表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

妹が三人になりました。おまけに僕たち神達だそうです。

作者: 矢斗刃

それはいつもの朝だった。


僕(篝火拓斗)はいつものようにアラームの音で朝起きた。

そして寝ぼけ目で学生服に着替える。

いつもの光景だ。

姿見を見て、いつものように寝癖があるなと思ってもう直すのめんどくなって、それを諦めた。


ため息をつく。いつもの光景だ。


うん?と一瞬部屋の一部が歪んだ。

女の子がいたような気がして、そちらを見たが気のせいだったようだ。


目を擦る。


うん、見間違えのようだ。

いつものように部屋を出た。


「行ったか。」と呟いた誰かの声を僕は聞いてなかった。



居間に行けば、お父さんが新聞を広げ読んでいる。声をかけてくる。


「拓斗、おはよう。」

そう声をかけてきた。いつものイケメンの父さんだった。


「拓斗ちゃんもう少し待っててね。」

と声をかけてきたのはフライパンを片手にこちらにやってくる母だ。

へらで上手に僕の皿に目玉焼きを乗せてくる。美人の母である。


なんでこんなイケメン、美人の親から僕が生まれたのかわからない。


「そう言えば希来里は?」と疑問に思って聞く?希来里とは家の妹だ。


美人で皆の人気者。

クラスメートの友達が言うには容姿端麗、完璧超人らしいが家では怠け者だ。


「なんだ聞いてないのか?」と驚く父。

「うん?」と疑問に思って聞く。

「春休みでバレー部の合宿だって、友達と行くらしいぞ。」と答える父。

「昨日、今日まで合宿でやっと帰ってくるみたいよ。。」と言ってくる母。


「はっ?この間もそんなこと言ってなかったか?確かバスケ部の合宿とか?」僕はあきれてしまった。

「そうだったかしら?」首を傾げる母。

「うむ、そうだった。あまりあっちこっち部活を掛け持ちしないように言った方がいいかもしれないな。」と父親が言う。


「案外、彼氏ができたんじゃない?」と行った瞬間。父がすごい目で睨んでくる。


「許さん、許さんぞ父さんは!」と貧乏ゆすりをしながら立ち上がる。

心なしか家が揺れているような。


「もう、余計なこと言っちゃいけません。お父さん希来里の事になったら、見境ないんだから・・・」新聞をびりびりに破いていた父。

まだ心なしか家が揺れている。


そんな中でも僕はご飯を食べていく。

家ではたまにあるのだ。こういうことが、希来里がラブレターをもらって帰ってきた日も家が揺れていた。


そのラブレターを書いた本人は次の日、顔が腫れて学校に通って来ていた。

何があったのか?聞いたが本人は恐がって答えがらなかったらしい。

まさか父が関わってはいないだろう。

希来里には親衛隊なるファンクラブがあるから、そいつ等じゃないだろうか?


なんか考えたら恐くなってきた。


「おお、星宮ちゃん今日も可愛いな。」と妹ショックから戻ってきた親父が呟いている。

朝テレビに出ているのはアイドルグループのメンバーらしい。


「はは。」と苦笑いをしている母。

僕はそんなアイドルのことに興味がない。

テレビを見ずにご飯を食べ終わった。


「じゃあ、行ってくる。」と立ち上がって鞄を持つ僕。


「ああ、補習頑張ってね。」と言った母。

「おう、さっさと行ってこい。」とテレビを見ながら言う父。

そんな父の頭に鉢巻と法被とペンライトがいつの間にか握られている。


「ああ、親父もほどほどにな。」と言って玄関に向かう。

「はー可愛い幼馴染でもできないかな?」とか玄関を出るときにちょっと思った。



いつものように電車に乗って学校に通う。


そういつもの光景だ。


なんだろうかこの灰色のようなコントラストで出来た世界は、僕は退屈なんだろうか?

と、たまに電車を降りないでこのままどこかに行ってしまいたくなる。


いやそんなことはできない。

と頭をふるふると振って、こちら側の世界に戻ってきた。


僕は今、学校に向かう並木道を歩いている。


そこに豪華そうな車に乗ったお嬢様が現れる。

どこかの有名な会社の娘さんらしい。

正直こんな学校に来る人じゃないのに・・・


執事が頭を下げ送り出した。

いつもならお嬢様が校舎に入るまで見送っている。

しかし今日はその執事が声をかけてくる。


「これはこれはたしか、クラスメイトの篝火様。」

「え、はい。えーとなんでしょう?」とじっくり上から下まで見られる。


「いえ、いつも父上のとおる様にはお世話になっておりますので。」

「そうなんですか?父はあまり仕事のことは家で話さないので・・・」と首を傾ける。

「ほぉーそうなのですか?」と感心した声をあげる。

「では、あの話はまだ?」

「あの話?」と僕は返す。


「いえ、私が言うことではありませんでしたね。それでは失礼いたします。拓斗様。」と不審なこと言う。

「?」とそういえばなんで彼女(高川 愛)はスーツで登校してきたんだろう?

「まぁいっか。」と呟き教室に向かう。



補習の教室にやってきた。

うん?とそこにはばったりしている男がいる。

金髪で高身長。おまけにイケメン。僕とは正反対だ。

なぜ北斗 勇一は机でぐったりしているんだろう。


「おはよう勇一。」と僕は挨拶する。

「おおー心の友、拓斗。聞いてくれよ。」と急に抱きついてくる。

「あのえーと。ちょっと。」と周りにいる人に助けを求める。

皆関わり合いになりたくなさそうだな。

そう勇一は実は不良なのだ。


「ど、どうしたの?」と仕方なく聞く。

「拓斗、よく聞いてくれたな。ここ数日俺は学校を休んでいたんだ。」

「ああ、そうだよね。見なかったもんね。」と優しく聞き返す。


前に不良に絡まれボコボコにしたことで停学を食らった僕と勇一、主に勇一がやったんだけどなー。と勇一とはそれからの縁だ。

おかげでテスト期間中に停学を食らった僕たちは今ここで補習を受けている。


「進級ヤバいんじゃない?」と僕は聞き返した。

「ああ、ヤバかった。だから学園長に直談判してきて、残りの補習と出来なかった分の補習もやってくれるって、ただしもう休めねぇー。」と勇一は言った。

「そ、それは良かったね。」僕は笑顔で言う。


「そう言えばなんで休んだの?」と僕は真面目に聞いた。

「おお、そうだ。あれはとんでもなかったんだ。妙にリアルな夢だったんだ。」

「な、何のこと?」と少し興味を持って聞いた。


「ああ、俺は起きたら知らない世界に居たんだ。そして変な王様に剣と武器を持って魔王を倒して欲しいと言われたんだ。」


「ああー。」と変な顔で勇一を見た。


「疑っているな。だから夢だと言っている。なんせ1週間近くも寝続けてしまったんだからな。」


「え、1週間も?」と驚く僕。


「ああ、医者に見せたが、なんか寝ているだけでしょうとか言って、追い返されたらしい。救急車まで何回も使ったらしいのにな。きっと皆やぶ医者だったのだろう。」と心外そうな顔をした。


