恋の戦士? グラナト現る
「……おいおい、どうした?黙りこくって。そんなに深刻なのか?」
「あ、いや、違くて…。」
サージェスさんが心配そうにこちらを覗きこんできたので慌てて否定する。
「前の事を少し思い出してただけ。」
そう告げれば、「ああ」と納得したような顔をするサージェスさん。
「そういえば、漆黒の華とやりあったんだっけか。まぁ、奴はなかなか腕がたつからな。追い払っただけでも大したもんだ。」
「!」
ビシリ。
不意にあの男が話題に出たから思わず固まってしまう。
「……いや、ホントにどうした。」
少し呆れた風な声音になったサージェスさんになんと云おうか迷っていると、
「ロマンスの香りがする。」
「わひょあっ!」
気づかない間に背後をとられていた。
「グラナト、お前が戻ってるとは珍しいな。」
サージェスさんが云う通り、確かに後ろにはグラナトさんが立っている。
「確か、君、アレイシアだったよね。」
私の顔を興味深く覗き込み、
「うん、何と云うか君からロマンスの香りを感じるんだ。」
そのまま、まるっとサージェスさんを無視して、そう微笑みをこちらに向けてくるグラナトさんに私はなんと返答すべきかわからず戸惑ってしまう。
長身で細身、緑色の瞳で青みがかった灰色の肩より伸びた髪を後ろにゆるく括っている、中性的な美人さんだ。
ここを担当する≪奇跡の人≫達は皆忙しいらしく、あまり話したことがなかったが。
「戻って早々何だ、お前は。」
「年がら年中冬将軍は黙ってて、君には縁の無い話だから。きっと彼女は恋に悩んでいるのさ。さあ、この、人の恋バナを聞く為に戦う恋の戦士グラナトに話してごらんよ。」
しかめっ面のサージェスさんの文句を軽く流して、私につめよってくるグラナトさん。
―― 冬将軍って、サージェスさんの≪奇跡≫は確か紅蓮の炎って話だったと思うんだけど。…いや、人の恋バナを聞くために戦う恋の戦士って何?…… ――
なんか色々ツッコミたいのに、どこからどうすべきかわからない!
サージェスさんもいつもの事だと思ってるのか、ジト目で見てるだけだし。
今まで軽い自己紹介や挨拶だけでしっかり関わったことなかったけど、こんなヘンな人なんだグラナトさんって。
もっと知的クールって感じの人なんだと思ってたんだけど、と内心少しガッカリしてしまった。
「さっきの話、漆黒の華が話題に出たよね?ハッ!もしや漆黒の華がお相手?正義と悪、決して相容れない二人がそんな…。でもそれはそれでアリ?最近話題になった舞台の話っぽくていいなぁ。…あぁでも、そうしたら悲恋に終わっちゃうよな、うーん、私的にはハッピーエンドが好みなんだけど……いやそういう形もさ、嫌いじゃないけどね。」
……いや、少しどころか大いにガッカリだ。
て言うか、
「別に漆黒の華とか、そんなんないしッ!!」
とりあえずそれだけは激しく主張しとく。




