悪の華
初めて投稿させて貰います。
少しでも楽しんで頂けましたらこれ幸いです。
「そこまでよッ!!」
人里離れた荒野に高らかに響く声。
岩肌の小高い丘からゆるりと下へと視線を向ければ、意思の強そうな瞳でこちらを睨み付ける白を基調とした衣装を纏った少女の姿。
俺の纏う黒いフード付きのマントと見事に相対している。
明確に敵意を向ける少女に対し、俺は舞台役者のように恭しく礼をしてみせる。
「これはこれは、誰かと思えば正義の使者様。随分お早いご登場。」
余裕綽々を装いながら、周りを見渡し、
「おやおや、貴女様の活躍を求める観客はここにはいませんが…。」
わざとらしい程慇懃に振る舞って見せる。
少々慇懃無礼が過ぎたか、少女は激怒し、指でこちらを指してがなり立てる。
「人を目立ちたがりみたいに言うなッ!!」
その嫌味ったらしい口調を止めろとブンブン指した指と一緒に、一つに結った明るめの茶髪も大きく揺れている。
――子どもか――
呆れてため息を小さくついた。
白い仮面越しでは伝わったかはわからないが。
「やれやれ…。こんな、荒野にまで来て人の仕事の邪魔しに来るとはな。正義の使者とは随分暇なんだな。」
「暇だから来るわけないでしょッ!」
肩を竦めていつも通りの口調に戻してみたが相手の機嫌は悪いままだ。
こちらを睨み付けたまま、指した指を下ろし、杖を構える。
「こんな人気のない場所で、今度は一体なにを企んでるの!?≪漆黒の華≫!!」
俺の二つ名を呼びながら詰問をする正義の使者、アレイシアに俺は薄い笑みを返し、心の中で返答した。
―― だから、仕事だ ――
―― 国防の ――
誤字脱字、その他諸々ご指摘ありましたらソッとお教え頂けたらソッと手直しするかもしれぬ所存です。