「ああ話を続けるぞ、まぁなんだかんだと色々やりながら、む、聞きたいか?呪いにかかったお姫様を元に戻して助けたり、魔王軍に囚われた人魚を海に返したり、魔王軍の四天王に追いかけられなんとか返り討ちして、それを討ち滅ぼし、ああ、一人仲間にしたな。」と一気に喋り出す。


「へー。」と疑いの目で見てくる。


「ああ、それだけで何年に及ぶ戦いの日々だ。そしていよいよ魔王城に挑みに行ったのだ。」と拳を熱く握る。



「おおー。」と感動している僕。なんか補習の皆も注目してくる。


「魔王は大きな黒いドラゴンだった。俺は寝ているそのドラゴンに近づき、急所の目に聖剣を突き刺した。そして暴れる黒いドラゴンの反対側の目に魔剣を突きつける。これで奴はもはや目が見えぬ的!」聞いている皆がちょっと引いている。

いつの間にか机の上に立って演説し出す勇一。


「あ、あのちょっと卑怯じゃないかな?」と僕は思い切って聞いてみた。

「俺もそう思っていたのだ。だがある言葉を聞いて考えが変わった。」

皆が再び、勇一を見る。


「姫様が勝てば正義なのです!と力強く俺を説得してきたのだ。俺はその言葉を聞いて真理だと思った。喧嘩でも負ければ何をされるかわかったものじゃない。」と勇一は言う。


「そ、そうだね。」と僕の顔は引きつった。


「そのまま目が見えなくなったドラゴンの羽をもぎ取り。あーあ姫様が加工して使うと言っていたな。」とうんうんと頷いている。


まさか勇一、姫様に洗脳されたりしてないよな?とか驚いている。


「だが、そんなドラゴンの魔王を俺は拳を交え、分かり合った。」と拳を握りしめた。

「え、わ、分かり合ったの?」と驚く僕。


「ああ、喧嘩して友達になるだろうあれだ。」と僕を見てきた。

「ああ、男の友情だね。」

「そう、俺とお前の事だ。」とキラキラした目で見てくる。


「いや、それはない。勇一と僕は普通に仲良くなったよ。」とすげなく答える。

「む、そうだったか?夢の世界が長くてな、忘れてしまったかもしれない。」と考えるそぶりをする。


「それでどうやって戻ってきたの?」僕は疑問に思ったことを聞いた。


「ああ、俺たちは分かり合った。目から聖剣と魔剣を回収した。だがそれに納得しない愚かな者がいたのだ。」


「ゴクッとのどが鳴る。」これはあれだ。ラスボスだ。


「それは姫様だった。」と苦い顔をする勇一。


「「「はっ?」」」と聞いていたみんなが言った。


「姫様は邪神の手先だったのだ。今思えば、旅の最中胸を抑えたり、苦しんでいた。恐らく邪神に操られて抗おうとしていたのかもしれない。しかしそれも限界を迎える。魔王の命をささげることでこの世に邪神を召喚しようともくろんでいたのだ。」


「おおー。」と声をあげる皆。


「それに気づいた俺たちは、姫様を止めるべく。祭壇が安置されている塔のてっぺんに向かった。あれは目と羽を回復したドラゴンに乗って向かったな。と懐かしがる。」遠い目をしている勇一。少し涙を流している。


「おおう何があったんだ。」と訝しがる皆。


「そこで俺達は姫様を倒した。しかしその姫様の命と引き換えに邪神は復活したのだ!」


〝ねぇ、今度会えたら、恋人にしてくれますか〟と言った女のことを思い出していた勇一だった。悲しくなった。あの姫様は操られていただけなのだ。


「そのあとはそのあとは!」と補習クラスの皆が聞きに来る。あれ先生まで聞いているよ。


「そのあと俺とドラゴンはその邪神に勝負を挑んだ。勝負は一進一退の攻防を繰り返し、奴の胸を聖剣が貫いたのだ。」


「おおー。」と教室の皆が感動している。


「しかし邪神の奴、何をとち狂ったのか最後の力をふり絞って、その世界を吹き飛ばした。」


「え、えええええ。」


「最後に魔王が、お前との旅は楽しかった。また一緒に旅がしたい。」と言って、己の最後の力をふり絞って俺をこの世界に戻してくれたんだ。と泣き出す。勇一。


「おおう。」と皆がそんな勇一を見て感動している。

「うんうん。」と先生が頷いていた。先生授業は?


「そして俺はこの世界に帰ってきた。向こうの7年はこっちではわずか7日のことだった。まるでリアルにあったことのように思えてならない。寝ていて夢から覚めたのだ。そんなはずはないのにな。」と言った親友勇一。


皆の思いが一つになった。


「北斗ーーー俺達友達だからな!」

「そうだそうだ。」

「うんうん」

「辛かったんだね!」と補習クラスの皆が言っている。


「おおうそうか。」と人間誰とも分かり合うものだな。と感心している。

机から降りた勇一。


「さぁ先生授業をしましょう。」と先生に僕は言った。

「ええ、ええそうね。」と先生は名残惜しそうに時計を。


「は、えもう時間ないじゃん、ないじゃん!」と叫んで急ぎ足に授業を始めた。


僕は授業中、ノートも取らずに外を見ている。

春休み元気に部活をしている人たち、桜の花も咲いてきている。

出会いと別れの季節。


このまま変わらず。退屈な日々、平穏な日々。

それがいいはずなのに、それが当たり前のはずなのに、勇一が言っていた話を聞いてなんでそれが僕じゃないんだと思ってしまう僕がいる。


「夢の事なのにな。」と呟くと現実が襲ってくる。


バンと頭を教科書で叩かれる。

「なにが夢のことなのにな。ですか授業中ですよ。もう少し集中してください。」と下手な僕のものまねをしてくる女教師?女の子教師だ。

「何か失礼なこと、考えてますね?では拓斗君問題です。ジャジャン。」と言って。

難しい問題を焼うどん詰め合わせスペシャルの箱に乗って書き出す。


いつも思うがあの箱はなんなんだ?


