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悪花狂乱  作者: 謙作
第四章 アヴィリナイト始動

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光の神子 迷い悩む

アレイシアの視点です。


 「お父さん!フルーツパイとショートケーキと恋フィズ!3番テーブルに各1!!」

 「おう!」

 時間は昼下がりといったところ、私は両親が営む食堂アラカルティでお手伝いをしている。

 とは言っても、バイトのアンが帰ってくる間だけではあるけれど。

 本来なら聖堂で≪奇蹟≫の練習をしたり、お勤めで現場に行ったり、やるべき事は色々あるのだけど、今日はちょっとお休みを頂いたのだ。


 ちょっとした事情があって。









 予言のお勤めから数日。

 意識を失っていたヘレンが目覚めたと聞いて、私はすぐに彼女の部屋へ向かった。


 たどり着いたヘレンの部屋のドアの前で名前を名乗り、軽くノックをする。

 「……アレイシア…ですか。……どうぞ。」

 静かな声が部屋に入る許可をくれたので中に入ると、あの時と違い落ち着いた様子のヘレンがベッドに横たわっていた。

 「…よかった。目、覚めたんだね。体の具合は大丈夫?」

 そう尋ねるとヘレンは軽く頷いた。

 「普段は使わない能力を無理に行使した為の精神的な疲労との事です。今後の任務に支障はありません。」

 普段通りの冷静な答えに私は胸を撫で下ろす。

 手に持っていた父さんに作って貰った食堂でも出しているフルーツパイを差し出し、

 「これ、うちでも人気のスイーツなんだ!!後で食べて?」

 できる限りの笑顔で渡すと、ヘレンは少しだけ笑い受け取ってくれた。

 その反応に私は本当にホッとした。

 あの時の怖いくらいに怒り狂ったヘレンではなく、いつも通りのツンツン時々デレのヘレンだ。


 あまり長居は良くないと思ったのですぐに帰ろうとした私をヘレンが引き留める。

 「アレイシア……。……ヤツは、倒せなかったのですね?」

 「…ヤツ?」

 しばらく考え、ヘレンが意識を失った原因を思い出す。





 『し…死んで贖えぇッ!穢らわしい罪人めぇ――!!』


 あの時、ラナンキュラスに向けて放たれた大地の≪奇蹟≫。

 心の底からの叫び、ヘレンの≪奇蹟≫の能力が今までで一番凄まじい力に感じた。

 以前にラナンキュラスが聖句の事を自分を奮い立たせるための言葉だと言っていた。

 気合いを出すための言葉……、心の底から唱えた言葉だからあんな凄い能力が出た……。





 「……ごめん。ラ…、漆黒の華にはあの後逃げられちゃった。」

 ヘレンが倒れた後の、謎の炎の≪異能持ち≫やアヴィリナイトの事は黙っておいた。

 正直に詳しく話したらヘレンがどう反応するか分からなかったからだ。

 「……………、アレイシア。あなたが本来の≪奇蹟≫を使えば奴らを討てた筈なのに……。」

 静かな声だが、その言葉はまるで私が手を抜いてたかのように責めている。

 病み上がりの相手だけど少しカチンときた。

 別に手を抜いてた事なんて今までない。

 確かに私は未熟だけれど私なりに皆を守るために戦った筈だ。

 「私は、私なりに頑張ったつも…」

 「奴らを殺す気で力を振るっていれば!!」

 突如激昂したヘレンに言葉を掻き消される。

 「今までの貴方は確かに力を使いこなせなかった。だから奴らを追い払う事が出来ただけでも構わなかった!でも今は違う!!」

 ヘレンが強くこちらを睨む。

 「その力があれば奴らをッ、≪異能≫どもを殺せた筈だ!!追い払うなんて生ぬるい事などせずにッ!!」

 強い強い殺意がヘレンから溢れているのを感じる。

 まるで私に向けられていると錯覚してしまう程に…。


 あまりの強い感情をぶつけられて戸惑ってしまうけど、その考えはいけない。

 私はヘレンの感情を抑えて貰おうと言葉をかけようとした。

