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悪花狂乱  作者: 謙作
第一章 暗闇に咲く 悪の華
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華が咲く前



 事の始まりは10年程前。



 世界中に異形のモノが大量に現れた。


 魔物(モンスター)、瘴気、魔族、様々な呼び名を持つソレらは静かに、しかし確実に生きとし生けるものに死を振り撒いた。

 ソレらは物理的な攻撃に強い耐性があり、普通の人間に倒すことは難しく、炎や氷、光や闇など限られた者のみ使用できる『異能』という力を持つものが対抗できる唯一の存在らしい。


 つまり、俺や目の前の光の神子(アレイシア)がそれにあたるわけだ。


 なれば協力しあい、共に戦えばいい話だが、そう出来ない事情がある。



 まず1つ、この世界は異能という存在を一切認めないという事。

 教会が擁する異能持ちは、主神の加護を受けたものとして保護された人間で、異能ではなく《奇蹟》の使い手とされる。

 アレイシアがその立場だ。

 そして教会に保護されなかったはぐれ者(俺たち)は異能者と呼ばれ、異形のモノと同じような存在として迫害される。

 教会も保護する対象に条件があるらしく、少なくとも俺やその周りの面々は彼らのお眼鏡にかなわなかったようだ。


 まぁそんなわけで、あちらもそんな異形のモノ擬きと手は組めないだろうし、こちらも迫害してくれた相手に一緒に戦いましょうと誘いたくもない。


 2つ目に世界状勢だ。

 異形のモノの大量発生からしばらくして、世界各地に問題も発生。

 反乱、お家騒動、国家犯罪、それぞれの国がまともに機能しなくなる時期があった為、同盟関係のあった国もそれに引き摺られ治安悪化。

 教会の《奇蹟の人》たちが各地に引っ張りだこ。

 まるで示し合わせたかのように起きた混乱にそれぞれの国がそれぞれの問題に集中せざるを得なくなり、共闘などと指示できる存在がいないのが現状だ。


 最後にして重要なのが、異形のそいつらの認識に対する問題だ。


 ある学説だが、その異形の存在に対する認識こそが奴らをより強大な存在に変容させてしまう可能性が高いとの事だ。

 それを裏付けするかのように、異形のモノ(ヤツら)が周知されるのと比例して、力がどんどんと強大化してきたのだ。

 

 異形のモノ(ヤツら)の存在が脅威であると人々が認識するから、その力が強大になるのなら、その認識をズラせばいい。

 異形のモノ(ヤツら)が脅威なのではなく、ソレらを操る存在が脅威なのだと。

 そこで異形のモノ擬き(俺たち)に白羽の矢が立ったというわけだ。


 異能持ちと知られれば、迫害かはたまた奴隷として飼われるか、とりあえずまともに人間扱いされることはまずあり得ない。


 自身が少しでも人らしく生きるために悪の結社(公安)に身を委ねた。

 悪の結社の団員(茶番劇の演者)の大半は恐らくそうだろう。


 俺も含めて。


 より異能持ち(俺たち)が世間から差別される原因になるとわかってはいても、悪の組織という仕事を受けざるを得ないのだ。

 


 どっかの異国じゃ『魔道』という概念を広めたという『魔道教会』なんて胡散臭い集まりがあり、そこに入信すれば身の安全が保証されるなんて与太話があるらしいが…。


 ――まぁ、俺には関係はないか――


 所詮、遠いここではない場所の話だ。


 そんなわけで、この国の表舞台で教会の《奇蹟の人》とそれに準じる者が、裏では《異形のモノを操る悪の組織》たる俺たちが、争ってるフリをしながら、異形のモノを倒しているわけだ。


 

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