「では解いてみてください。」そんな数学の問題。簡単だった。

ぱっぱとチョークが動いている。

「おおう、すげーなんで補習受けてんの?」とか言う声が聞こえる。


「せ、正解。」といつもみたいに驚いている先生。


「拓斗君はやればできる子なのです。もっと真剣に授業を聞くように・・・」と言う声が聞こえる。

いつもの説教だ。悪くはない。心配される事は悪くはないのだ。


「うん?」とよく空を見る。爆発のイメージが流れ込んでくる。

えっと、何か感じた気がしたが気のせいか?


僕は聞いても仕方ない授業を聞きながら、出席日数を稼ぐためにちゃんと着席して、今日も窓の外をずっと見続けている。


「拓斗?どっか寄って帰るか?」と聞いてくる勇一。

「いや、今日は文芸部に寄っていく。」と答える。


「はっ?お前・・・部活入っていたのか?今までそんなこと聞いてないぞ!よし俺と一緒に天下を取ろう。スポーツで!」と言ってくる。

「ごめん、僕スポーツはしないことにしているんだ。」と残念そうに言う。


「そうなのか?もったいない。お前とならどんな事でも天下を取れそうなのにな。」と勇一は言ってくる。


「文芸部で天下取る?」と聞く。


「いや、無理だろうな俺は身体を動かす方が向いているからな。まぁ気が向いたらまたゲーセンで対戦しようぜ!」と言ってくる。


「ああ、気が向いたらな。」と答えておいた。


文芸部の部室は図書館だ。その奥にある部屋を使わせてもらっている。

今日はあの人が来ていたから活動日のはずだ。

何冊か新刊と図鑑を取って、僕は息を整え文芸部の部室を開けた。


「こんにちは拓斗。」と文庫本から頭をあげる学生服を着た部長が声をかけてくる。


窓から風が吹き抜ける。黒い髪が揺れた。

そこには高川 愛がいた。


「まだいたんですね。」

「ええ。」と返事をする。


今日はなんだか機嫌が悪い?いや戸惑っているのかな?

一年の時から一緒の部活だったからある程度は仲良くなった。

そうある程度だ。決して恋人とかではない。


学年一、二の人気を誇る美女で完璧超人、容姿端麗。

どこかで聞いたような話だ。まるで家の妹のようだ。


あいつ、合宿で今何しているんだろうか?もう帰りついたかな?と疑問に思う。


僕は適当に新刊の本をパラパラとめくる。

「ふーん。」と思いながら、パラパラと読み終わった本を右から左に置いていく。


「相変わらず何なのかしら、その読み方は?」と疑問を呈している高川。

「うん?読書ってこんな感じでしょ?」と答える。


「人により読み方が異なるけど、貴方のは異常よ!」と文句をつける。

「仕方ないでしょう。じっくり読もうと思ってもね。なんか話が最初の方でわかっちゃって最後の方まで流し読みして答え合わせ。そう言う読み方しか出来ないんだ。」


「あなた・・・」と言って立ち上がる高川。

「くっ、いえなんでもないわ。」と言って着席する高川。

「まぁそう言っても図鑑とか、そう言うのはしっかり読まないと頭にはいってこないからね。」と言って。片手に図鑑を開いて、見ていく。

時間が経った。もう18時だ。

「そろそろ帰りましょう。」と高川に声を掛ける僕。

スマホを確認しようとして電源が落ちていた。

電池切れか?昨日充電してなかったからな。と後悔した。

「そうね。」一緒になって片付けをして部屋のドアを閉めた。


僕たちの間にあまり言葉はない。

それがいつものことだ。

そして今日もいつものように校門まで来た。

そしていつものように駅まで歩く?


「うん?」と後ろを振り向けば、高川さんが付いて来ている?

「今日は執事の方は迎えに来られないんですか?」と僕は思わず聞いた。


「ええ、今日は用事があるみたいなの。」と答える。

「ふーん。」とまぁたまにはお嬢様も車では帰らないよね?とか思っていると駅に来た。


「高川さんも電車なんですね?」と思わず聞いてしまった。

「ええ、そうなの。」と答える。

ピッとやって改札口を僕は通った。

お嬢様は通ろうとして改札口がブーブーと言っている。

「え、何これ、何なの?敵、敵なの?」とか声を出している。

お嬢様の手には一応、電子カードが握られている。


「はー。」とため息を付く。

「高川さんこっちの改札口の所当てる所があるから、当ててみて。」と僕はそう言うジェスチャーをした。

「ピッ」という音がして中に入ってくる高川さん。


「高川さんでも知らないことってあるんだね。」と僕は努めて笑顔で言った。

「私だって知らないことや、出来ないことがあります。」と赤い顔で言ってきた。


多少ときめいてしまったのは言わないでおこう。

一緒に同じホームに向かう。


「知らなったよ。高川さんって同じ方向なんだね。」と聞いた。

「そ、そうなの。初めてだから、迷いそうなのよ。」と慌てながら答える。


一緒に電車に乗って、一緒に電車を降りた。

「へぇー。同じ駅だったんだね。」と僕は返した。

「うん。」と俯きながら答える。


一緒の方向に歩き出す。

僕の後ろを歩いてくる高川さん。

一体、全体どういうこと!って僕の心の中で、叫びまくっている。


これってもしかして、まさか!世の中で言われるス、ストーカー?!


僕の顔からは汗がだらだらと出ているに違いない。

もし僕の家まで来たら、電話して助けを呼ぼう。

父さんや母さんがいるかもしれない助けてもらおう。


僕は高川さんに戦々恐々しながら、家の前まで来てしまった。


家に明かりはなく。誰もいないようだ。

普段なら母さんがいるはずなのに・・・と恐い顔で後ろを振り返る。


なんだか知らないけど顔を赤らめている高川さん。


「僕んっちここだから、そ、それじゃ。」と言って、鞄から鍵を取り出し、家のドアの鍵穴にさそうとした。でも、中々入らない。

「入れてあげましょうか。」と言ってくる高川さん。


「ひぃぃぃー。」と声にならない叫びを僕は珍しくあげていた。


その時やっと入った。

僕はホッとして玄関のドアを開け中に入って、早業で鍵を閉めた。


「ふーっ」とため息を吐く。


しかしピンポーンと言う間抜けな音がなった。

「ひぃーーーー。」と再び声を出す。

ス、スマホは電池切れ!


