光に迫る黒い影
俺と蔦野郎を交互に見るアレイシア。
どちらに仕掛けるか悩んでいるのだろうが、俺から仕掛けるわけにも行かない。
フリとはいえ、アレイシアに攻撃した時に蔦野郎が俺の方へ攻撃してくれば大惨事だ。
となると、だ。
「フム、このままソレと二人がかりならぬ、一人と一頭がかりでは芸はないか。まずはお手並み拝見。」
強者の余裕と見せるように一歩後ろに下がり、俺は先ほど構えた大鎌を肩に担いで近くにある大岩に寄りかかる。
アレイシアには悪いが蔦野郎に先に攻撃して、闘い合ってもらわねば俺も参戦出来ない。
「相変わらず腹のたつ男!!こいつブチのめしたら速攻であんたもブチのめしてやる!!!」
――単純なヤツだ――
あっさりと挑発に乗ってくれてこちらとしては大助かりだが、こいつ普段の生活とか大丈夫なんだろうか。
教会のヤツらにもいいようにこき使われているんじゃないのか?
「だ・れ・が、単純バカだ―――ッ!!!」
どうやら口から零れてしまったようだ。
『光よ――』
杖の先端が光を放ち、アレイシアは蔦野郎に向かい勢いよく振り下ろす。
清浄ともいえるその異能は悍ましい蔦野郎にはよく効いているようだ。
揺らめかせていた蔦でその打撃を防ごうとしたのだろうが、その光が蔦と交わった瞬間に、木が朽ちるかの如く、ぼろぼろと崩れていく。
蔦野郎も負けじとまだ無事な蔦を鋭く振り、遠心力で彼女に攻撃を仕掛けるが、杖で捌いたり、間に合わない場合は障壁で防いだりしている。
「………不味いな。」
闘いが始まり、10分程度。
一見、アレイシアの方が優位に見えるが、蔦野郎本体にダメージらしいダメージは入っていない。
崩れ落ちた蔦も再び本体からにゅるりと生えている。
怯んでいる動作を見せるのも、自身の攻撃が無効果されてる事に動じてるだけにも見えた。
対してアレイシアの方は、動きに僅かながら鈍りが見える。
能力の容量の消耗が著しいんだろう。
―― 割って入るには不自然過ぎるか。――
戦況事態、蔦野郎の不利には見えない。
加勢する振りをして攻撃するには状況が不自然すぎる。
こんな見晴らしのいい荒野では気づかれないように攻撃も出来ない。
どうするか俺が考えを巡らせている間に、彼女の動きから徐々に精彩さが失われていく。
「――ッいい加減諦めて攻撃を喰らえ!」
お互い決め手もない膠着ともいえる状態に苛立ったのか、アレイシアが大きく後ろに下がり間合いを取る。
――あのバカ……!――
大技でケリをつけようと考えたのだろう、杖に大きく光を放ち始める。
が。
「―――ッ!!?」
蔦野郎の姿が消えた。
いや、アレイシアから見れば消えたかの様に見えただろうが、離れた位置から眺めていて辛うじて見えた。
地面に潜り込んだのだ―――。
――不味い!アレイシアでは対応出来ない――
彼女が悪の結社退治に参戦したのは最近だ。
経験が不足している為、イレギュラーな状況に即座に反応出来ない。
大鎌を握りしめ俺は咄嗟に飛び込んだ――。