炎の神官戦士 サージェス警告する
今回でニ章は完結です。
また新たな章は少々時間が開いてしまいますが…。
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
2025.2.6
文章におかしな部分があったため修正。
「……おいおい、さっきから百面相が凄まじいぞ、一体何を考えてるんだ?」
サージェスさんの言葉にハッと意識を現実に引き戻した。
サージェスさんとグラナトさんの両方が軽く引いた顔して私を眺めている。
「あははは、ちょ、ちょーっと腹立つことまで思い出しちゃって~。」
笑って誤魔化してみたけど、今度は呆れた顔を向けられる。
おのれ、ラナンキュラスめ。
「フフン、もしや漆黒の華を思い出してたのかい?」
揶揄いを含んだような声に若干イラッと感じながら「そうだけど、そうじゃないから!」と前置きする。
あの時、何故私が教会にいるのか問いかけてきたあの時。
ラナンキュラスはいつものアイツじゃなかった。
いつものあの男は、人をどこか小馬鹿にして、おちょくって、揶揄って、凄いムカつくヤツだけど。
あそこまで露骨な嫌悪感を向けられたのは始めてだ。
蔑みとか侮蔑とか忌々しいナニかを見下す瞳が今も脳裏に残ってる。
その後訊いた組織にいる理由も……
『他にやることがないからさ。』
あの後直ぐに言った言葉も合わせれば、いかにも愉快犯が云うかもな台詞だけど。
あの時の眼は、どこか行く宛のない旅人みたいな淋しさを感じた……。
ラナンキュラスは過去に何かあったんだろうか。
教会と――――
悪の組織は悪い。それは変わらない。
あんな化け物を生み出して操って人々の平和を脅かしているんだから。
じゃあ、教会は正義なのか。
ラナンキュラスが指摘したことは考えないようにしてたけど、私も少し思っていた。
お貴族様だから教会も口を出せないんだと思っていた。
けど―――
『特権階級の素晴らしい事だ。お前もそんな奴らのために媚びへつらい、身体を張って頑張っているのか?』
もしかしたら、上級貴族を教会の偉い人達が守っていた?
私たち平民や位の低い貴族達だけが闘ってるのは教会も納得していた?
この推測が正しいのかは分からない、けど。
もし、これが正しかったとしたら、それを知ってたラナンキュラスは、もしかして―――
「………あの、さ……」
私は色んな事を考えながら、迷って、そして意を決して口を開いた。
「…漆黒の華は……本当に悪人…なのかな?」
―― そう言葉にしたとたん空気が変わった。
「アレイシア。」
温度を感じない冷たい声に、思わず私は肩を小さく震わした。
顔を上げるとそこには感情をなくした二人が静かに私を見ている。
「今回の戦いでヤツとどんなやり取りをしたかは分からんが……。」
サージェスさんがじっと私を見る。
「奴はあの組織に所属している。その時点でもう教会の敵であり、悪なんだ。」
口調も同じように静かで怒りを感じるわけでもない。
だけど、普段の大声で怒るサージェスさんよりも、今の方がとても恐ろしく感じる。
「そうだよ、確かに恋愛話を好むこのグラナトも出来たら応援してあげたいけどね。」
グラナトさんも先ほどと変わらない言動だけど…
「絶対に叶わぬ悲恋になると警告するよ。」
そんなんじゃないと抗議することの出来ないくらい冷徹な瞳で私を見ていた。