問題は何も解決していなかった。


「ピンポーーン。」と迫りくる脅威。諦めるのを待つ。


どうやら鳴りやんだようだ。

しかし、カチャと言う音がして鍵が開いた。


「ひぃーー。」たぶん今までで一番恐い思いをしている。

たまに幽霊っぽい人をお辞儀して乗り越えた事はあったが、ここまで恐怖したことはない。


「あ、開いた。」と言う声がする僕は逃げて、部屋の居間に急ぐ。

「な、なんで鍵が!」と僕は叫ばずにはいられない。


まさかこの時のために、色々準備していたのか?と驚愕している僕。


電話機の前まで来た。

僕は受話器を取り番号を打とうとして、紙が貼ってあるのに気付く。


ボタンを押そうとして肩を叩かれた。

恐る恐る振り返れば、そこにはぶすっとした高川さんがいる。


「ひぃーーーーっ」と言う言葉を僕はあげていた。

恐らく隣近所まで聞こえていたかもしれない。


「ス、ストーカーーー。」とまたしても大声を出す僕。


「誰がストーカーよ。」と抗議をあげる高川さん。

「あ、あなたですうぅー。」と僕は声を張り上げた。


「え、あれストーカーじゃない?」と、ならまさか。


「ご、強盗!!」

「強盗でもないわよ。」と腕を前で組んでますます不機嫌になる。


「なら、一体なんなんですか。」と僕は聞いた。

「そ、それは・・・ゴニョゴニョ。」真っ赤になって言っているが最後の部分が聞こえない。

「そ、それは?」と思わず聞き返す。


「だ、だから、妹だって言っているでしょ。」と決意したように大声で言った。


「えっ、はっ?」と僕は戸惑う。


「だから、い、妹だって言っているの!」


「・・・」と固まる僕。

「・・・」と真っ赤になる高川さん。


僕は高川さんの額に手を当て熱を計り。自分の額に手をやり熱を計った。


「うん、高川さんは熱があるみたいだ!今日は帰って休んだ方がいい。」と僕は冷静になって言う。

「だから、妹だって言ってるでしょ。現実逃避したいのはわかるけど納得しなさい。」とさっき電話機から取って落とした紙を拾って僕に渡してくる。


僕はそれを取って読みだす。



拝啓 バカ息子よ! 一瞬クシャってしたくなるのをどうにか我慢した。


実は母さんに昔、浮気していたことがバレた。


頭を抑える僕。

な、何やってくれちゃってるの父さん!


と、父さんはこのままでは殺されてしまう。

だから父さんは逃げる。

どこまでも逃げる。

ほとぼりが冷めるまで逃げる。

だが色々あったが、私の娘 愛 を家で引き取ることにした。


「はっ?な、なんで?そんな突拍子もなく?」と戸惑う僕。


面倒はお前が見ろバカ息子よ!

私は母さんから逃げなければ、達者でな。

あと娘達に手を出したら殺すからな!


敬具 イケメンな親父より


「うん、一度家の父は死んだ方がいいね。」と紙をクシャクシャにした。

「うん、家の親父がごめんなさい!」と頭を下げる僕。


「いえ、それはいいのですが・・・」と返す高川さん。

「それよりなんで家に来ているの?」と疑問に思う。


「それがいつもお父様に護衛をしてもらっていたのです。お父様は凄腕の護衛なのですが、今回のことで・・・仕事が出来なくなってしまいました。」

「な、なるほど。」と相槌を打った。


「それでお母様に相談したところ、ここで住めばいいじゃないと言うことになり。」

「ちょ、ちょっと待って、なんで説明の所端折ってるの?」

「な、なにか間違ったこといいましたか?」と、戸惑う高川さん。


「間違ったも何もセキュリティーの問題とかあるでしょ。」と僕は聞く。


「あ、でも大丈夫ってお父様が言ってましたよ。」

「え?何が?」と疑問に思って僕は聞く。

「バカ息子ははこの世界で恐らく一番強いかもしれないって。」

「はっ?何をわけわからないことを・・・」

「私もわかりません。で・す・が、この間の乱闘騒ぎの件を聞きました。」

「はっそれとこれと何の関係があるんだ。」


「半分は拓斗がやったって。」と静かになる。


「そ、そんなわけあるわけない!」と僕は抗議した。

「はい。」とレポートを渡してくる高川さん。


乱闘事件調書と書かれている。


篝火拓斗、北斗勇一による乱闘事件の経過と結果。


カツアゲしようとしていた街のチンピラ、アウンダーズ

それを止めに入った北斗 勇一、最初は良かったが、段々と人数が増えていくに従って劣勢になる。

そこにたまたま篝火拓斗が通りかかり、助けを求めてきたカツアゲされた同級生からの要請で参戦。

あまり乗り気ではなかったが、なんだかんだと千切っては投げ、千切っては投げを繰り返し、アウンダーズを全員コテンパンにのしてしまった。

その戦いっぷりに感激した北斗勇一が友達になる。


結果 暴力行為を働いたことにより停学。

本当ならもっと重い罰を受ける所を、アウンダーズの法に触れる行為が判明したため。

停学で済んだ。


追記 篝火拓斗の戦闘の才能は北斗勇一以上と言わざる負えない。

アウンダーズの半数をやったことはアウンダーズの面々から証言を得ている。


「・・・」僕は顔を青ざめる。

「これは嘘なんじゃないかな?」と惚ける。


「しかるべき捜査機関から入手しました。」

「いやだからね。」


「北斗勇一君に聞きました。」

「えーとそう別人、別人。」


「これ見ます。よく取れているでしょう。」と防犯カメラの映像を僕に見せてくる。

そこにいたのは僕だ。僕は膝を着いた。


「ま、まだだ。それはCGだ。うん、そうに違いない。」と頭をコクコクしている。

「あれれ、ここにあげるってあるけど押して大丈夫だよね。」とニコっとしている高川さん。

「ま、待ってください。そうです。それは僕です。だから上げないで―」と土下座で懇願する僕。


「ああ。」と指を動かす高川さん。


僕はビクッとする。

「ふふっ大丈夫よ。これをあげたら私もここに住めなくなるからね。」と可愛い顔でテヘっとしてくる。


可愛いけれど妹だ!


可愛いけれど妹だ!


大事なことだから二度言う。

「それに拓斗君って・・・」耳元に息遣いが聞こえる。近づいている息遣い。

心臓の音が早い。


「チキンだから・・・」と耳元で声が聞こえる。


ガチャ・バタン!

