光の神子 アレイシア三の舞を踊りきる
明けましておめでとうございます。
アレイシアの章もそろそろ終わりへと向かっています。
最後までお付き合い頂けましたら幸いです。
真っ直ぐに蔦だけではなく本体ごと私に向かってくるツタモン。
固く目を閉じてしまったあとに、ラナンキュラスの言葉が頭を過った。
『眼で見るんじゃない。例えば、額に自身のもう一つの目があると思い込んで視ろ』
感覚で視なきゃ――。
迫り来る赤黒い闇が視えた。
真っ直ぐに突き進んでくる。
私は杖を前方へ差し出し、蔦を受け止めずに、先端が接触した瞬間に下から上へと持ち上げるように動かした。
僅かにだが、蔦の軌道が上方へと動き私から逸らす事が出来た。
だが、まだ本体が迫っている。
恐怖と迷いとの感情がわき上がる。
蔦はなんとか出来たが、本体を逸らすことは出来ないし、障壁を―――。
杖を横に構えて聖句を唱えようとしたが、聖句の言葉が出てこない!?
既にツタモンは目の前だ!
―― 無理ッ!防げない!!――
固まってしまった私の耳に ―――
「アレイシアッ!!」
ラナンキュラスの声が聞こえた。
『……呪は分かりやすく言えば、自分自身を奮い起たせる引き金みたいなものだ。』
『身も蓋もなく言えば、気合いを出すだけの言葉だ。』
ついさっきラナンキュラスの言ってた言葉が瞬時に甦った。
『気持ち悪い!どっか行って!!』
心の奥底から思い、願ったことをストレートに声に出した。
恥も外聞も今はどうでもいい!
司祭様の言ってた聖句なんかよりずっとずっと強く精神が集中できた。
杖をグッと握りこんで、叩きつけるイメージ、例えるなら、肉を柔らかくする肉叩きの如く!
自分の頭上に光の塊が視えた。
ツタモンを砕けるほどのばかでかい肉叩きが、私の動きと同調する。
迫り来るツタモンを、叩き返した。
「……………は?」
いつの間にやらラナンキュラスがツタモンの近くにいて、間の抜けた声をもらしてた。
多分、私も同じようにポカンとしてたと思う。
夢中で使った≪奇跡≫の能力は、一番最初に使ったときみたいに力強い光だったから。
ラナンキュラスがハッと我に返った。
「追撃しろ!!」
走り向かった勢いを利用して、大鎌を強く振り下ろしたと同時に、また大鎌がふわりと漂う闇になったと思ったら、グルグルとツタモンを先程のように縛り付けた。
「光の!」
私に振り返るラナンキュラスに、大きく頷いて見せる。
うん、イケる!
私は強く強く強くイメージした。
さっきの肉叩きは正義の味方らしくなかった。
やっぱりヒーローだもん。
『食らえ!正義の鉄拳!!』
力強い拳をイメージした。
どんな悪だって叩きのめす強くて固い握り拳。
私は勢いよく杖を握りながらも拳を叩き下ろす。
さっきと同じくらい、いや、それ以上の光の力が拳になり、ツタモンに下された。
『―― ォオオぁアオぉオォぉ――――ッ! 』
グルグル巻きをほどいて逃げようとしているのだろう。
大暴れしているけど、ラナンキュラスの縛り付けた紐はほどけなかった。
耐性はついたみたいだと言ってたけど、攻撃に対してだけだったのかなと、一瞬だけ頭を掠めたが、そのまま光の拳を叩き落とした。
ツタモンが最期まで抵抗しようと拳に潰されながら足掻いてたけど…。
『……ジカ…ギ…レ…』
微かに声が聞こえたような気がしたけど、そんなことがある筈がないので気のせいだ。
今はツタモンを倒すのみ!
力尽きたのだろう、抵抗がなくなったツタモンを、私は容赦なく押し潰した。
一の舞は手本、二の舞は真似てみるも滑稽な失敗、三の舞という言葉はありませんが、三の舞は自身の舞を舞って成功させた、というイメージです。




