光の神子 アレイシア漆黒の華と共闘する
推敲してなかったので後日修正するかも。
自分の戦う理由を怒りのままにぶちまけて、挑むようにラナンキュラスを睨み付けた。
まだこちらを馬鹿にするようならぶん殴ってくれる!と杖を握り直していたら、またラナンキュラスの様子が変わる。
「……フッ、流石≪正義の味方≫様だ。聞いてるこちらが恥ずかしくなるような綺麗なお題目だ。」
先ほどのヤツからの嫌悪感が冗談だったかのように消えていく。
「………まぁ、いいさ。とりあえずこの状況で助太刀が来ないという事はやはり教会はこの程度じゃ本腰を入れることはないようだな。」
「…ちょッ!?」
話しは終わったと言わんばかりの態度でツタモンの方へ振り返るラナンキュラス。
は?いや、なんだったのよ、今のは。
急激に向けられてた敵意が無くなったので面食らってしまう。
「…て、敵に背を向けるなんて随分余裕ね!」
背後から攻撃するような卑怯な真似をするつもりはこれっぽっちもないけど、杖を構え直して忠告してやる。
いや、別に≪奇跡の人≫は正義の人だし、そんなことしないけど、コイツが隙だらけだからって魔が差すかもしれないから。
そんな私の仲間たちへの心遣いを気にすることもせず、ラナンキュラスは一度こっちを見たかと思ったら、またツタモンの方へ顔を向ける。
「お前以外にこんなことはやらんよ。」
そんなとんでもない発言をしてから。
「……………へ?」
今、何て?
ラナンキュラスが言ったことが理解できずに間の抜けた声をもらして、呆然としてしまう。
オマエイガイニコンナコトハヤランヨ
頭の中で何度か反芻してみて、漸く意味を理解して……混乱した。
その間にラナンキュラスはツタモンの様子を窺っているみたいだけど、私はそれどころじゃなかった。
―― は?え?今の発言は一体全体どういう意味なのか、いや言葉はきちんと理解できたけどもその言葉にどんな意図があってそんな発言したわけ?な、なんだか私が特別だってニュアンスに聞こえたけど… 。いやいやいや、ラナンキュラスの事だからこっちを揶揄ってるだけだって。でも…… ――
ラナンキュラスの言葉が頭の中でグルグル回っていて、混乱のあまり頭がボーッと熱くなる。
ひどく居たたまれない気分になって、俯いて、いや、それどころじゃないと頭を上げた時、ラナンキュラスの小さな呻き声が聞こえた。
「――くッ!」
「なっ!?」
その直ぐ後でバチンッと何かがちぎれた音が耳に届く。
『――ォおぉアォオッ!!――』
ラナンキュラスによって囚われていたツタモンが大きく身体を震わせながら、ヤツの束縛を破った音だった。
メキメキメキと家鳴りのような音を立ててツタモンの身体が変わっていった。
いや、錯覚かもしれない。
見た目は少しだけ変わったように感じたけど気のせいかもしれない。
見た目の変化なんて大して問題じゃないのだ。
なんて表現したらいいのかはわからない、だが確実に何かが大きく変わったことだけが分かった。
自然と呼吸が荒くなって、冷や汗が出てくる。
寒くもないのに指先が細かく震えてくる。
息苦しい、空気が重い。
「………な…によ…。…コレ………。」
直視していることすら恐ろしく感じる。
なんとか絞り出した言葉はちゃんと声になっていたのだろうか。
「………やれやれ、どうやら暴走したみたいだな。」
普段と変わらない声で呟いたのはラナンキュラスだ。
そもそもの原因はコイツらだけど、情けないけど私は安堵した。
「…光の。」
静かにラナンキュラスに呼ばれ、声を出して応えられなかったけど私はそちらへ顔を向けた。
「力を貸せ。」
「…………え…。」
突然の言葉にさっき程じゃないけど、驚いた私は小さく声をもらした。
≪悪の組織≫の幹部がそんなことを言うなんて予想してなかったからだ。
「こちらとしては壊れた下僕は廃棄しなきゃならない。お前らもコイツを投棄されても困るだろう?」
「…あ……。」
そう、大した問題はないといった風に提案されて私は困惑した。
敵と一緒に戦うなんて正義の味方としていいことなのか?
なんて立派な事ではなく、こんな化け物相手に戦うことが出来るのかと、本当に情けない考えで戸惑ってしまったのだ。
手の震えだってまだ止まってないのに…。
そんな私の迷いや恐怖を見透かしたのか、
「それとも≪正義の味方≫様は足が竦んで動けないか?」
いつも通りの小馬鹿にした態度でこちらを挑発してくるラナンキュラスに。
「――そ、そんなわけ無いでしょ!!」
反射的に応えてしまう私。
ムカつくし、腹立つヤツなのに。
ひどく安心してしまった。
最初に現れた時の青紫色の表面が、黒みを帯びて益々気色の悪い姿に変化していた。
子供が絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたような不気味な色合いだ。
「……益々悪趣味になったわね。」
心にある恐怖を誤魔化すように私は呟く。
「まぁ、否定はしないがな。」
軽く肩を竦めるラナンキュラスに私は常々思っていたことをぶつける。
「悪の結社は何でいつもこんな悪趣味な化け物ばっか造ってんのよ!!」
遭遇したとき、毎回毎回その悪趣味な見た目に軽く引いてしまうのだ。
わりと切実な思いなのだが、
「今度はもっとファンシーなのを造って貰うようにお願いしといてやるさ。」
さらりとラナンキュラスに軽口で流された。
レベルアップしたツタモンの正面に立てば、ラナンキュラスは少し離れた私の右側に立つ。
近くにいるわけではないが、視界の中にいることで一人で立ち向かうわけではない事に心強いと感じる。
―― いやいや、今回だけ、今回だけ。――
あくまでも本来は敵なのだと己に言い聞かせる。
「光の、さっきみたいな考えなしにバカスカ≪異能≫を使うなよ。」
「ウルサイ!分かってる!!」