「ただいまー。いや参ったね。」と僕たちはなぜか正座になる。

バタバタと走ってくる。死の足音。ここで僕の選択肢は。


〝もう思い切ってやっちゃう!〟

〝二人の逃避行。〟

〝やはり一番無難なキッチンの影に隠れてもらう。〟これを選択する。


「こっち、こっちに来て。」と高川さんを引っ張っていく。

「ちょ、ちょっと。」と抗議する。

キッチンの影でとりあえずやり過ごす作戦。


よし、隠せたかな。と起き上がろうとして、何もない所で後ろに転んでしまう。

「はっ?なんでと。」おかしい現象に頭を捻った。

それがいけなかったのかもしれない。

「痛た、うん?痛くない。」と言う声をあげて。

何か柔らかい物に後頭部がのっかっている。


「キャーーーー。」と声を出す高川さん。なぜか逆に抱きつかれている。


そしてそこに現れる妹、希来里。


「兄貴が、お、女の人をつ、連れ込んで襲っている。」と声を出して、スマホを掲げ激写した。


「ちょ、ちょっと待って、誤解だ。誤解。希来里、誤解だからマジ!通報するのだけは止めて、高川さんも離れて、洒落にならないから、まだ少年Aとか写真で新聞に乗りたくないから、マジやめて。」と妹様を拝む。


「きゃー。」とかまだ言っている高川さん。

たぶん意識が戻る。胸があたっている。

意識が戻る。胸が当たっている。

このループに入って抜け出せなくなっているぞ!


「あれよく見たら兄貴が襲われてる?なんで?え、これ、これも犯罪になるの?」と疑問顔の希来里。


「希来里も、高川さんを離すの手伝って!」とまだまだキャーキャー言っている高川さん。


「わ、わかった。」と真剣な顔で近づいてくる。が、こけた。

しかも盛大に何回転かしてこちらにダイブしてくる。


な、なぜー!!と僕は頭を抱えそうになる。が抱き付かれて、そんなことも出来ない。


「う、どうなったんだ?」と僕らはもみくちゃになっているようだ。


下に妹、希来里がいる。なぜか抱きつかれている。

「痴漢、スケベ、ちょっと離して。」と妹が言ってくる。


僕もそうしたいんだけど、一番上でキャーキャー言っている妹高川さん。がどうにかならないとどうすることも出来ない。


僕は選択肢を間違ってしまったようだ。Bad End。


いや終わらないからね

普通ならうれしい状況だろう。だがしかしもう一度言おう。


残念ながら妹なのだ。


残念ながら妹なのだ。


もう、殺してくれ、こうして二人の妹との共同生活が始まるのだった。


男に免疫がない妹、高川 愛。

思春期で兄を見下す妹 篝火 希来里。


早く帰って来てくれ!浮気親父に母さん。た、助けて!



僕は気付いた。高川さんが僕の背中で寝ていた。疲れたんだろう。

色々あったからなと思っていると、もう一人の妹希来里が声をかけてくる。

「ねぇそろそろマジでどいてくれない。」と蔑んでいる。目が怖いです。


「どきたいのは山々なのだが・・・」4っつの感触がする。

いや無心だ無心だ。と心で唱える僕。

「この上の高川さんが思ったより力が強くって。」手が動かせないんだ。


「希来里の方から出られないのか?」と僕は聞いてみる。

「そ、それが入っちゃったみたいなの?」

「はっ?」と僕は聞いてしまった。


「手がこう何かに挟まっていると言うか。」

「何かって何?」

「それがわからないから、抜け出せないんでしょ!」と真っ赤になって言ってくる。

「ふむ、ベルト?」

「うん、かもしれない。そんな感じがする。あんまり引っ張るとあとになるから、引っ張りたくない。何とかしなさい兄貴!」と命令口調。

「うん、無理!」

凄い顔で睨んでくる妹。

「サンドイッチだね!」と苦笑いの僕。


「笑ってんじゃねーよ。何とかしろ!」希来里、恐い。


「わかった、わかったから、そう睨むなって。よいしょ、よいしょっ」と掛け声を掛けながら、どうにか高川さんの拘束から抜け出そうとする。


なまめかしい声を出す二人。


「ちょっと、あんまり、激しくしないで。ゆっくりでいいから。」と拘束から抜け出そうとして激しくもがいたけれども、全然抜け出せない。


「ちょっと、早く抜け出しなさいよね。」と抗議をあげるが僕は早く抜け出そうといっぱい、いっぱいだ。


近くで寝息が聞こえる。と声をあげる眠っている高川さん。

「ちょっと、ちょっと!」と抗議をあげる希来里。


抜け出せないどうしたらいいんだ?


「いい加減にしろ!」と僕を殴った希来里。

「ぶはー。」と吹っ飛ばされる。


あれ、取れてる。一体なに?がと顔をあげて拓斗を見る。


僕は何事もなく立ち上がる。

「希来里、無事か?」とちょっと何か歩きにくい。

「ちょっと、ちょっとなんてもの見せてるのよ!隠しなさい!隠して!近づかないで!」と抗議をあげる。


「あっごめん」と誤る僕。

ズボンをあげようとして、またこけた。

もうその展開はいいから!と心の中で呟く!


また希来里にダイブしてしまう。何とか避けなければ、と思ったけれど止められそうもない。再びいや今回は。

「調子のんじゃないわよ。」と一撃をもらった。


僕はその一撃で気絶した。



起き上がった時には居間の床に寝させられていた。


「ひどい目にあった。」と一人言を呟く。

なんとか立ち上がり、二人の方に向かう。

よく見れば、ズボンのベルトが切れている。

「うん、なんでだ?」と疑問に思ったがまずは二人の所に行かなくちゃ。


食卓の椅子に二人が向かい合う様に座っている。


なんかこう火花が飛び散っている。

二人の空間で戦っているようだ。


どっちが勝つんだ。


「むっ。」と押されているのは希来里のようだ。

「ふふっ。」と余裕の笑みの高川さん。


「あー二人とも何をやっているのかな?」と僕は何の気なしに聞く。


二人が僕を見た。


「女には・・・戦わなければならない時がある。」希来里。

「妹さんが兄を取られると思って頑張っているのよ!」と余裕の高川さん。


「あーうん、二人の相性が悪いのはわかった。」うんうんと頷く。


「希来里はどこまで聞いたんだ?」と僕は聞いた。

「うん?何も聞いてないけど。」と何のこと?って顔で聞いてくる。

「はーっ。」と溜息を吐く。

「高川さん、何も話してないの?」

「失礼ね。話そうとしたわよ。」いつもの高川さんだ。

さっきのを見ているからあまり恐くはない。


「なにか失礼な事考えているわね。」

「きっと、エロいことだ。」と希来里までからかってくる。

「失敬な。学校では割と紳士で通っているんだぞ。」

「そうなの。」と高川さんに聞く希来里。

僕は冷蔵庫からペットボトルのオレンジジュースを取り出して口につける。


「意外にむっつりって噂されているわよ。」


「ぶっー。だ誰が言ったんだ!」

「兄貴、汚い。」と妹が言う。


「すまない。」近くにあるタオルで拭く希来里。


「で、誰が言ってたんだ?」僕は気になった。

「さぁ。あ、でも後輩から聞いたような気がするわね。」

再びオレンジジュースに口をつける僕。


「あっ、そう言えばお兄ちゃんのベットの下のグラビア。胸が大きいって皆に言っちゃったかも。」

「ぶっー。」とまた吹いてしまった。

「お前が犯人かよ!」と僕は抗議した。

さっき妹が使ったタオルでごしごしし出す高川さん。


「だって、兄貴がそう言うの持ってるの。キモイ!」

「私も同感ですね。」二人の意見が合ってしまった。


あ、これ共通の敵を作って仲良くなるパターンだ!

