光の神子 アレイシア生まれる
≪光の神子≫アレイシアのお話です。
漆黒の華と対峙し、共闘、対話を経て、一つの疑問を抱え悩むことに。
「……はぁ。」
聖フォルソーン教会が管理する建物のチェスコバローン聖堂の一室。
談話室のテーブルの上の花瓶に生けてある黄色いラナンキュラスを手に取りながら私はため息をつく。
「おいおいアレイシア。花を手に取りため息一つって、何かの劇の真似か?」
「うひゅッ!!」
唐突に背後から名前を呼ばれ思わず変な声が出てしまった。
慌てて振り返ると見慣れた大柄の男の人が立っていた。
「サージェスさん!脅かさないでよ!!」
「何を言ってる。忍び足で近づいてたわけでもないのに、そんな事を言われる筋合いはないぞ。」
ムッと不機嫌そうで言われ、確かにその通りだと謝罪する。
サージェス・アビーク、23歳。
赤みがかった茶髪、茶色の瞳、私よりも頭一つ少し高く体格はガッシリとした、いかにも戦士って感じの男性。
≪奇跡の人≫と呼ばれる神官戦士の中堅所の立場の人で、私みたいな新米の指導役の人だ。
「どうした。何か悩み事か?」
軽く首をかしげ問いかけてくるサージェスさんをキッカケに私はここに来ることになった時の事を思い出していた。
私が教会に≪奇跡の人≫として見出だされたのは半年経ってない位の事だった。
私は家の仕事、町の食堂の手伝いをしていた。
このチェスコバローンみたいな大きな街ではなく、もう少し小さな町なのだけれど大都市と隣国を繋ぐ街道沿いにあるためそれなりに栄えている。
そんな私の故郷、カラクスの町が突如≪悪の結社≫が従える≪魔のモノに≫襲われたのだ。
それは正しく悪夢の様だった。
町に常駐している兵隊さんが必死に武器を振るっているのに、まるで効いていなくて次々と弾き飛ばされていた。
逃げまどう町の人たち、壊されていく建物、当然ながら当時の私はただの町人だったので、慌てて両親や店の皆と逃げようとした。
そんな私たちに教会の云う≪魔のモノ≫、化け物が襲いかかってきたのだ。
悲鳴を上げる店で働いてた女の子が吹っ飛ばされ、それを見て腰を抜かしてしまったお母さん。
そんなお母さんを慌ててお父さんが引っ張り逃げようとすると化け物は二人の方へと狙いを定めた。
二人に飛びかかろうとする化け物に、私は「やめてーッ!!」とか「いやあぁーッ!!」とか、そんな感じの言葉を叫んだ時、それは起きた。
胸の辺りが熱くなったと思ったら、目の前が真っ白に眩しく光って、自分の中の何かが爆発した。
そして、意識がなくなって、気がついたらカラクスの教会のベッドの上で、教会の神父さんと一人の男の人が近くにいた。
「目が覚めたかね。」
起き上がった私に気づいた神父さんと、一緒にいた男の人が気を失ってしまった後の事を教えてくれた。
私に≪奇跡の力≫が現れたこと、その力で化け物を倒したこと、そして―――。
「きせきのひと?」
「そう。今、この国は未曾有の危機に晒されているのだ。先程の様な≪魔のモノ≫を遣い、その支配下に置こうと企む悪の組織と対峙して欲しいのだ。正義の味方≪奇跡の人≫の一人として。」
神父さんと一緒にいた人もまた≪奇跡の人≫で、この町にもその悪の組織が放った化け物、≪魔のモノ≫が出現したと連絡があって駆けつけた。
そこで私が力に目覚める瞬間に立ち会ったらしい。
そうして、私は≪奇跡の人≫として、このチェスコバローン聖堂で正義の味方として戦うことになったのだ。




