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悪花狂乱  作者: 謙作
第二章 輝き照らす 正義の光 

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光の神子 アレイシア漆黒の華を逃す


 正義の鉄槌とも言える拳によって、ツタモンは倒れた。

 私も考えずに能力を使ったせいか、立ってられなくて膝をついて座り込んだ。


 光が消えて残ったのは、ボロボロに朽ち果てているツタモンだった残骸だ。

 まだ辛うじて生きている……という表現が正しいのかは分からない。

 ツタモン、いや、≪魔のモノ≫は悪の組織によって産み出された兵器なのだから。



 「…やれやれ、とんだ欠陥品だ。」


 そんなため息をつきながら、ラナンキュラスがツタモンの近くへ歩み寄っていく。

 パッと見て怪我もなにもしてなさそうで安心して……いや、違う!と否定した。


 ツタモンが暴走したから一緒に戦った、ただそれだけだ。

 そう自身に言い聞かせながらふと疑問に思った。


 ―― どうして一緒に戦ってまでツタモンを倒したんだろう ――


 暴走したからって言ってたけど、別にラナンキュラス的には放っといても構わなかったんじゃない?

 悪の組織が望んでいるのは世界征服みたいな話で、村や町だってコクリョクゲンタイ?の、国を弱くするための行動。


 つまりラナンキュラスの命令を聞かなくなっても、その場からいなくなれば勝手に暴れまわる化け物になっただけで。

 わざわざ倒す必要なかったんじゃない?


 「さてと、用も済んだし、上に報告しなきゃならんことも出来たし俺は帰らせてもらうぞ。」


 いつもと変わりない態度でラナンキュラスは上の岩場へ軽々と跳び上がってから、私の方に向き直った。

 仮面に隠れているから当然表情は見えない。


 「コレの始末を手伝ってもらった礼だ。見逃しといてやるさ。」


 ラナンキュラスの闇が創った紐がツタモンの残骸を掴んで引っ張りあげた。

 研究の一部を残さないようにだと思うのが自然だけど、危険なものを残さないために連れていこうとしているように感じてしまう。


 「……ではいずれ」

 「…ま…ちなさいよ…。」

 いつもみたいに不愉快なほど恭しく一礼をしようした所に待ったをかける。

 杖を支えにしてなんとか立ち上がろうとする私に顔を向けた。


「…とりあえず…あ……いや、違う、そうじゃなくて……あんた、あの化け物使いこなせてなかったじゃない。」

 何から云うべきか迷って、最初に思い付いたお礼の言葉を口にしかけて慌てて取り消す。

 とりあえず、次に思い付いた事を口にした。

 「……まぁ、さっきの欠陥品に関しては否定はしないな。」

 肩を竦めるあっさりと答えたラナンキュラス。

 動揺なくあっさりと肯定的な発言だ。

 いつも通りのその態度はこちらの質問をまともに受け入れてくれない気がした。


 どう問い詰めていけば本当の事を答えてくれるのか…。

 あの時、ほの暗さを滲み出したマイナスの感情は微塵も見せてくれない。

 頭のなかで一生懸命考えてみる。

 黙っていたらさっさとここから去りそうだ。

 かと言っていくつも質問したところでその全てに親切に答えてはくれないだろう。


 考えに考えて私は口を開いた。


 「……ねぇ、…あんたは何でこんなことしてるの?」


 真っ直ぐに目を合わす。

 仮面の顔の半分は隠されていて感情は分からないけど、唯一見える目をじっと見つめる。


 「……どうした?真面目な顔して。さっきまであんな間抜けな呪を使ってた癖に。」

 「茶化すなッ!!」

 やはり巫山戯た態度で答えてくるのがもどかしい。 

 「…教会の連中から聞いていないのか?世界の覇権を握るために行動している。今回はその為の試運転だ。」

 私の質問の仕方が悪かったのか、ラナンキュラスの答えは教会から教わった内容そのままだ。


 「それはあんたら組織の目的でしょ!!」

 「………?」

 こちらの質問の内容が分からないと、ラナンキュラスが軽く首を傾げた。



 「≪漆黒の華≫!あんたは何をしたいの!?何故こんなことをしてるのよ!?」


 サージェスさんが言ってた愉快犯的な思考だったらなおのことあの時共闘なんて求めたりしなかっただろう。

 世界征服の為だって同じ話、ううん、それどころか共闘だなんて言っておいて、私を不意打ちした方がきっと組織の為になった。


 あの時のラナンキュラスは私に≪奇跡≫の力の使い方を教えてくれたし、私に向かった攻撃を庇ってくれた。

 それにツタモンの本体が突進した時も……。


 真っ直ぐに見つめたラナンキュラスの瞳が静かに凪いだ。

 何を考えているか分からない複雑な色。

 そう、あの時の薄ら寒さを感じるような…。


 「他にやることがないからさ。」


 静かに、しかしはっきりと私の耳に届いた。


 「それって………」

 「こんなつまらん世の中で、こんな能力を何にも使わずに置いとくなんて勿体ないだろう?」

 直ぐにいつも通りのラナンキュラスに戻った。

 今見たものは錯覚だったと思わされるくらいに一瞬だけしか見えなかった。


 「本当にそうなの!?あなたは本当は…」

 「何だ、そんなに俺が気になるのか?ハニートラップを仕掛けたいならもう少し大きくなってからにしたらどうだ。ヒヨコちゃん。」

 更に問いかけようとするワタシの言葉を遮り、あまりにもムカつく事を言い始めたラナンキュラス。

 そんな腹立つもの云いに私も強制的に元の私に戻らされる。

 「ふざけんじゃないわよ!何を自惚れてンの馬鹿ッ!!私はあんたの事なんか気にしてるわけないし、そんなハレンチな事するもんですかッ!!」

 「……お前の語彙力に時々感心させられるよ。そんな勘違いされたくなきゃ、そんなに熱心に男を見つめない方がいいぞ。」

 「熱心に見つめてなんかないわ!!颯々(さっさ)と帰れ!!」


 そうしていつも通りの応酬に流れ込み、ハッと我に返ったときには既にラナンキュラスはこの場から去った後だった。



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