あ、うそー僕が敵役!

なんでどうして、ラスボス(希来里)と隠しボス(高川さん)が手を組んだようなもんじゃないか!


僕の敵が手を組むな!!


勇者は世界を一人救わなければならなくなった!


「お兄ちゃん座って!正座!」

「あなた正座!」


僕はこのあと二人に説教をされた。

まったくわけのわからない時間だった。



僕達三人は皆でカップ麺を食べていた。


「ねぇ。」と高川さんが聞いてくる。

「何ですか?ズルズルズル。」とカップざるそばを食べている僕。

「何でしょうかと?はむ。」カップスパゲティーを食べている希来里。


「どうしてカップ麺なの?」と聞く。

「「それは・・・料理が出来ないから!」」二人とも自信満々だ。

「はー。」カップスープカレーを飲む高川さん。


「あなたたちも出来ないのね。」と聞く高川さん。


「「ん?」」


僕と希来里は首を傾けた。

「愛ちゃんも料理、出来ないの?」といきなり下の名前で呼ぶ希来里。

「ええ、そうなの昔から作ろうとすると、何か変なものを混ぜてしまって、食べられなくなってしまうの。」と困った顔をする高川さん。


「下の名前で呼ぶのはスルーか!」

「なんで当たり前でしょ!」と希来里。

「まぁ、同性ですし。あなたも呼びたいなら、呼んでもいいのよ?」


「愛ちゃん。」と僕は多少恥ずかしそうに言う。


「うーん、なんか違うわね。」と高川さん。

「そうですね。なんか違いますよね?」と希来里。


「じゃあもう、愛でいい?」

「うーん、まぁいいでしょう。」


「ねぇねぇ気になったんだけど。二人の関係は?」

「私は拓斗にぃと呼ぶわ。」

二人の言葉が重なった。


「「え?」」とシンクロするように重なった。


「何がどうなっているの?お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんだよね。」と虚ろの目をして聞いてくる。兄貴ががお兄ちゃんに変わった。

首の襟元を掴んで揺すってくる。恐い逃げたい。


「落ち着きなさい、残念だけど、これって現実なのよ!」と愛が困った顔をする。


「えっ?どうしてそんなこと言うかな?」とばくった機械のように愛に詰め寄る。

「お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなの。どこの馬の骨かわからないような女にお兄ちゃんをお兄ちゃんと呼ばれたくない!」と切れている。


「はーっ。」と溜息をついてこちらを見る高川さん。

首を振る僕。無理!絶対無理!


「そうブラコンなのね!」と現実を突きつける愛。


「違うよ!」と笑顔が恐い希来里。

「お兄ちゃんは家族なの。たった一人のお兄ちゃんなの?わからないかな?」と愛を覗き込んでいる。

恐い、恐いですよ。希来里。


「だから、それがブラコンだって言ってるでしょ。」

「だからお兄ちゃんだって、家族って言ってるでしょ。」

二人の視線が交差する火花が再び飛び散っている。

二人が組み合い始めた。取っ組み合いが始まった。


僕は・・・逃げた!


この選択肢は正しいと信じて自分の部屋に向けて、走っている。


部屋のドアに手をかけ、開けた。

そこには床に寝そべっている少女?がいた。

周りを見ればお菓子の紙屑。

僕は思わず目を擦り、そして部屋のドアを閉めた。


うん、あれは幻覚に違いない。


そうだ。あれは幻覚だ。


僕は再び部屋のドアを開ける。

再び同じ場所に少女がいる。


「なんじゃ、何か用か?」とゲームをしながら頭をあげて聞く少女。

「いや、ここ僕の部屋なんですけど。」僕は冷静だったと思う。


「そうかそれはごめんな。今日からこの部屋は、私の世界になった。」フードをかぶっている。そのフードの顔が少女の顔と連動するように変わっていく。

「はっ?」わけがわからないことを少女が言っている。


「ふむ。さっきのプレゼントで足りなかったか?」と首を傾げる。

「さっきって?」

「さっき、居間と言うところだったかな?あの時不自然にこけたじゃろう?」


そう言えば妙に回転が掛かったような。

「あれはわたしのしーわーざー。」とリズムを使いながら歌っている。


わけがわからない。


「とにかくこの部屋から出て行くんだ。」とそいつを持ち上げる。

けれど、何かに引っかかったようにその少女はここから出られない。


「ああ、無理無理。」と声を掛ける。

「はっ?えーとなんで?」


「そこから先は私の世界ではない。」といつの間にか僕の手から抜け出し、仁王立ちする少女。


「ふっ、いいのか?そろそろ来るぞ!」

「来るって何が?」と階段から物音がする。


奴らが昇ってくる。


僕は思わず。部屋の中に入り、どこか隠れる場所を探す。

いや、僕ではない。この少女を隠さなければ僕の人生が終わる。


押し入れか?

ベットの下か?


答えは押し入れ。


僕は少女を摘まみ上げ、押し入れに投げ入れた。

「ぷぎゃ。」と言う声がしたが僕は知らない。


どどどと言う音が近づいてくる。

一体何が起こっているのか?

わからない。


こんな音を出して駆けのぼって来るのだ。ただ事ではない。

僕の手に汗が滲む。


ドアの前に二人の気配がした。

ゴクッと喉が鳴った僕。


バンと言う音とともに、二人が押し入ってくる。

希来里が何か持ってこう叫ぶ!

「こ、これはなによ!」とそこには有名なグラビアアイドルの写真集があった。


「はっ?」と呆ける僕。

「私たちが喧嘩しているときに、目の前に置いてあったのです。」と言う愛。


あれは僕の秘蔵のグラビアアイドル写真集。

しかし、僕はすべての責任を・・・


「フーンそうなんだ。そう言えば父上に見せてもらったことがあるような?」と僕はすべての責任をお父さんに押し付けた。

「そうなんだ。じゃあこの写真集は後で捨てておくわ。」と希来里。

「はっ?ちょっとそれは父上が命より大事にしているものなんだよ!ふざけたことはいけない。僕が責任を持って預かろう。」とそれに手を伸ばす。

よし、あともうちょっとで手が届く!

