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悪花狂乱  作者: 謙作
第二章 輝き照らす 正義の光 

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漆黒の華 ラナンキュラス現る


 あの日、教会からのお告げで悪の組織が辺境の荒野に現れると聞いた私は脇目もふらず駆け付けた。




 云われた場所の小高い丘にポツンと一人の男が立っている。

 暗いマントに、フードを目深に被り、特徴的な目だけ隠すような白地のマスクを着けている。


 ―― 漆黒の華、ラナンキュラスだ! ――


 悪の組織の幹部の一人で、名前の通り闇の≪異能≫を使う男だ。

 何度か遭遇したことがあり、人を小馬鹿にして、性格がとても悪い!

 初対面の時だって、「光の神子?随分御大層な二つ名だな。黄色のヒヨコと間違ってないか?」などと失礼なことをのたまったのだ!


 「そこまでよッ!!」

 声を張り上げ、指を指し、ジロリと睨み上げてやると、ラナンキュラスはやれやれといった雰囲気を見せた後に、

 「これはこれは、誰かと思えば正義の使者様。随分お早いご登場。」

 なんだか気取った風に礼をしてきた。

 妙に様になってて無性に腹立たしい。


 更に余裕ぶって、ゆったりと周りを見渡し、

 「おやおや、貴女様の活躍を求める観客(愚民共)はここにはいませんが…。」

 小馬鹿にしたように馬鹿丁寧に振る舞う。


 「その嫌味ったらしい口調をやめろーッ!!」

 怒りのあまり指した指をブンブン振ってしまう。

 その私の仕草を見たからか、肩を竦めて、呆れた風にため息をついた様に見えた。

 実際にため息をついたかは分かんないけど、なんかそんなムカつく仕草をした様に感じた。


 「やれやれ…。こんな、荒野にまで来て人の仕事の邪魔しに来るとはな。正義の使者とは随分暇なんだな。」

 「暇だから来るわけないでしょッ!」

 ラナンキュラスはいつもの口調に戻しながら、また肩を竦める。


 「こんな人気のない場所で、今度は一体なにを企んでるの!?≪漆黒の華≫!!」

 二つ名を呼んで問い詰めるも無言でこちらを見返し薄く笑うだけ。

 まるで、わかってるだろう?と云わんばかりだ。


 私は(ワンド)を構えて周囲を警戒する。

 無論、ラナンキュラスへの警戒も怠らない。

 今まで何度か対峙したけど、私は直接ラナンキュラスと戦ったことはない。

 いつもコイツが従える≪魔のモノ≫を相手にするだけで、ソレを倒せばコイツはすぐに立ち去ってしまうからだ。


 ≪魔のモノ≫がいなくちゃ何も出来ないんじゃないかって前にサージェスさんに云ってみたんだけど、ラナンキュラスは愉快犯的な奴だからそこまで熱心に活動する事は少ないって教えてくれた。


 そんな奴らに私の故郷はボロボロにされたのだ。

 町は失くなってしまった訳ではないけど、半壊してしまった。

 両親は無事だったけど店は潰されたし、店で働いてくれてたアンも捻挫してしまった。

 ……≪魔のモノ≫に吹っ飛ばされて壁が壊れる位に壁に叩き付けられたのに捻挫だけで済んだって、ちょっと考えたら頑丈すぎるけど……怪我したことはしたし………。


 とにかくっ!こいつらは倒さなきゃいけない悪人なんだ!!


 キッと睨み付ければラナンキュラスが腕をを動かす。

 来ると思ってドキッとしたけど、フェイントをかける事もあるんだから動きに惑わされたらいけない。


 以前に≪幻惑の霧≫ネビュアが≪魔のモノ≫を呼び出す仕草をしたものの現れず。

 待っても来ない≪魔のモノ≫に高まった緊張が薄れたその瞬間に≪魔のモノ≫が現れたのだ。

 大笑いをしてこちらを見下すネビュアにその時現場にいた≪奇跡の人≫たちは、その悪辣さに怒りを覚えたという。


 ラナンキュラスな腕が合図を示すかのように上へと上がった。

 私はラナンキュラスの方へ顔を向けたまま視線を周囲へ巡らす。


 その瞬間 ――――――――

 



 『―ゥオぁオオぉォ――――』



 私とラナンキュラスの丁度中間辺り。


 青と紫が入り交じった色味の樹木っぽいナニかが地面から奇声を上げながら現れた。

 「うぇぇ~。」

 口から思わず声が出ちゃった。

 私より頭1、2個分は高い大きい樹木みたいなソレ。

 幹の割れ目から目玉が幾つもギョロりと動いている。

 蔦っぽい?なんか触手が本体から枝分かれして、ぐにょぐにょと蠢いて寒気がする。


 見た目が気持ち悪いのもそうなんだけど、なんか生理的に受け付けない存在感があった。


 「………随分と悪趣味な魔物モンスターね。気持ち悪い。」


 吐き捨てるように呟いてやる。

 いかにも悪の組織の使う化け物って感じで、本当に気持ち悪い。


 まぁ、ラナンキュラスが同意してくれるわけもなかったけど。


 ラナンキュラスが背中に隠し持ってたのか、いつもの大鎌を手にしてくるくると何度か回した後に、ヒタリと構えた。 


 「さぁ、演舞劇を始めようか――」


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