 「…ッ!駄目だよ!!私たち≪奇蹟の人≫は人々を守るために力を振るうんだって、人を殺すための力なんかじゃ…」

 「あんな(けだもの)どもがッ!人である筈がないッ――――!!」

 悲鳴のような叫びに私は怯んでしまった。

 「我々に与えられた≪奇蹟≫は忌まわしい≪異能≫どもを駆逐する為のもの!!それが使命であり、正義なんだ!!」

 身を乗り出して、必死に訴えかけてくる彼女にはそれが本当に正しいと盲信しているようだ。

「私たちは奴らを滅ぼさなきゃいけないッ!それこそが我々の、なさねばならない正義なんだッ!!」


 ――どうすればいいのか……、私の言葉なんかじゃ届きそうにない ――


 「……ヘレン。」

 ヘレンの考えはいけないと感じるけれど、どんな言葉をかければいいのかが分からない。

 睨んでくるヘレンの目を見つめ返すことしか出来ずにいると、ヘレンは少しだけ落ち着いてきたのか、視線を伏せ息を整える。


 「……今日はもう帰って下さい。」

 「ヘレン……。」

 静かな拒絶に私は何も言えなくなる。

 「………うん、また…ね?」

 何とかそれだけを告げて去ろうとするその背後で、

 「…私にあなた程の≪奇蹟(ちから)≫があれば………。」

 絞り出すような苦しい声音が微かに耳に届いた。



 「……奇蹟(ちから)があれば、か……。」


 ヘレンの≪異能者≫に対しての憎しみや、サージェスさんの口振り、多分ヘレンは≪異能持ち≫に酷いことをされたんだろう事は想像できた。

 例えば、家族とか友達とか大切な誰かを………。


 でも、この≪奇蹟≫が神様がくれたっていう凄い力は誰かを殺すとかそんな使い方はしちゃいけないと思う…。

 いや、そりゃもし家族とかの敵だったら復讐とか考えるのは仕方ないとは私も思うけど…。

 でも、≪異能持ち≫だからって皆が皆悪くはないんじゃないのかなって、本当は思ってる。

 例えばこの間の黒コロ…黒い大型犬の≪異形≫の時にいた風使いの騎士さん……確か、リンドー?さん。

 あの人だって一緒にラナンキュラスと戦ってくれたし、媛様が大丈夫みたいな事を言ってたし………。

 そもそも媛様だって教会の洗礼を受けてないだけで、立派な≪奇蹟の人≫なんだし、となると媛様がオッケー出したリンドーさんも当然≪奇蹟の……………?


 ………あれ?


 ヘレンはリンドーさんが≪異能持ち≫って攻撃して、でも媛様は≪奇蹟の人≫で、≪異能≫は神様からの授かった≪奇蹟≫とは別の能力で―――


 ≪異能持ち≫は悪しき存在に魂を売り、それと引き換えに手に入れた魔の能力。

 なんかそんな風に言ってたフォルソーン教の信者の人がいたけど…、そんな人たち以外に≪魔の存在≫なんて神話かなんかの物語の悪役を別に私の周りは信じてる人はいなかったし…。

 ≪奇蹟の人≫になる時も、悪の組織と戦う為で、≪異能持ち≫を倒すとかいう話ではなかったし…。

 そこでふと疑問に思ったのだ。


 ―― そもそも…≪異能≫ってなんだろう ――




 最初は≪異能≫とか≪奇蹟≫とかよく分からないで≪魔のモノ≫なんかを引き連れて世界征服?を企む悪の組織を倒すために戦ってるつもりだったけど、アヴィリナイトとかいう≪異能持ち≫の為に戦う組織の話しも聞いて、ヘレンみたいな考えの人もいて……。

 なんか、このまま何も考えないで悪の組織と戦うだけでいいのかよく分からなくなってきた。

 それに………、



 『―――他にやることがないからさ。』



 まだラナンキュラス(アイツ)の言葉が頭に残っている。

 悪の組織は完全に悪だけど、そこに所属している≪異能持ち≫全員は果たしてそうなのだろうか………。


 そんな迷いで頭の中がグルグルしてて…。


 だから自分の守るべき存在を再確認して、とりあえず今グルグルしてる内容の答えを自分なりに出してみようと今に至るのだ。


 

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