僕は心の中でガッツポーズをしている。


ガタン!その一瞬のせいで僕は命より大切な・・・はたにし おるんの写真集を取れなかった!誰だ僕の宝物を!


「なにか音がしたわね?」と希来里。

「ええ、何かいるんでしょうか?」と愛。


ヤバい。

「はは、さっき片付けた時なにかバランスが悪かったのかな?」と言う。


「ねぇ。希来里。この部屋っていつもこんな感じなの?」と愛が聞く。

「うーんと、お母さんがいつも片付けているから、もっと奇麗なはずだよ。」と答える。


「うん、なんでお菓子の袋が?お兄ちゃん?なにか希来里に隠し事してない。」

恐い顔で見てくる。ヤンデレ妹モードになっている。


「な、何も隠してないよ!」とそっぽを向く。

「怪しいですね。汗をだらだらかいてますよ拓斗にぃ?」

「そ、そんなことはないよ。さっきまで筋トレしてたからかな?ふはは。」と笑ってごまかそうとする。


「どう思いますか希来里さん。」

「普通なら、写真集の件で焦っているのかと思いますが・・・おかしいですね。お兄ちゃん。誰がお菓子を食べたのですか?」と笑顔が怖い希来里。

「さ、僕もたまには、食べたくなるって!もう、信じてよ。」このままバレるな!


はたにしちゃん今度新作買うから、ごめんね!と僕は涙を飲んで生きるよ。そうしたらまた会ってくれますか?はたにしちゃん!


「で、茶番はいいんだけど、そこどいてくれないかしら拓斗にぃ?」

「はっ?ちょっと待てなんで?もういいでしょ。」

「愛ちゃんビンゴだよ!」

「ええ、当たりを引きましたね。」


「ちょっと待って話せばわかる。人間は分かり合えるものなんだ!そうだ、はたにしちゃんの写真集は僕のなんだ!だから、だからもういいでしょ!」とこれ以上は勘弁してくれと許しをこう。

「そんなこと言うから。」

「確信しちゃいました。」

「「そこに秘密があると!」」二人は息ぴったりだ。

ラスボスと隠しボスには勇者は勝てないのか?


「ひぃーー。」

「私がお兄ちゃんを抑えるから早く!」と言って拓斗vs希来里が始まる。

勝負は一瞬で着いた。

「痛い、痛い、ギブギブ!ギブギブ!」とプロレス技を掛けられている僕。

そんな姿を尻目に、愛は押し入れのドアに手を掛けた。

「ダメだ開けちゃ、ダメなんだ!」と僕はマンガ絵のような顔で叫んでいた。


バン!一気に開け放つ愛。

僕の今日の運勢はたぶん最悪なんだろう。


そこにはのんきに携帯ゲームをしている少女がいた。


「あーあ。」と頭を抱える僕。


「これはどういうことかな?」

「お兄ちゃん見損なったよ!一緒に警察署に行こう。」

「私いつまでも待ってるから・・・」

「お兄ちゃんはいつまでも私のお兄ちゃんだからね。」

少女が飛び降りて僕の肩に、手をポンポン叩いた。


「違うからね、最初からいたからね!いや、お前何なんだよ!」と僕は必死になって聞いた。僕はこのままじゃ犯罪者なんだ!ロリコンって新聞に書かれたら人生終わる!


「それは私も聞きたいかな?お兄ちゃんがどうして犯罪に手を染めたのか聞きたい。」

「私も拓斗にぃがロリコンだったなんて信じられない。」とはたにしちゃんの写真集を持って言う。


「それは返してくれ。」と言ったら三人にジト目で見られた。


「まぁそれは置いときましょう。今はこの子のことについて聞かなければなりません。」

「うんうん、どうしてお兄ちゃんが犯罪者になったか聞かないと。」と決意する希来里。


「ちょっと待て、どちらかと言うとこの女の子の方が犯罪者だ!」

「え、どういういこと?」

「何があったのですか?」

僕は自分の部屋に戻って来てからのことを話し出した。

ドアを開けたらこの子がいたこと。

食べ散らかしているお菓子はこの子が食べていたこと。

それに、さっき居間であったことは全部この子のせいだと。

だから、僕は悪くないと説明する。


「そんなことできるわけないじゃん。」と抗議する希来里。

「私も疑ってます。」と言う愛。


「むっ仕方ないのう。我が凄いことを君等に教えてあげようではないか。」

いつの間にかなんかつけ髭をつけているぞ。


「ではこの右手に持っているものはなんだね。そこの君!」と希来里に聞く。

「それはくまさんのぱ・・・」っとひったくるように取り履く。

「見た?」

「くまさんのぱん、ぐべば。」希来里渾身の一撃パンチ。

「もう、最低。」

「ふむでは次は!ほれっ。」と愛に渡された物は。

「ブラジ、ぶっぺ。」と今度は愛の蹴りがさく裂した。効果は抜群だ!


「容赦ないのう。」ツンツンと拓斗をつつく。


「仮にもお前たちのお兄様なのにね。」と再び希来里と愛はにらみ合う。

「ああ、とりあえず話を聞け。」

「えーと、なにからはなせばいいのかな?お前らのことだ。二人は同じ父親なのだろう。喧嘩してどうするんだ?」


「はっ?」と聞く希来里。

「私も直接は聞いてないが、えーとこいつは父親が浮気してできた子!つまりすべてその父親が悪い!以上。」


「ごめんなさい、愛ちゃん。私誤解してた。父親がすべて悪いだなんてわかってたことなのに・・・」

「いいのよ希来里、私のことはお姉ちゃんと呼んで甘えてきていいんだからね。」

「お姉ちゃん。」

「希来里。」と二人は抱き合った。


「いやー感動だね。」と言葉を漏らす。ポテチを食べながら・・・

「お前そんなこぼすな!ちゃんと食べろ!」ポテチの食べかすが落ちている。


「大丈夫。大丈夫。この部屋は私の世界だから、消える。」

「うそ!」とそこにあったはずの食べかすはなくなっていた。

「なんで?」

「ふふ、それはわたしぃがカミだーかーら。」と変な風にしゃべっている。

神の威厳がまったくない。


希来里と愛の二人もこちらの話に加わる。

「で、どうしてお前はここにいるんだ。」と僕は聞いた。


「それは聞くも涙、語るも涙のことがあったんだ。」

ホイホイホイとペットボトルのジュースを三人に渡した。自分の分も持っている。


「私は異世界で神をしていたのだ。」

「え、神って神?」

「そうそのかーみんだ。」やはりよくわからない。


「いつのことだったか、おかしなものが現れたのだ。どこかの誰かが勇者召喚をしたらしい。」と言う。


「「「はっ?」」」


「あー言いたいことはわかるから、とりあえず全部聞け。まぁその勇者を毎日一応眺めながら、オレンジジューチュを飲みながら、ある日はポテーチを食べながら、めんたーい味を食べながら、ところてんを食べながら、その勇者の活躍を見ていたのだ。」と語りだす。


あれ?これどっかで聞いたことがあるような?


