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悪花狂乱  作者: 謙作
第二章 輝き照らす 正義の光 

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光の神子 アレイシア正義を貫く


 ツタモンの攻撃が来るのを覚悟していたのに一向に攻撃は来ず、何故か至近距離に漆黒の華ラナンキュラスがいる。

 

 「にょわぁぁあっ」


 あまりに予想外な状況に思わず変な悲鳴を上げて、反射的に後ろへ後退った。

 「流石の余裕だな。一人で実に愉快そうだ。」

 鼻で笑うラナンキュラス。


 今、一体どういう状況なのか周囲を見回すと、ツタモンな蔦がやたらと短くなっている。

 ラナンキュラスの方を確認すれば、ヤツは両手で大鎌を握っていた。


 ―― まさか、助けられた……? ――


 「なっ…うっ…あ…あんたっ、一体全体どういうつもり!?」

 動揺しすぎてどもってしまう。

 私を倒すチャンスだったじゃない!

 いや、愉快犯だから、そういうの興味ないのか?

 それでも!助けた理由がわからない!


 ラナンキュラスはこちらに背を向けたまま答えない。

 私は更に問い詰めようとしたが



 『―――ォオオぁあァ―――』


 怒っているのか、ツタモンが叫び出すと、私たちの方に向かってまだ残っていた蔦を振り回してくる。

 私が杖に≪奇跡≫の力を宿す前にラナンキュラスが私を庇うように前に出た。


 「やれやれ『待て』も出来ないのか?」

 揶揄うような物言いをしながら、大鎌をグルグルと器用に回しながら蔦を切り刻んでいく。


 「……すごい。」

 華麗と言ってもいいぐらいにあっさりと細かく切り飛ばしていく。


 つい、見とれてしまったけどハッと我に返る。

 いやいや、敵の武器捌きに感心してる場合じゃないでしょ。

 というか、ラナンキュラス(あんた)も平気で背中向けるな!

 いや、私は背後から攻撃するような卑怯な真似はしないけどね?


 「さてと。」


 そんな色々と葛藤していると、ラナンキュラスは自身の闇の能力でツタモンをグルグルにすると、私の方へ振り返った。


 「………。」

 どういうつもりなのか、何で助けたのか、それは実は(しもべ)じゃないのか、どれから聞けばいいのか分からずにいると、先にあちらが口を開いた。



 「………お前、正義の使者、向いてないんじゃないか?」

 「――――なッ!!!」


 いきなり馬鹿にされた!!


 「……操ってた俺が言うのもなんだが、コイツ雑魚だぞ?こんなの相手に苦戦してる様なヤツが前線に立つなんて…、敵ながらどうかと思うがな。」

 「―――――ッ!!―――――――ッ!!!」


 今度はあまりの怒りに言葉が出ない。

 ぶん殴りたいけど、ホントにぶん殴りたいけど!!

 でも、まだツタモンも生きてるし、ラナンキュラスも何をするつもりかわからない。

 カッとならずに冷静に振る舞わなきゃ…。

 

 私は懸命に平静を装う。

 腕は怒りで殴りかからないようにするのがやっとで、ブンブン揺れてるけども。



 とりあえず、なんのつもりなのかから問い詰めてやろうと、ブンブン揺れてた腕を止め、杖を突き付けてやろうとすると、ラナンキュラスの様子が変わった気がした。


 沈黙して静かにこちらを見ているようで、見ていないような、なにか、別の事に気をとられてるような……。


 「……ちょ……」

 「……なぁ、光の。お前は何で教会なんかに与してるんだ?」

 声をかけようとしたら被せ気味にラナンキュラスが私に問いかけてくる。


 「…え?」

 質問するのは私の方だと思ったけど、なんの脈略もない問いかけに戸惑ってしまう。

 そんな私に構わずラナンキュラスは畳み掛けるように言葉を重ねていく。


 「気がつかないか?お前みたいな戦い方も知らない素人を≪光の神子≫なんて仰々しい二つ名を与えて、正義の味方様に祭り上げて、利用してるだけだと。」

 酷く冷たい、温度を感じさせない声に。

 「そんなわけ――ッ!!」

 「ないとでも?」

 反射的に否定をしたが、再び遮られる。


 いつもの人を小馬鹿にした雰囲気なんてまるでない。

 教会に対しての強い嫌悪感が溢れ出ている。


 「そういえば貴族連中にも≪奇蹟≫を持つ奴はいる筈だろう?そいつらはどうした?」

 

 確かに≪奇跡の人≫の中には貴族の人もいるにはいる。

 ただ現場で戦いに出ているのは、ほとんどが下位の貴族の人だと聞いた。

 サージェスさんたちもはっきりとは言わなかったけど、上級貴族たちが危険な現場に出ることなく、安全な場所で守られてる事は匂わせていた。


 答えられずにいる私を見て、顔の半分近くが隠れているのに、ラナンキュラスが嘲笑してるのがわかった。


 「特権階級の素晴らしい事だ。お前もそんな奴らのために媚びへつらい、身体を張って頑張っているのか?」


 嘲り、蔑み、軽蔑、そんな感情をまぜこぜにした悪意が私へ向けられる。

 ヤツの後ろにいるツタモンも同意しているかのように黒いオーラを纏っていた。

 一瞬怯みそうになったけど、でも。


 ―― 私はそんなののために戦ってなんかないのに ――

 そう心で反論した。

 そうだ、私は別にそんな下らない奴らの為に≪奇跡の人≫をやってるんじゃない!

 現場に出てこない上級貴族様(腰抜け共)なんて私には関係ない!!


 「――バカにしないで!!」


 怒鳴りながら、私は杖を振るった。

 私の感情に応えてか、光の塊が生まれラナンキュラスの方に飛んでいく。

 ヤツの操る能力が軽々と弾いていくがそんなの構わない。


 「お貴族様なんてどーでもいいのよッ!!教会にいるのだってケーケンな信者だからじゃない!!」


 怒りのままに光の弾を投げつけていく。


 「あたしはあたしの大切な友達とか店のみんなとか、そういう人たちを守りたいから≪正義の味方≫やってんのよ!!」


 そう、私は怒っているんだ。


 「利用されてる?ハッ、上等よ!!そんな卑劣な人たちだったらこっちだって利用するだけだし!そんなんで皆を守れる力を手に入れられるなら望むとこよ!」


 ―― 自分の正義(戦う理由)を疑われて ――



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