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悪花狂乱  作者: 謙作
第三章 お飾り媛と無愛想騎士

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無愛想騎士の考察


 「引き留めてしまって申し訳ないわね。そちらに座って頂戴。」







 漆黒の華が引き上げて、歓喜に沸く観客たち。

 意識を失ったままの教会の少女を何処かに、おそらくは休める場所へ運ぶように指示をし、アイシャも共に移動していく。

 その姿を遠くから眺めていると、

 「媛様がリンドウ様にお礼をしたいとの事。お手数でしょうがご足労願います。」

 先程まで人質として囚われていた女性、フジが落ち着いた仕草で談話室へとリンドウは案内された。

 関係者以外に入れないという建物の中へと進むとしっかりとした造りのドアがあった。

 「失礼いたします。」

 ノックをし、一声かけてから中へと入れば、なかなか広く客人を迎えるに相応しい立派な部屋が広がっていた。

 少女たちへの手当ての指示などは終えたのだろう、既に豪奢な椅子に座りこの後の処理をしていたらしいアイシャに一礼し、勧められた席に座ったリンドウを見て、アイシャは軽く微笑みかけ、冒頭の言葉をリンドウにかけた。



 「今回、劇場に来てくれていた観客たちを救って貰ったこと、感謝するわ。」

 そう礼を述べると、彼女は立ち上がり深くお辞儀をした。

 「そんな、頭を上げて下さい!騎士として当然の事をしただけに過ぎません!」

 リンドウも慌てて立ち上がり、アイシャの行動をやめさせようとする。

 「いいえ、貴方があの時対応してくれたからこそ誰一人命を落とさずに済んだわ。本当に心から感謝しているの。ありがとう。」

 確かにあの時リンドウから攻撃をしなければ、地中から這い出た黒い獣の≪異形≫に蹂躙されていただろう。


 ――しかし、


 「私がおらずとも、なんとかなったのではないかと思いますが…。」

 謙遜などではなく、リンドウは思ったことを言った。

 アイシャの顔からスッと微笑みが消える。

 「…それは、どういう意味なのかしら。」

 不興を買ってしまっただろうかと思ったが、しかし聡いこの媛であれば説明すれば理解してくれるだろうと思い直す。


 「漆黒の華と呼ばれていたあの男ですが、もしかしたら……あの≪異形≫をなんとかしようとしてたのではないかと……。」

 憶測とはいえとんでもない話だとは思ったが、しかしそうとでも思わねばならない程にあの男の行動は不自然だとリンドウは考えた。



 そう考えたキッカケは最後の足掻きとばかりに、フジを人質にとった時だ。

 あの時にリンドウは漆黒の華の気が逸れた瞬間に間合いを詰めた。

 ただ素直に側面や背面をとったとしても、漆黒の華の≪異能≫、闇の障壁に遮られてしまうだろうと考え、フジもろとも攻撃するフリをした。

 少しでも動じて闇の障壁の強度を弱められればと思ったからだ。


 「しかし、あの男は自らに張った障壁をフジ殿の前に張り直した。自分がその場から退く為か、要求を通すための人質ならば自身より優先して守るとは考えられません。」

 そう考えれば色々な疑問が氷解する。


 リンドウの周りには自身以外に≪異能≫を使えるものがいなかったため、≪異能≫という能力があれほど色々なことが出来ると知らなかった。

 土の能力の少女のように大地を遠方へと飛ばす遠距離攻撃、光の能力の少女のように盾のように攻撃を遮る防御。

 漆黒の華は闇の能力で、攻撃、防御、爆破といった間接攻撃のみならず、自身の顔を隠すマスクすらも瞬時に生み出した。


 あれだけ能力を使いこなせているのならばやり方は幾らでもあった。


 公国に対して大きく被害を出したければ、黒い獣の出現時点で現れていれば壊滅状態にも出来ただろう。


 ≪異形≫は例えどれ程の達人であっても、それが物理的な攻撃ならば倒すことは困難だ。

 事実、他の領地より≪異形≫の出現が多いヴローン領もリンドウが能力に目覚める前では兵の被害が相当で必ず犠牲者は出ていた。

 リンドウ以上に腕が立っていた騎士や兵士でも刺し違える覚悟で戦っても倒せぬことだって珍しくなかった。

 歴戦の戦士とてこうなのだから、非戦闘員の観客が黒い獣に逆立ちしたって勝てる筈がない。

 漆黒の華がリンドウや教会の≪奇跡の人≫を相手にしている間に黒い獣を暴れさせておけば被害は甚大なものになっていた筈だ。


 教会の≪奇蹟の人≫を仕留めたかったのならば、彼女の攻撃を黒い獣で遮らず自身の能力で防ぐことで戦力を減らすことなくこちらを倒すことも出来ただろう。


 教会の≪奇蹟の人≫に対して悪意はあったが、その割に攻撃は甘かった。

 不意打ちとも言える攻撃は彼女たちが内輪揉めを始めたあの時のみ。

 助力して貰った立場で失礼だとは思うが、あの光の能力の持ち主では漆黒の華の相手にならない。

 秘めている能力は漆黒の華の攻撃を防ぎきった点を考えればリンドウと比較できぬ程に強力だとは思う。

 しかし、戦い方に無駄が多い。

 ≪異能≫では劣るが武器を用いた戦い(殺し合い)ならば確実に勝てる。

 冷静さが欠如していた土の能力の持ち主なら尚更だ。

 リンドウでもそうなのだ、漆黒の華ならば二人相手でも容易かった筈だ。

 例えリンドウが阻んだとしても、漆黒の華の多彩な能力があれば同じだ。


 だからリンドウはこう結論付けた。



 ――漆黒の華は本当は≪異形≫を討ちに来たのではないかと。



慌ててあげてしまった為、色々と直す点があるかも…。


25年9月30日一部修正しました。

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