「その勇者がな激闘の末、魔王を、まぁ討っちゃったんだよね。私も手に汗握る戦いに興奮したね。しかし、それで終わりではなかった。」と一拍置く。


ごくっと皆かたずを飲んでいる。


「あら、どっかで聞いた話のような?」と呟く愛。


「実は旅の途中で助けた呪われた姫様が、邪神の使いだったのだ!と私は驚愕した。しかし、下界のことは下界の人間に任せるのがルール。私はいざという時、動けるようにスタンバっていた。」


「こたつに入りながらな。」とドヤ顔の神っこ。


「続き、続き、仲間にした。ドラゴンの魔王の助けを借り最終決戦に向かう勇者。私は手に汗握って、ポップコーンを食べまくった!」


「映画館かよ!!」と思わずツッコんだ。


「おっとすまない。脱線してしまった。その邪神を復活させるために姫は自ら命を絶ち、邪心の復活に成功した。姫様はその勇者を愛していたようでな!まるで、物語のヒロインのようじゃった。思わす神が涙したな。」


「お前かよ!」


「ああ、そして最終決戦。邪神と勇者では本来力の差がありすぎて、勝負にならんかっただろう。だが、そこにあの魔王がいたことで勝負は五部にもつれ込んだ。泥仕合じゃった。あまりの時間の掛かりように私はテレビを消した。」


「おい!最後まで応援しろよ!」と僕は突っ込んでしまった。


「もちろん最後の部分まで休憩したさ!長い劇には休みも必要だからね。」


「一番おいしい所でわたしぃは戻ってきた。勇者の聖剣が邪神の胸に突き刺さったのだ。」

「おおう、これで終わったんですねー。」と希来里。


「いやまだだ希来里、むしろここからだ!」と僕は言う。


「そうだむしろここからだった。奴はな爆発してしまった。そりゃそうだろう。邪神と言えば腐っても神なのだ。それが死んだとなると、世界が破滅してしまう。」と天井を見上げる。


「わたしーはこたつで丸くなった。」


もうみんなジト目だ。


「実はあの邪神はわーたーしぃのサボりたい。という気持ちからできた神だったのだ!」


「はっ?」

「え?」

「何やってんの!」と希来里。


「うむ、仕方ないのだ神は意外に退屈なのだ。それから世界が崩壊した。その時、最後に魔王が、お前との旅は楽しかった。また一緒に旅がしたい。と勇者に言った勇者は魔王の最後の力で元居た場所に帰ったようだ!そしてその魔王の言葉が、今年の神バトル再生画祭で最優秀セリフ賞に選ばれた。」


「世界崩壊しているのに!」


「そうだその世界で私は、こたつで寝ていたところを吹き飛ばされたのは、あれは神生で一番油断していた。そんなことがなければ、もっともっと、ぐーたら出来たのに!非常に残念でならない。」と女の子は締めくくった。


「ちょっと、あの子大丈夫なの?」

「知らない、知らない、ちょっとねじが外れてるんでしょう。」

「そうね。」と愛が納得する。


「おおうそうだった。私は世界の崩壊とともに、この世界に飛ばされ、しかもなんの因果か、この部屋が私の世界になった。」


「「「?」」」


「ふむ単刀直入に言うが、ここに神がいる。」


「へっ?」

「はっ?」

「?」一人わかってないのがいる。


「お前たち三人のことだ!私が見えているのだろう。本来なら私を見ることは、神でなければ出来ないことなのだ!」


「だから引き寄せられて、私がここに現れたのかもしれない。」と腕を組みながら言う少女。


「・・・」

「・・・」

「・・・」僕たちは黙り込んだ。


「こいつがおかしい奴だと、わかっただろう!」と僕が言う。

「うん、そうね。」と愛。

「ああ、中二病って奴!」と少女に指を差して言う希来里。


「むむ、バーッカニしておるな。」とカニのポーズで言う少女。


「だってな!」

「そうね。」

「あ、でも可愛い。」と少女を抱きしめる希来里。


「うわーやめよ。私はカーミンじゃぞ!」と抗議の声をあげた。


「むむむ?」と言う顔になる神っ子。


「どうしたの。」と聞く希来里。

その首筋に神っ子が嚙みついた。


「ひやっ!」と言う声をあげる希来里。

しかしすぐに神っ子から距離を取る。


「何をしたの!」と怒る。

「ふむふむふむ?いやまさか?」とまた首を傾ける。

皆の周りをぴょんぴょんと跳ねまわりながらうんうんと頷いている。


「お主たちの父親はトールというのではないか?」神妙な顔。


「ああ、うん。」

「そうね。」

「ちょっと発音が違うかもだけど、そうだよ!」三者三様に答える。


「ああーなんということじゃ、そういうことじゃったか!」と納得した神っ子。


「そう言えば自己紹介をしていなかったな。我の名は篝火 れん。お前たちの父親の子じゃ!」


「マジか?」

「はっ?」

「えっ?」


今日二人目だから僕はあまり驚いていない。


「なんじゃ、拓斗ブラザー、わらわのことは恋お姉さま!と呼べば良いぞ!」と手を広げて言う。


頭を抱える僕。

ついて行けない希来里。

「お兄ちゃん、私だけのお兄ちゃんが・・・」とちょっとパンクしているかも。

「あり得るかもしれない。私もあったから・・・。」と自分を納得させようとしている愛。

「まぁなんじゃ、よろしゅうな!」と笑顔の恋がそこにいた。


「姉じゃなく妹だな。」と僕は思ったことを言った。


「むっ、確かにこっちの世界ではそうなるのか?妹かーしかし姉の方が威厳があるのにな?」と首を傾ける。


「三人の妹って親父あんた、何やらかしてんの!」と頭を抱える僕だった。




そしてまだこの時、妹たちの本当の顔を・・・僕はまだ知らなかった。


サボりたがりのぐーたらな恋を除いて。

ブックマーク、評価、感想等、よかったらお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