。……アンは一人でペロッといけちゃうみたいだけど。」

 「あれあれぇ、もしかしてカナンさんたら、食べきれない感じですかねぇ?」

 わざとらしいアンの発言に、俺は狙ってこのメニューを勧めてきたのだろうと悟る。

 「アレイシア、あんたも食え。」

 「はぇっ?」

 複数に重ねておいてあったシチューの受け皿を一つ差し出す。

 「うふふぅ、なら私もぉ、」

 「お前は仕事しろ。」

 アンが受け皿へと手を伸ばしたが俺は容赦なくふさぐ。

 予想をしていなかったのか異常なスピードを出すこともなかったので普通に遮ることが出来た。

 別に食べれもしないから渡しても構わなかったが、どうにも癪に触ったのだ。

 「ひ…ひどぉい~。」

 凹みながら俺のテーブルから去っていくアンに不思議と清々しく感じる。

 そんなアンを見ながら笑うアレイシアを見ながら、先程話した事を考えた。


 あの(ひと)ならもっと真摯に答えるだろうか。

 親無しのガキ()にだってまともに向き合ってくれた数少ない人間だった。


 らしくもないと思ったが、俺は口を開いた。

 

…もっとマシなエピソードタイトルがあったら変えるかも………

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